表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2番目の魔法少女[2]予定にない嵐  作者: 秋乃 透歌
終章 いつか見た虹

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/23

22 終章 いつか見た虹

【瑠璃】


 目を開くと、見慣れない天井が見えました。

 あ、れ?

 私、どうして――?

 直前の記憶が、今の私の状態と繋がりません。

 脈絡なく、唐突にここにいます。

 考えがまとまりません。

 えっと、つまり……?

「――瑠璃、気がついたか?」

 玖郎くん。

 その声が聞こえただけで、なんだか安心してしまいました。

 すっと冷静になって、落ち着いて自分の状況を認識できるようになってきました。

 あ、私は、ベッドに横になって寝ていたようです。毛布までかけています。

「ここは? 私、は――?」

 疑問の声を上げかけて、喉がからからに乾いていることに気づきました。

「ゆっくり、体を起こせるか?」

 玖郎くんにささえてもらって、ベッドに体を起こしました。

 玖郎くんが、私の顔をのぞきこんできました。

 わわっ。近い、近いですよ。

「よし、顔色は悪くないな。水分を摂った方が良い。飲めるか?」

 玖郎くんはすぐに離れてしまいました。

 ベッド脇のイスに座りました。

 ちょっと残念です……。

 玖郎くんに手渡されたスポーツドリンクは、わずかにぬるくなっていましたが、それが逆に心地良いです。

 一口飲むと、思っていた以上に水分が不足していたことに体が気づいたようでした。

 ゆっくりと飲むよう意識しながら数度飲み込み、思わず息をついてしまいました。

 うう。

 ちょっと恥ずかしいです。

「瑠璃は、〈試練〉(トライアル)の終了と同時に倒れたんだ」

 玖郎くんが、静かにそう言いました。

〈試練〉(トライアル)の結果、サラマンドラは無事に魔法世界に返った。クロミは取り逃がした。――ここは綾乃さんの別荘の一室。他のみんなは全員無事、怪我ひとつない。海で遊んだりもしていたようだが、通り雨になったので帰ってきている。今はリビングで休んでいるはずだ」

 玖郎くんが、状況を説明してくれました。

 そうです。

 だんだん思い出して来ました。

 私は、あの〈試練〉(トライアル)の終了宣言を聞くと同時に、気が抜けてしまって――。

 倒れてしまったんですね。

 うう、恥ずかしいです。

 クロミを逃がしたことは残念ですが、その他は問題なく片付いたようで、本当に良かったです。

「何か質問はあるか?」

 玖郎くんが、そう言ってくれました。

 そうですね。

 それでは――。

「玖郎くんは、ずっと私の側にいてくれたんですか?」

「そうだ。……嫌だったか?」

 気遣いを含んだ玖郎くんの答えに、私は首を横に振りました。

「いいえ。ありがとうございました。目が覚めてすぐに玖郎くんの声が聞けるなんて、なかなか幸せでした」

 あ。

 ちょっと待ってください。

 寝ぼけた頭で受け答えしているせいか、今、何かとんでもないことを言ってしまったような――。

「く、玖郎くん、私のせいで、海では遊べなかったんですね。ごめんなさい」

 ごまかす目的で慌てて言った言葉に、玖郎くんからは苦笑が返って来ました。

「留学生メンバーほど、海は珍しくもないからな。問題ない」

 それに、と。

 玖郎くんは窓の外に目を向けて言いました。

「瑠璃が一緒でなければ、意味がない」

 ――っ。

 さすがに、それは――。

 顔が赤くなるのをごまかせません。耳まで真っ赤になってしまうのが、自分でもわかります。

 私は思わず、ぼふんとベッドに倒れると、毛布をかぶってしまいます。

 それは、ズルいですよぉ。

「瑠璃。そのままでいいから聞いてくれ」

 毛布の向こうから、玖郎くんの声が聞こえます。

 なんでしょう。

 少し、いつもとは声の調子が違います。

「サラマンドラに攻撃を加えるような――辛い役割を割り振ってすまなかった。あの状況では仕方なかった、などと言い訳するつもりはない。次こそは、もっと、もっと考えるから。ごめん」

