09
ノックの返事を待ってから入った病室には、驚くほどの数のてるてる坊主が――しかも、逆さまに吊されていた。
異様な光景とも言えたが、僕が受けた印象は全く別だった。
「ふむ。感心に値する強さの願いだな」
僕は、思わず声に出して呟いてしまっていた。
「あの……?」
おずおずとかけられた声にそちらを見ると、ベットに身体を起こして本を読んでいたらしい女子と目が合った。
子供らしいピンクのパジャマにカーディガンという姿で、児童文学らしい本を膝にかけた布団の上に置いている。
線の細い少女、という第一印象である。表情も雰囲気もどこか弱々しく、守ってあげたくなる、という形容が似合う。
彼女が、雨を願う生物係、四年二組の花咲芽衣だった。
僕は、彼女に向かって笑顔を見せる。
「僕は小泉玖郎。椎名小学校の五年一組で、土地・ライムライト・向日葵の友人だ。花咲芽衣さん、だね?」
「あ、はい」
向日葵の友人というくだりで多少表情を軟化させたものの、花咲の表情はまだ固い。
無理もないだろう。
時刻こそ面会時間内ではあるが、病室に親の姿はない。知らない上級生が突然押し掛けてきて、一対一で対応しなければいけないとなれば、手術前日でなくても表情も固くなるというものだ。
「向日葵もこっちに向かってる。どうしても今日中にお見舞いに来たいそうだ。少し事情があって、僕だけ先に着いた。突然押し掛けてすまない」
「あ、はい。大丈夫、です。向日葵ちゃん来てくれるんだ。うれしいな」
そこでようやく、花咲が笑顔を見せた。控えめな、固い表情がわずかに緩むといった笑み。闘病を含めて苦労した経験と、同じくらい誰かの優しさを感じた経験を思わせる、儚い笑顔だった。
ふむ。
この様子なら、早めに本題を切り出しても問題なさそうだな。
「このてるてる坊主を見ると、花咲は雨になって欲しいんだな」
「あ、それは……」
小さく呟くと、花咲は俯いてしまった。
自分の願いに後ろめたさがあるらしい。確かに、一般的な小学生の感覚は、雨よりも晴れを好むだろう。皆が嫌がる雨を願うことは、彼女自身には身勝手な願いだと感じてしまうのかもしれない。
「気にする必要はない。特段、悪いことではない。花咲のように、花壇のアサガオやヘチマが心配だという理由なら、胸を張っても良いくらいだ」
「え? どうして……?」
ふむ。
この反応を見る限り、雨を願う理由は、僕達がたどり着いた推測内容で間違いないな。
「向日葵から聞いたが、花咲は生物係だろ?」
「あ、はい」
「もう一人の生物係が当てにならないなら、雨が降って欲しいとおまじないに頼る気持ちも分かる」
花咲は、驚きに目を丸くする。
「拓ちゃんのことも知ってるんですね。それも向日葵ちゃんに聞いたんですか?」
「そんなところだ。向日葵は、花咲の悩みを――困り事を解決したいと思ってる」
僕の言葉に、花咲は驚いたようだったが、やがて――うん、と小さく頷いた。
彼女の知っている向日葵という人物は、いかにもそういう人の良さを持っているのかもしれない。
「僕はその手伝い、と言ったところだ」
さて。
ここからが本題だ。
花咲の不幸を退け、幸せをもたらす――そのための布石を用意しなくては。
「花咲は――魔法少女を知っているか?」
「えっ?」
僕の唐突とも言える言葉に、花咲は疑問の声とともに目を丸くした。
無理もない反応だ。
「まほ――って、その、セータームーンとかプリンキュアとか、ナルモちゃんとか、マッコちゃんみたいな、ですか?」
ふむ。
知っている、どころか詳しいようだ。
花咲が列挙した中には、僕たちが生まれる前の作品も混じっている。
