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最弱魔法が知ったことか!  作者: 丸山ヤスコ
第3章 王国に潜む光と影
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アルバートの正体

上空から突如無数の弓が降ってきた。僕とアルバートは緊急回避を余儀なくされた。僕はおもいっきり横に飛んでなんとか回避した。


「クソッ、一体何なんだ⁉︎」


僕がそう呟いたあとすぐに、王国の兵士10名が僕とアルバートを囲んだ。そして、上の見物席から声が聞こえた。


「アルバート‼︎なぜ我らの同胞を皆殺しにした⁉︎お陰で大空の義賊の足取りが掴めなくなったじゃないか‼︎」


小太りで、髭を蓄えたおっさんが叫んでいた。闘技場統括、コロマスである。


「知ったことかよ、別にお前らの仲間になった覚えもないしな。邪魔だったから殺した、それまでだ」


「貴様ァ!裏切ったな⁉︎お前ら、大空の義賊ごとアルバートを殺せ!」


イマイチ状況を理解出来なかったが、どうやら大空の義賊を倒そうとしているらしい。これでライトさんの推測は正しかったと証明される。やはり王国は敵だったのだ。


(さっさとコイツら片付けて、アルバートも始末するか。)


そう思考を巡らせていた途中だが、アルバートから話しかけられ、それを中断する。


「おい、悪いが戦いはここまでだ。一緒に来てもらう」


そう言ってアルバートは突然煙玉を地面に足投げ、破裂させた。辺りは煙に覆われた。すると煙の中で誰かに引っ張られ、何処かへ連れて行かれようとする。


「クソッ!離せ!」


「飛ぶぞ!ジッとしてろ!」


アルバートの声が聞こえる。どうやら僕はアルバートに外へ連れ出されているようだ。そして煙が晴れる頃には僕たちは闘技場に居なかった。


「まだ近くにいるはずだ!探せ!」


コロマスが部下に指示を出す声が遠くで聞こえた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ここは街外れにある空き家。二人は闘技場から追っ手を逃れるためにここへ入った。


「…どうにか追っ手を巻けたな」


アルバートが周囲を確認しながらそう呟いた。すると突然横から鋭い剣の突きがアルバートを襲う。アルバートは大剣を抜刀しながらそれを防ぐ。剣の突きは僕が放ったものだった。


「何の真似だ?」


アルバートが僕にそう尋ねる。


「それは僕のセリフだ、リラを殺しておきながらお前らの内紛にまで巻き込みやがって‼︎」


僕はアルバートを睨む、アルバートも僕から目を離さない。この膠着状態を破ったのは僕の背後から聞こえた声だった。


「待って!ナギ!」


背後から僕を呼ぶ声が聞こえた。振り向くとそこにいたのは、


「リラ、リラなのか⁉︎」


そこには死んだと聞かされていたリラがいた。


「な、何よ、当たり前じゃない!」


「だっ、だってお前アイツに殺されたはずじゃ…」


「はぁ?何言ってんのよ、逆よ逆、助けられたのよ、そこのジークス王子にね」


僕は、頭の整理が追いつかない。殺されたはずのリラが生きていて、しかもアルバートに助けられた⁉︎さらにアルバートじゃなくてジークス王子⁉︎誰だよ!


「まずはすまない、ずっとお前を騙してた」


アルバート?は仮面を外して素顔を明かした。


「な、なんだよ急に」


「俺はジークス・テルゼラー、この国王子だ」


金髪を後ろで束ね、青色の瞳は稲妻を思わせるような輝きは僕を捉えて離さない。


「…整理が追いつかねぇ、なぜお前が偽名を使って闘技場に出ていたのか、なぜ嘘をついていたのか、事の経緯と事情を教えてくれ」


僕は一旦気持ちを落ち着かせるためにアルバートもとい、ジークスの話を聞く事にした。


「ああ、経緯はかなり複雑だ、しっかり聞いてくれ。話は俺とリラが会ったところへ遡る」


「複雑だろうが、一言一句漏らさず聞いてやるよ」


僕はこの事態を把握するために全力で聞いた。


********************


「アイツがナギと戦う前に私がなんとかしないと」


リラがジークスの後を追う、しかし、ジークスはその事に気付いていた。さらにリラが王国の兵士につけられていることも。


「やれやれだ」


ジークスはリラを曲がり角で待ち伏せした。そして二人が鉢合わせる。


「フッ、残念だったな」


リラは突然のことで体を動かせなかった。


(いつからバレてた⁉︎私、どうしたらいい⁉︎)