 それは、謝罪の言葉でした。

「いえ……」

 私は、それだけ返すことが精一杯でした。

 優しくしたい、優しくできる世界を作りたい――その願いを変えるつもりはありません。

 それでも、これからも、自分の好き嫌いに関わらず、こういうことを――誰かを傷つけたり、見捨てたりすることが必要な場面は必ずあるでしょう。

 その度に、倒れて心配をかける訳にはいかないのです。

 ああ。

 もっと強くなりたい。

 もっともっと、強くありたい。

 強い心を持ちたい。

 そうでなければ、絶対に――私が欲しい世界は手に入りません。 

 願い。

 想いの強さ。

 覚悟の必死さ。

 そんなもので次の女王になれるなら――優しくすることが許される世界が作れるなら、どれだけ良いか。

 それなら、誰にも負けないのに。

 現実に必要なものは――。

 もっと別のものなのです。

「そう言えば、クロミは――あの子の目的は、革命だ、と言っていましたね」

 私は、自然とあの〈闇の魔法少女〉のことを連想しました。

 確かに――。

 今の魔法世界は、革命を掲げる人たちがいてもおかしくない状態です。

 王位継承試験の舞台である地球世界――この世界のこの場所に来てからは、さらに強くそう感じています。

 身分の差。

 貧富の差。

 政治や制度の未熟さ。

 そして、王政。

 ――気持ちは分かる、などと言えば、怒られるか笑われるかするでしょう。

 なにしろ私は、次の女王になろうとする〈女王候補〉(プリンセス)なのですから。

「王位継承試験の妨害――それが達成されれば、革命を目指す人たちにメリットがあるのでしょうか?」

「次期女王となる候補全員を抹殺すること――だとすれば過激に過ぎるが、そうでなくても、王政の威信の失墜をはじめとして何かあるんだろうな」

 玖郎くんの返事は、言葉を選んだものでした。

 あるいは、思考してまで目的を絞り混む必要がないと思っているのかもしれません。

「クロミの魔法――複数の属性を使っていました。あんなこと、どんな強力な魔法使いでさえ、できないはずなのですが」

「ああ、それか」

 今度は、玖郎くんの声が軽いです。

 まさか、もう仕組みを見破っているのでしょうか。

「どうやって実現しているかは、実は重要ではない。敵が複数の属性の魔法を使って攻撃することを、忘れなければ対応できる」

 あ。

 なるほど。

 そういう考え方――割り切り方もあるんですね。

「実は、方法も見当がついている」

 わ。

 やっぱりそうでしたか。

 さすがは玖郎くんです。

「もちろん、僕の考えが正しいかどうか、検証が必要だ。手伝ってくれ」

「もちろんです」

「それは、帰ってからで充分だがな。瑠璃――」

 改めて名前を呼ばれたので、私は毛布から顔の上半分を出しました。

 まだ、顔の赤さが残っていたりしないでしょうか。

 真面目な話をして、少し落ち着いたとは思うのですが。

「帰りの車が出発するまで、あと三十分弱ある。通り雨も上がったようだし、浜辺を少し歩かないか?」



【玖郎】


 先に砂浜に出て、瑠璃が来るのを待った。

 通り雨が去ってから少し時間が経っているため、砂は乾きはじめていた。

 波は穏やかで、数時間前にドラゴンが火まで吹いて暴れていたとは想像できないほどに平和だった。

 瑠璃が〈試練〉(トライアル)直後に気を失って倒れたことについては、後悔や自責の念はある。