もともと小さい女の子向けの――魔法の変身アイテムを売りたい大人の思惑が影響した結果らしいが――ジャンルである。花咲に知識があることは不自然ではない。
加えて、花咲は小さい頃から体が弱かったと聞いている。テレビ画面の中で、魔法を使って元気に飛び回る主人公達の活躍を、人一倍に楽しんでいたのかもしれない。
「そうだ。魔法を使って、友達の悩み事や困り事を解決する。そのイメージで間違いない。実は――」
僕は、そこで意識して言葉に間を持たせる。
花咲が次の言葉に集中する瞬間を狙って、再度口を開いた。
「向日葵は魔法少女だ」
その言葉を受けて、花咲は困ったような笑顔を浮かべた。
「えーと、冗談、ですか? それとも、元気付けようとしてくれてます?」
「信じられない気持ちも分かる。だが、冗談でも気遣いでもない。これでも、大事な秘密を打ち明けたつもりだ。信じてくれると嬉しい」
その言葉に。
花咲は表情を暗くした。
「信じられません。向日葵ちゃんは、確かに留学生で変わってるけど、良い子だし、こんな私とも友達だって言ってくれる――普通の子です」
花咲の言葉には、微かな怒りが隠れている気がした。大切な友達をバカにされたと感じたのかもしれない。
「信じて欲しい。向日葵は、今、もう一人の魔法少女と協力して、木村拓真を探している。一緒にお見舞いに来る」
「拓ちゃんが、私のお見舞い……。そんなの――それこそ信じられません」
今度こそ、花咲の言葉は強いものだった。
「だって拓ちゃんは……私のこと、嫌いだから」
花咲は顔を俯かせ、小さな声で、それでもはっきりとそう言った。
「そう、なのか?」
「そうです」
ふむ、と僕は一つ息をつく。
そうだな。
切り札を使うなら、このタイミングだ。
僕は、窓際で揺れる、逆さ吊りのてるてる坊主の一つを手にとった。
そして言う。
「でも、この『もやい結び』は木村に教えてもらったんだろ?」
今度こそ。
花咲は驚きに言葉を失ったようだった。
やがて、信じられない思いに揺れる声で、言った。
「どうしてそれを……? 向日葵ちゃんにも、誰にも、言ったことないのに……」
「これが魔法だ」
僕は、そう言った。
実際には、その可能性に思い至ったのは、魔法でも何でもなく――観察と思考の結果だ。
逆さに吊されたてるてる坊主に残された特徴の一つが、『もやい結び』と呼ばれる、この糸の結び方だった。
一般的な小学生であれば、触れる機会すらない技術。もちろん、ボーイスカウトのように、そういう技術や知識を与える場に参加していれば話は別だ。
しかし。
小さい頃から病弱だったという花咲と、ボーイスカウトへの参加は、あまりにもそぐわない。両者の結びつきは、不自然ですらある。
それを繋ぐカギが、木村の存在だ。
木村がボーイスカウトでその知識を得て、それを花咲に教えたと仮定すれば――雨を願うおまじないに、ついつい木村から教わった結び方を使ってしまったと考えても、納得できる。
確信があったわけではない。正解する確率は、半分程度だと思っていた。
それでも、ここで正解した時のメリットは大きい。
そう判断したからこそ、僕はその内容を口にし――見事正解だった訳だ。
半分推測半分運のハッタリだが、花咲にとってはそれこそ魔法のように感じただろう。
「木村も、嫌いな子にわざわざロープの結び方なんて教えないだろう。木村が花咲のことが嫌い、とは考えにくいな」
「でも……」
花咲は、言葉にできない感情で、僕より言葉に反論する。
その気持ちも、分からない訳ではない。
「まだ信じられないか?」
だから、僕は――。
「そうだな。それでは、この窓から――ここから木村が飛び込んで、お見舞いに来てくれたとしたら、僕の言うことを信じるか?」
