蠢く影
フーデル王国、まさに僕が思い描いていた通りの街並みであった。RPGで例えるなら、ベルンの町は駆け出しの冒険者の町、そしてフーデル王国は主人公が最初に訪れる大きな町だ。門をくぐると、最奥の城まで一直線に大きな道が突き抜けており、道中所々に噴水がある。お店や宿は道に沿うように建てられている。
「でっでけー」
おもわず感嘆の声が漏れる。
「まぁ、ここは世界4大国の一つだからな」
「まだこの規模の街があと3つあるんですか⁉︎」
「もとは5大国だったんだけどねー」
「へぇ、そうなんだ」
リラはもう僕がカプターとは違う星から来たこと、そしてその目的も知っている。最初はなぜか落ち込んでいるように見えたリラだが、親切にこの世界のことを教えてくれる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
城に向かって歩いていると、道の途中に大きな円柱形の建物があった。
「なぁリラ、あの建物なんだ?」
「あれは闘技場よ。最近は魔物を調教して戦わせる形のものが多いみたいだけど、昔から人同士が戦うのが主流よ」
「へー闘技場かー」
「フーデル王国の名物的なものよ」
もちろん僕は本物の闘技場の試合を見たことがない。
だからまた来る機会があれば是非ともみてみたい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
フーデル城に到着した。僕達はすぐに玉座の間へと案内された。城に入ったのはもちろん初めてだ。
RPGで城の中は見たことあっても、やはり実物とは迫力が違う。赤を基調とした絨毯や旗が華やかに城を彩っていた。玉座の間に入ると、玉座には王様、その横には騎士団長と思わしき男性と使用人と思わしき女性が王様の斜め後ろに立っていた。王様は白髪で長い髪で、髭を蓄えていた。おまけに右手にはゴツい紫色の指輪をはめている。
「ようこそ、フーデル王国へ。よく来てくれたな、大空の義賊よ。私はテルゼラー王国の国王、スー・フーデルだ。そなたが団長のライト・オールだな?初めましてだな」
「はっ」
ライトさんがひざまずく。それに僕とリラはならうようにひざまずいた。しかし、僕は今の王様とライトさんのやりとりになんとなく違和感を覚えた。何かが引っかかる。
まぁ、今は関係のないことなので忘れることにした。
「そながリラ・ルーテだな、王国に属する島の危機に気づけなかった私を許してくれ」
「い、いえ、大丈夫ですよ!海賊達は情報を遮断してたんです、気づかないのも無理はありません!」
「そう言ってくれると私も助かる。そしてそなたがシノノメ・ナギか、此度の海賊事件の解決、大義であった!」
「あっはい」
緊張してしまっているのか、はたまたこういう場の雰囲気に慣れていないのか、なんとも間の抜けた返事になってしまった。
「そこで強いお主に提案なんだが、今日開催される闘技場に出場してみないか?今回は魔物と人が戦う混成闘技場なんだが」
闘技場は見てみたいとは思っていたが、別に自分が出場したいわけではない。
「い、いえ、遠慮してお…」
「ぜひ出場させていただきます」
僕が断ろうとしたら僕の言葉に被せて来るようにライトさんがそう言った。
ライトさんが僕の方を振り向き、ギロッと睨む。
黙って私に従えと目でそう訴えてくる。
「おお!そうか、出場してくれるか!是非盛り上げてくれ!」
王様は上機嫌にそう言った。
「では、闘技場の準備もありますし、そろそろ失礼致します」
「ああ!また何かあったら力を貸してくれ」
「はっ」
そうして僕達は玉座の間からでた。扉を閉める直前、王様や使用人が殺気に満ちた目でこちらを見ていることに気づかずに。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「僕闘技場なんて出たくないですよ!」
城から出るなり、ライトさんに抗議した。
「まぁ、落ち着け、この国には大きく分けて3つの違和感がある」
違和感、そう聞いてさっきの王様の会話を思い出した。
ライトさんと王様の会話の中に違和感感じた。
そして冷静になってよく考えると、ようやくその正体に気付いた。
「さっき、王様はライトさんに初めましてって言っていた」
「それがなんなのよ?」
リラがそう尋ねてきた。
「ライトさんは元フーデル王国騎士団長だったんだろ?だったらおかしくないか?初めましてって」
「確かにそうね…騎士団長だった人を忘れるなんておかしいわね」
リラもようやく理解できたようだ。
「ああ、それがまず1つ目の違和感だ。そして2つ目、闘技場だ。そこでは6年前から魔物を調教してその魔物同士を戦わせるというものがあるが…私が王国にいた頃は王様が断固として魔物を興行に使うのに反対していたのだが、今ではこのあり様だ。それには何か裏がありそうな気がしてならない」
「なるほど、それで最後の3つ目は?」
「闘技場でもでてきたが、キーワードは6年前だ。リラ、6年前になにがあった?」
「6年前…そうだ、海賊が島を襲った!」
リラが思わず声を高くする。
「そうだ、リラの島から王国までは定期船が出ていたんだ。海賊から襲われて以降、その定期船は止まっている。そうなれば嫌が応でも島に何かあったことに気づくはずなんだ。毎日来ていた船が突然来なくなるからな。王様は気付けなくてすまないと言っていたが、実は知っていたんじゃないかと私は思う」
「そんな…」
リラは拳を震わせながらそう言った。それが事実なら怒るのも無理もない。
「ライトさんの推理通りなら、この国と海賊達は繋がっていたということになります」
「ああ、間違いなくそうだろう」
(なんてこった、ならあの王様は悪者だったのか。それじゃあリラ達は王国に裏切られたことになる。)
「でも、一体何のために⁉︎」
リラはライトさんに尋ねる。
「それをこれから確かめる。ナギとリラはこれから闘技場へ向かえ。ナギは出場して内部から情報を探れ。リラは外部からだ。私は昔のつてで城近辺をさぐる」
「「はい!」」
「それとマクレーモ達にも連絡する。やってほしいことがある」
そう言いながら、ライトさんは魔道具の一つ、伝話鳥を取り出した。
これは言葉を飛ばす機会が鳥の背中にのってあり、遠い相手の伝話鳥に伝えるために使われる。要ははこの世界の携帯電話だ。
「もしもし、…ああモルか。今から町の地下牢へ行ってウッヅ・ウォーカーに王国との関係を吐かせろ。…ああ、手段は問わない。死なない程度なら殺しても構わん」
(ライトさん、それじゃあ死んじゃいます。)
僕は心の中でそうつっこんだ。
「では、闘技場へ行ってきます」
「ああ、だが危険を感じたらすぐに離脱しろ」
「了解です!」
リラがそう返事して僕達は闘技場へ向った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「国王様、あの者たちはいかがなさいますか?」
ここは玉座の間、そこで使用人ミレイズは王様に向ってそう尋ねた。
「殺せ、手段を選ぶな。いずれ我々の強大な敵となろう。闘技場統括、コロマスにそう伝えよ」
王様は無機質な声でそう言った。
「仰せのままに」
ミレイズは王様にお辞儀をした後ニヤァと笑った。
その笑顔から滲み出る暗さは、深淵を覗いているかのようだった。
今回も読んでいただきありがとうございます。次回もよろしくお願いします!