 しかし。

 実は、それほど反省している訳ではない。

 そう。

 こういうことは――瑠璃が誰かを傷つける必要がある場面は、これから何度でもあるだろう。おそらく、誰も傷つけずに済む場合など、数えるほどもあれば十分なのだ。

 大切な誰かを――あるいは何かを守るため、別の誰かを傷つけなければいけない局面は必ずある。

 それを突きつけられて、それでも選択し、進まなくてはいけない。

 少なくとも、瑠璃の目指す理想は、長く険しい道なのだ。

 慣れる必要すらある、と言って良いだろう。

 それは、何度でも僕たちの前に表れるのだ。

 ――。

 連想されたのは、〈闇の魔法少女〉と名乗ったクロミのことだ。

 彼女のような敵性の魔法使いの存在は、常に意識しておく必要があるだろう。

 取り逃がしてしまったからには、必ず再び僕たちの前に現れる。あるいは、クロミを捕まえても、別の誰かが現れるだけなのかもしれない。

 彼女の目的が革命だと言うなら、それはまだ果たされていないのだから。

「――玖郎くん」

 瑠璃の声が、僕の思考を遮った。

 普段着に戻った瑠璃が、僕に向かって歩いて来る。

「海に入るのも気持ち良かったですが、砂浜を歩くのもなかなか素敵ですね」

 ふむ。

 どうやら体調は心配しなくても大丈夫そうだ。

 声の調子は明るいし、顔色も戻っている。

「そうだな。時間まで、少し散歩しよう」

 瑠璃とならんで歩く。

 街を歩くよりも、少しゆっくりしたペースで。

 寄せては返す波音を聞きながら。

 何やら隣でそわそわしていた瑠璃が、思い切ったように僕の手を握ってきた。

 振りほどく理由もないので、そのまま歩く。

〈騎士〉(ナイト)ではないこと、バレちゃいましたね」

 やがて、瑠璃が口を開いた。

 ふむ。

 そうだな。

 作戦を説明する際、粉塵爆発に巻き込まれても僕だけは平気であるという根拠を示す必要があった。

 〈契約〉(コントラクト)をしていないことを打ち明けることによるデメリットと、別の作戦を考える必要があるというデメリットを比較し、〈騎士〉(ナイト)でないことを明かすべきだと判断した。

 僕が〈騎士〉(ナイト)でないことは、周知の事実となった訳だ。

「今度こそ、私の〈騎士〉(ナイト)になってくれますか?」

 瑠璃の言葉は、どこか慣れ親しんだ冗談でも言うような雰囲気があった。

 僕が〈騎士〉(ナイト)になるとは言わないことが分かっているのだろう。

〈契約〉(コントラクト)します? えっと、ちょうど二人きりですし、私はいつでもオッケーですよ?」

 冗談めかして言いながらも、瑠璃の頬は赤くなっている。

 〈契約〉(コントラクト)に必要なキスのことでも想像したのだろう。

 確かに、静かな浜辺を独占して二人きりというのは、〈魔法少女〉(プリンセス)好みのロマンチックなシチュエーションではあるが――。

「照れるなら言うな」

 僕は、手加減して瑠璃の額にデコピンを見舞った。

 額を押さえながらも、瑠璃はえへへと笑った。

〈保護魔法〉(プロテクト)を利用した魔法の無効化で、意表を突くという戦略は使えなくなった。ただし、無効化できること自体は変わっていない。茜の強大な魔力を打ち破る必要を考えると、引き続き〈契約〉(コントラクト)しない状態でいるメリットは大きいと考えている。魔法の無効化は、クロミにも有効なはずだ。このままでいるべきだ」