「この窓、って――ここ四階ですよ。そんなこと、あるわけないです」
花咲は僕の言葉を吟味しようとして、すぐにバカバカしくなったようだ。
彼女の言う通り、この病室は四階である。窓から見舞いにくるなど、ありえない。
「あるわけない――それこそ、魔法でもなければ」
僕はそう言って、笑顔を見せた。
僕のその反応に毒気を抜かれたのか、少し肩の力を抜いてから、花咲は応えた。
「わかりました。じゃあ、その窓から、拓ちゃんと向日葵ちゃんがお見舞いに来てくれたなら――信じます」
「そうか。では、信じてくれるなら――」
僕は、言った。
これこそが、伝えなければいけないこと。
花咲に伝えておくべき、布石である。
「――木村に頼んでみてくれ。入院している間、花壇の水やりをお願いします、と。そうすれば、雨だろうが晴れだろうが、安心して手術に臨めるはずだ」
「っ――」
花咲が息を呑む音が聞こえた。しかし、それはもはや大した問題ではない。
花咲には必要な言葉を伝えた。
あとは、彼女の問題である。
そう。
条件は全て整った。
後は、思考通りに実行するだけだ。
「窓、開けるぞ」
僕は、一言断ってから、病室の窓を開け放った。
湿った空気が、窓から入ってくる。
「さあ、魔法の始まりだ」
僕は、窓から手を出すと、向日葵と交換して手に入れた黄色いハンカチを目一杯振る。バタバタと振り回す。
「……それの、どこが魔法なんですか?」
花咲の言葉に、僕は人差し指を立てて口の前に持って行った。静かに、のサインである。
ふむ。
魔法は成功したようだ。
なぜなら。
「――……ぁぁ」
微かではあるが、声が聞こえる。
それを認識したので、僕は窓から離れた。
「ぁぁぁぁぁぁああ」
声が、大きくなってくる。
「ああああああああ!」
それは、徐々に、そして急激に大きな叫び声に変わる。
叫び声を上げる誰かが、急速に近づいてくる。
まるで、大空から、この病室目掛けて、少年が、落ちてくるかのようだ。
そして――。
「到着っ!」
向日葵と瑠璃、そして、まるで連行途中であるかのように両側の〈魔法少女〉に腕を組まれた少年が、窓から飛び込んできたのだった。
「芽衣ちゃん、木村くんと一緒に、お見舞いに来たよっ!」
【瑠璃】
向日葵ちゃんと私は、木村くんを抱えたまま、その病室に飛び込みました。
順に説明しましょう。
恐竜公園で木村くんと会話した後、〈操作〉に〈開門〉――それぞれの魔法で飛行しながら、彼を運びました。
一度、雲の上まで出て、それから真っ直ぐ降りるコースでしたから、木村くんにとっては、ちょっとしたジェットコースターよりも怖かったかもしれません。私たちの狙い通り、木村くんには平常心など残っていないことでしょう。
上空から椎名総合病院を目指して急降下しながら、病室の場所が分からないことに気が付きました。着地してから、受付で尋ねる必要があるのでしょうか。
そんな事を思っていると、ぐんぐんと近づいてくる病院の、とある窓から手が出ていて黄色いハンカチをバタバタと振っていることに気が付きました。
玖郎くんの合図でした。
向日葵ちゃんと私は、声をかけあって、ほとんど一直線にその窓へと飛び込んだという訳でした。
「疑ってごめんなさい。全部、信じました」
私たちが窓から飛び込み、〈開門〉を使って、〈魔法少女〉の衣装から普通の服装に戻るのを見て――花咲芽衣ちゃんは、そう言いました。
「問題ない。できることなら、秘密にして欲しい」
「分かりました」
玖郎くんの言葉に、芽衣ちゃんは頷きました。
「向日葵ちゃん。お見舞いに来てくれたんだね。とってもびっくりしたけど、とっても嬉しいよ。ありがとう」