ジークスはどんどん近づいてくる。そして腕を伸ばして剣を構える。


「そのままジッとしてろ。じゃないと死ぬぜ」


「え?」


リラはジークスの言葉の意味が分からず聞き返してしまった。


"雷魔法・ライトニング"


ジークスはリラの方向目掛けて二本の線状の雷を放った。


やばい、死ぬ!リラはそう思って、無意味だが手でとっさに防御を試みた。しかし、雷の線はリラを無視し、その背後まで迸った。


「え?」


リラは自分が攻撃を食らってない事に驚いた。するとその直後、


「ぐわぁぁっ!」


背後から悲鳴が聞こえた。振り返ると二人の男が倒れていた。


「お前、コイツらにつけられていたんだよ、コイツらは王国の兵士だ」


「あ、助けてくれたのね…ありがとう」


「礼はいらねぇよ、俺もアンタら大空の義賊に用があったんだ、島を占拠していた海賊を壊滅させたアンタらにな」


「それをやったのはナギよ、たった一人でね、私達の村も救われた、アンタじゃナギは殺せないわ!」


リラは胸を張ってそう言った。ナギがこんな奴に殺される訳がないのだ。


「お前さっきの話も聞いていたのか、心配するな、俺はアイツらの味方じゃない、敵だ!俺の名はジークス・テルゼラー、この国の王子だ」


そう言ってジークスは仮面を外して素顔を明かす。


「アンタ王子なの⁉︎」


「ああそうだ、お前ら大空の義賊の力を借りたい、闘技場の路地裏にある建物で待っていてくれないか?」


「どういう事?」


リラは話をよく理解できていなかった。


第一、話の要点をまとめていないジークスが悪いのだ。


「話はそこでする!俺は一人で海賊を倒したナギって奴に興味が湧いてきた。少し力を見てやる。俺はこういう強い奴との戦いを待ち望んでいた」


ジークスはニヤリとしながらナギの待つフィールドへ走っていった。


「ちょっ、話はまだ終わってないでしょ⁉︎」


リラが叫ぶがジークスは止まらない。


「後でナギも連れてくるから心配すんな!」


「そういう問題じゃなーい‼︎」


リラの抗議は虚しく通路に響き渡った。


***********


「と、いうわけだ」


「いや、どういうわけだよ!」


僕は思わずつっこんでしまった。さっきまで殺し合いをしていたはずなのに、さっきまで憎かったはずなのに、今ではそういう感情が消えている。


「まぁ、誤解が解けたようね。じゃあ二人とも回復させるから」


"回復魔法・ケアス"


リラはそう言って僕とジークスを治療してくれる。


「ありがとうリラ」


「ジッとしてなさい、それにしても二人とも重傷だったけど、相当本気でやり合ったみたいね。治るのも二人同時に魔法使ってるから少し時間かかるわよ」


「ああ、ナギの本気の剣は相当響いた。リラを殺したって嘘ついたら急に強くなったんだ」


「僕もお前の雷魔法には痺れたよ。実際死んだと思ったしな。…くそ!にしてもお前にいいように転がされてた自分に腹立つ!」


ジークスは僕を思い通りにするのはさぞかし簡単だっただろう。実際僕は本気でリラは殺されたと思っていた。


「でも、なんか私は嬉しいな。ナギがそこまで私の為に怒ってくれる、本気になってくれるなんて」


「何言ってんだよ、そんなの当たり前だろ?」


そう言うと、リラは顔を真っ赤にしてしまった。


「…ほ、ほら、治療終わったわよ!」


「ありがとう、リラ!」


「助かった」


僕とジークスはリラにお礼を言った。体は全快である。


「本題に入っていいか?」


ジークスが早速話すようだ。


「そういえばお前、僕達大空の義賊に力を借りたいって言ってたな?」


「あぁ、そうだ。まずはどこから話せばいいか、お前らシエル王国って知ってるか?」


「シエル王国?」


もちろん僕は知らない。しかし、リラは知っているようだ。


「知ってるわよ、15年前、魔物の大群が国を呑み込み、滅ぼした。今はもうない国ね」


「そうだ。だが俺はずっと国を飛び出して調べていたんだ。なぜ突然魔物達がシエル王国を襲ったのか、それはこのフーデル王国にも起こり得る事なのか。そして長い旅の末、俺は一つの真実にたどり着いた」