 春先はともかく、最近では他の〈魔法少女〉(プリンセス)〈騎士〉(ナイト)も、薄々感付いていた可能性もある。

 その意味では、明かすにはちょうど良い機会だったと言えるくらいだ。

「三つのメリット、ですね?」

 瑠璃には、協力者でいることのメリットが三つあると伝えてある。

 一つ目のメリットは、〈保護魔法〉(プロテクト)の利用。それ以外のメリットについては、瑠璃の宿題になっているのだ。

「残り二つのメリット、考え付いたか?」

 瑠璃から返ってきたのは、首を横に振る仕草だった。

「実は、一つは思いついています。でも、答え合わせは別の機会にしませんか?」

「構わない。瑠璃が、もう一つを考え付いてからにしよう」

 なるほど。

 その反応を見ると、本当に僕と同じものを考え付いているのかもしれないな。

 答え合わせが楽しみだ。

「分かった、と言えば――茜の弱点が分かったな」

 僕の言葉に、瑠璃は頷いた。

「茜は、魔力の制御が複雑な、〈操作〉(オペレート)〈開門〉(オープンゲート)が苦手なんですね。知りませんでした」

「つまり、王位継承試験に勝利するためには、〈仕事〉(タスク)が重要だということが分かったわけだ」

 前々から思っていたが、茜の高出力の〈生成〉(クリエイト)は、〈仕事〉(タスク)には向かない。

 それに加えて、残り二つの魔法は苦手となれば――不幸を退け、幸福をもたらすというような小回りは苦手でも不思議ではない。

〈仕事〉(タスク)でいかにポイントを稼ぐかが、勝利のカギ、というわけですね」

 力強く頷く瑠璃の瞳には、勝利への道筋が一段明るく見え始めたのかもしれない。

 その瞳に宿る光が、強くなった。

「そういうことだ。――そうだな、少し、ポイントの荒稼ぎをするか?」

 僕は、たった今思い付いた提案をする。

「え、なんですか?」

〈操作〉(オペレート)を使って、海の水を細かい水滴にして、空中へ持ち上げる。数は、可能な限り多い方が良い。小雨が海から空へ戻るイメージだ」

 夕方へ向かう太陽の位置を確認し、それに背を向けて海の一方向を指差す。

「この方向のできるだけ広範囲、水平線手前くらい前まで、高さは可能な限り高くまで――できるか?」

「やってみますね。――〈操作〉(オペレート)