「うん。大変な時にバタバタしてごめんね。明日、手術だって聞いたから――向日葵の元気、分けてあげるね」
芽衣ちゃんが体を起こしているベッドに駆け寄った向日葵ちゃんは、二人で手をぎゅっと握って言葉を交わしました。
「ありがとう。うん、とっても元気になったよ」
芽衣ちゃんは、向日葵ちゃんに健気に微笑みかけました。
「それから、ありがとうございます。えっと――」
あ、私の番ですね。
芽衣ちゃんの視線がこちらを向いたので、私は自己紹介も兼ねて挨拶します。
「五年一組の清水・セルリアン・瑠璃です。突然押しかけてごめんなさい。でも――」
私は、しっかりと伝えるべき言葉を声にする。
「――私も、向日葵ちゃんも、それに玖郎くんも、あなたの困り事を、解決したいの」
その言葉に。
芽衣ちゃんは笑顔を見せてくれました。
私よりも年下のはずの芽衣ちゃんの笑顔は、不思議とどこか大人っぽくて、儚くて、私の胸がきゅうっとなってしまう物でした。
「ありがとうございます。でも、もうほとんど解決しちゃいました」
そう言って。
芽衣ちゃんは、ようやく木村くんに顔を向けました。
「拓ちゃん。お見舞いに来てくれたんだね。すっごく、すっごく嬉しいよ」
素直な気持ちを言葉にする芽衣ちゃんに、木村くんは。
「別に。土地たちに連れてこられただけだ」
視線を合わせないまま、顔を伏せてそう応えただけでした。
むむむ。
まさか、短時間にこれだけの濃密な体験をしながら、彼の平常心は――照れ臭さや、意地っ張りな気持ちが残っているのでしょうか。
いいえ。
そうではありませんでした。
「うん。でも、それでも嬉しいよ」
芽衣ちゃんのその言葉に。
木村くんは顔を上げました。
その表情は、決して明るいものではありませんでした。
怒りや、悔しさや、後悔や、自責や、そんな色々が混ざり合った、彼自身も良く分からない感情の渦に、青ざめて硬直したような――険しい顔でした。
「……なんでだよ……」
「え?」
思わず、と言った様子で木村くんの口からこぼれた言葉に、芽衣ちゃんが聞き返しました。
「なんで、簡単に嬉しいとか、言えるんだよ! オレ、一度も芽衣の見舞いになんて来たことなかったし、生物係の仕事だって全部押し付けて――そりゃ、小さい頃は、お前が寝てる横で、遊んできた話とかしたり、サッカーとか、ボーイスカウトとか、芽衣が喜ぶかと思って、花だって……!」
叫びとともに堰を切って溢れ出たのは、木村くんの胸の中に押し込められて、閉じ込められて、形になれず、言葉にされなかった――そんな言葉たちでした。
ただ感情があふれるままに。
文章にすらならないような。
意味さえ伝えられない、そんな言葉でした。
「それなのに、なんで! オレっ、オレは、芽衣が苦しんでいても、何もできないのにっ――!」
それが。
その言葉が、全てでした。
幼い頃であれば、大好きな幼馴染のためにできることがあったのでしょう。
病気で寝ていなければいけない彼女のために、外で一杯遊んで、その楽しさを伝えられたのでしょう。見つけた花を摘んで帰ることもできたでしょう。
そして。
成長した今、彼を彼女から遠ざけていたのは、小さな子どもでもない、かと言って大人でもない、そんな自分の無力。
何もできない自分に怒り。
何もできないことが悔しくて。
感情に任せて遠ざかっている事を後悔しているのに。
結局、何一つ彼女のためにできない自分を責めて。
ああ。
ああ、なんて。
なんて――優しい、気持ちなのでしょう。
「拓ちゃん……」
芽衣ちゃんは、そう呟いて、微笑みました。
そして、同時に彼女の両目から、涙が流れ落ちました。