「魔物に襲われたのが真実じゃないってことか?」


「いや、その事は真実だ。だが重要なのはそこじゃない」


「どう言う事だ?」


僕はそう尋ねた。


「王国内に魔物を操って国を滅ぼした奴がいたんだ!」


予想してなかった答えに僕とリラは言葉を失った。


「シエル王国は水面下で魔物を生産しようとしていたんだ」


「でも、それって禁止されてるんじゃないの⁉︎」


リラが尋ねる。確かに人類の敵である魔物を生産するなんて許されていいはずがないのだ。


「ああそうだ、たがシエル王国は滅ぼされた日の一週間後に開催されるはずだった5大国会議で、それらを各国の王に見せる予定だったそうだ。だが、突然魔物達は暴れ出し最後は制御できなくなってしまい、事件は起きたそうだ」


「つまり、何者かが魔物を操ったせいで魔物達の制御が効かなくなったんだな」


僕は話をまとめる。


「そう言う事だ。そしてここからが最も重要なんだ。この国で魔物と聞いたら最初に何を思い浮かべる?」


「それはさっき僕達が出場していたモンスター闘技場だろ?それがどうし…まさか」


「ちょっと、何か気づいたの?」


リラは僕の体を揺らす。


「闘技場のモンスターは見せ物じゃなく、この国を滅ぼす為に調教されていたってことだよ!」


「うそ…」


リラはまた言葉を失った。


「残念ながら正解だ。そしてそれを扇動してる奴が王国の中にいる」


「そういえばライトさんが言ってたな、モンスター闘技場、最初王様は反対してたって」


「あっそういえば!」


するとジークスは突然驚いたように目を開いて僕達に尋ねた。


「ライトさんってまさか、ライト・オールか⁉︎」


「あぁ、そうだ、まぁ元王国騎士団長だって言ってたしお前が知ってるのも当然か」


「ああ、よく知っている。そうか、生きてたんだな」


どうやらジークスは昔のライトさんを知っているようだ。しかし今は関係ない事なので忘れることにした。


「どうか俺を助けて欲しい。この国は今とてつもない脅威に晒されている。恐らく父は操られている!今父の側近をやっているミレイズ、現王国騎士団長ゲイロス、闘技場統括コロマスが主犯だ!

俺は奴らの傭兵として雇われながら奴らを探っていた。すでに魔物の数は国内だけで数百、近くの森に数千いる!でも俺はこの国の王子だ!この国が好きなんだ!この国を助けたい!でも俺一人の力ではそれは叶わない。だから力を貸してくれ!」


そう言いながらジークスは頭を下げる。僕とリラはそれを見て顔を合わせる。そして二人して微笑んだ。


「とんでもない数だな、でも敵が分かってるだけでも良いことだ!みんなで協力して事に当たればなんとかなるだろ!」


「ナギは楽観的ね、かなりヤバイ状況なのに、でも、やってやるわ!だって私も最強の大空の義賊だもん!それにアンタには一度助けられた、だから今度は私が助ける番よ!」


僕とリラはジークスの申し入れに快諾する。


「ありがとう、すまない」


ジークスはまた頭を下げる。


「おいおい王子が何回も頭を下げるなよ、それにまだお礼は早いだろ?」


僕はニッとはにかむ。さっきまで殺しあってたけどコイツはもう仲間だ。


「はは、そうだな」


ジークスが笑う。やっと笑った。相当気を張っていたのだろう。


「よーし、とりあえずどうするか作戦を考えましょ!」



「そうだな、ライトさんとも連携をとろう!」


国を救う為、僕達は王国の闇を照らす光となるべく立ち上がった。

今回も読んでいただきありがとうございます。次回もよろしくお願いします!

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