 ふむ。

 僕のイメージは正確に伝わったようだ。

 先程の通り雨が再現されているかのようだ。注意して見ると、雨粒の方向が下から上に向かっているので、間違いなく魔法による光景だ。

 そして――。

「わぁ……」

 瑠璃が歓声を上げた。

 そう。

 そこには、二重にかかる虹が現れていた。

 雨粒よりも水滴の形が球形に近いためだろう。儚い揺らめきを持つ虹ではあるが、どこかしっかりとした存在感だ。

 首謀者である僕でさえため息をつきたくなるほど美しい虹ができていた。

「玖郎くん、虹です! これが狙いですね!」

「そうだ。一体、何人の人が、これを見てちょっとした幸せを感じただろうな」

「まさに荒稼ぎですね!」

 瑠璃が、嬉しそうに納得の声を返してくれる。

 その声は、心から嬉しそうな響きだ。

 ――そうだな。

 ここで、聞こう。

 僕は、ある疑問を瑠璃にぶつける決意をした。

 それは、瑠璃にとっては残酷な内容かもしれない。

 それでも。

 勝利に向けて確実に歩んでいくつもりなら、明らかにする必要のあるものだ。

 さあ。

 僕も、覚悟を決めよう。

「瑠璃――」

 僕は、口を開いた。

「どうして二番目ではダメなんだ?」

 それは、常磐にも投げた質問だった。

 風の〈魔法少女〉(プリンセス)の答えは、『多くの人の期待を背負って、この王位継承試験に望んでいるから』というものだった。

 瑠璃の答えを知りたい。

 そう思った。

 万が一、瑠璃がこの王位継承試験に勝利できなかったとしても――。

 茜は、おそらく立派な女王になろうだろう。

 あるいは、常磐にせよ向日葵にせよ、女王になれば間違いなく賢王になれるだろう。

 そう。

 他の候補も、きちんとした考えを持つ、良い子ばかりなのだ。

 きっと、瑠璃の考えにも賛同してくれるはずである。

 一緒に、優しくすることが許される世界を作るよう、強力してくれるはずである。

 僕の質問はそれを問うものだ。

 なぜ、二番目ではダメなのか。

 一番目でなければいけないのか。

 僕の問いを受けて――。

 瑠璃は、つないでいた手をはなすと、海に向かって数歩の距離を歩いた。

 そこで、くるりとこちらを振り向く。

 瑠璃の髪が、ふわりと揺れた。

 透過した陽光に、その黒髪が不思議な青色に見える。

「ずっと疑問だったんですね? 他の誰かが女王になったとしても、宰相として取り組める夢だと。二番目でも構わないだろう、と」

 瑠璃が僕の言葉を待たずに、考えを代弁する。

「そして、その質問を、今まで待っていてくれていたんですね。玖郎くんは、私が思っているよりも、ずっと優しいんですよね……」

 そう言って、微笑む瑠璃を見て。

 僕は、答えを聞くまでもなく理解してしまった。

 瑠璃は――。

 答えを持っている。

 二番目ではダメだという理由を。

 自分自身が女王になる必要があり、そうでなくては実現できない考えが――あるのだということを。

 瑠璃は、静かに話し始めた。

「今の地平世界は、私が理想とする『優しくできる世界』とはほど遠いものです。身分制度があり、王政があり、不平等と不平不満が渦巻いています。クロミではないですが、革命すら必要だと思わせるほどに――」

 瑠璃は――。

「私は、女王を含めた、全ての身分制を廃止する必要があると思っています」

 瑠璃の答えは――。

「私は、この王位継承試験で一番になりたい。女王になり、しかるべき法を整え、しかるべき体制を作り上げ、しかるべきタイミングで――」

 瑠璃の視線が、僕を真っ直ぐに捕えた。

 そして、瑠璃は言った。



「――王位を放棄し、王制を廃止します」



 ――そうか。

 そこまで、考えていたのか。

 瑠璃は、女王を辞めるために、女王になるつもりなのだ。

 胸が苦しい。

 これほどに手に入れたいと願う理由が、それを捨てるためだなんて。

 瑠璃の願いには、必要な一手なのだろう。

 深く冷静な思考でなければ――。

 女王になれば実現可能だと考えてしまうだろう。

 なにしろ、瑠璃は女王に手の届く立場だ。

 国の中心になれる可能性があるのだ。

 その瑠璃が。

 たった十数年の人生で。

 女王になれるのに。

 それでも、女王であることを放棄するとまで決意させる――魔法世界の現状は、そういう状態だということだ。

 けれど。

 それは。

 その道は――。

「ね。さすがに茜たちには、頼めませんよね?」

 なんという険しい道だ。

 その行程を想像すらしたくないと感じさせるような――茨の道だ。

 狂信者の道であり。

 殉教者の道だ。

 世界全てを敵に回すと言っても過言ではない。

 少なくとも、瑠璃が存命のうちには感謝もされないだろう。

 後世の歴史家に評価されれば上等、というところだろう。

 家族も、親族も、友人たちも、領土の住民たちも、他の貴族や身分を持つ人たちも――そして、激動の渦中に投げ込まれることになる身分の低いものたちや、革命を志す者たちすら、瑠璃と共に立ちはしないだろう。

 孤独の道。

 たった一人の――。

 十字架を背負う道だ――。

「分かった」

 その覚悟を前に――。

 僕は、改めて誓いを口にせずにはいられなかった。

 せめて――。

「僕は……僕だけは、何があろうと、力の限り、知力の限り、命あるかぎり瑠璃を助ける。瑠璃とともにいる」

 それは願いだ。

 せめて僕だけは、彼女の隣に立っていたい。

 せめて、一人ではなく、二人で。

「――絶対に、だ」



 あの虹の下で。

 はい、と頷く瑠璃の声は、涙の色をしていた。 



(『2番目の魔法少女[2]予定にない嵐』――完)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