「ありがとう。それに、そんな苦しい思いをさせて、ごめんね。ありがとうね」
「っ――」
木村くんも泣いていました。
肩を震わせ、声を殺して、それでも溢れ出る涙を止めることができずに。
「瑠璃」
小声で、玖郎くんが私を呼びました。
病室の外を指差す玖郎くんに合図に、私達は、何も言わずに廊下に出ました。
静かに、音を立てないように、扉を閉めました。
「瑠璃ちゃん、小泉ちゃん、今日はありがとうねっ!」
「ウチのお姫様が世話になったな」
バイクの上から、向日葵ちゃんと翔さんがそう言いました。合流した二人は、そろって家に帰るそうです。向日葵ちゃんは、慣れた様子で翔さんの背中につかまっています。
二人の、ヘルメットにちょっと手をかける仕草がそっくりで、私は笑ってしまいました。
それにしても、バイクの二人乗りなんて、玖郎くんと私にはできないのです。
羨ましいです。
「また一緒に〈仕事〉できると良いですね」
「うんっ!」
私の言葉に、向日葵ちゃんが元気一杯で答えてくれました。
「今日の〈仕事〉については、瑠璃と僕だけでは――向日葵がいなければ間にあわなかった可能性が大きい。協力させてもらえたことを感謝する」
「わ。え? そうなの?」
玖郎くんのものとは思えない言葉でした。
私も向日葵ちゃんも、思わず目を丸くしてしまいます。
「そもそも、逆さのてるてる坊主を見つけたのは向日葵だ。さらに、僕達が掃除をしている短時間に、小学校中を調べつくしている。花咲や木村を思い起こせたのも、同じクラスの向日葵がいたからだ」
そう言って、玖郎くんは、いつもの悪い笑顔を見せました。
「改めて、強敵だと認識した。今後は、これまで以上に手加減せずに相手をする」
「ははっ。小泉少年の褒め言葉は、そういう感じになる訳だな。可愛くないやつめ」
ふふ。
翔さんの言うとおりです。
「それはね。学校の中の〈仕事〉だったからだよ」
向日葵ちゃんは、言いました。
そう。
その表情と。
その瞳に宿った、黄色に輝く意思の光を見て――。
「瑠璃ちゃんと小泉ちゃんには、言ったことあったよね。私は、女王になったら、学校を作りたいの」
向日葵ちゃんは、幼い顔に似合わない、強い強い願いを胸に秘めて、そう言いました。
「王族だけじゃく、貴族だけじゃなく、みんなが通うことができる、勉強ができる、運動がができる、魔法が学べる、楽しいことが一杯あって、友達も一杯できる、そんな学校を、地平世界に作りたいの」
それが、向日葵ちゃんの願いでした。
「だから、学校で、私のクラスで、困っている人がいたら、絶対に、絶対に助けたいの。それだけだよ」
――私も、玖郎くんと同じ思いを抱きました。
そう、向日葵ちゃんは、間違いなく。
強敵なのです。
私が、自分の願いをかなえるため、その素敵な願いごと打ち破らなくてはいけない、敵なのです。
「ふむ。――受け取れ、プレゼントだ」
玖郎くんが、何かを向日葵ちゃんへと投げました。
手を伸ばして、それをキャッチする向日葵ちゃん。
「これ……」
それは、黄色いてるてる坊主でした。
元々は向日葵ちゃんの持ち物で、玖郎くんの白いハンカチと交換されて、病室の合図で使われた、あのハンカチで作られていました。
玖郎くん、いつの間にこんなものを作っていたのでしょうか?
「今日、〈仕事〉に協力させてもらった礼だ」
玖郎くんは言いました。
「間違いなく、頭を上にして吊るせ。明日、きっちり晴れるように、な」
「あれ? 雨を願わなくて良いの?」
向日葵ちゃんのその問いに、玖郎くんは応えました――。
「晴れないと、せっかくの花咲と木村の約束が、果たされないだろ?」