亜門土夏の上から目線盛膳説
副会長、同室者、そして担任をめでたく虜にした少年X。クラスでの自己紹介も元気よくし、席が近いスポーツ系の爽やか少年とも仲良くなる。
そして時が経ち昼休み。爽やかクンと不良クンに連れられて訪れた『食堂』。その広さやきらびやかさに驚くX。注文したオムライスを食べていると急に騒がしくなる食堂。
何事かと入り口の方を見ると、
「会長様だ!」
「今日も麗しいです!」
「副会長様もいるよ!」
「生徒会全員が食堂に!?」
「うわ、ラッキー!」
「ククク、王道が目の前に……」
「うっるさ……」
周りの皆は顔を赤らめたり鏡を見て髪を整えたりニヤニヤしている。
その中に見た覚えがある顔が。目が合うと先程見た美しい笑顔が。
「X!」
こちらに走ってくる副会長に、彼に着いてくる生徒会役員たち。
副会長と親しく話していると、ふと会長が近付いて――
――チュッ
Xの唇に自信の唇をつける。加えて舌を絡ませる。食堂内は静まりかえっており、全員が二人に注目しているため、会長がたてるクチュクチュという官能的な音だけが響いている。
そして会長は最後に軽くチュッと音をたてて口を離す。
Xは暫く震えたかと思うと――
「……ふっざけんな!!」
さて、いい(?)ところできろう。
そもそもこの王道展開、門での出逢いが第一イベントとすると、食堂イベントは第二イベントと言えるだろう。
しかし『イベント』が起こるには、『舞台』と『役者』が揃わなければ話にならない。
第一、第二イベントともに『転校生』が必要なのはともかくとして、第一イベントに必要な役者は『副会長』、舞台は『校門(前)』である。
そして第二イベントに必要な役者は『会長』は勿論、『生徒会役員』に『一般生徒』だ。
――そして舞台は当然『食堂』である。
すなわち、食堂という『舞台』が|存在しなければいけない《・・・・・・・・・・・・》。
加えて食堂という舞台があるならば必要不可欠な脇役がいる。
食堂があるなら『ウェイター』は勿論いるし、『料理人』もいる。
名家の子息・御曹司が集まる『王道』『学園』。幼少期の頃から俗にいう高級料理で舌が肥えている彼らは、生半可な料理では満足しない。最高級の食材で作られた最高級の料理を最高級のサービスで提供されなければ我慢がならないだろう。
それゆえ王道学園の食堂には、超一流のウェイター、
そして、超一流の料理人がいる。
ちなみに王道的に、我が学園にも凄腕料理人がいる。
彼女の名前は亜門土 夏。ミシュランに世界で初めて四つ星を獲得させた『超理師』の異名をもつ。
彼女の料理はとにかく『美味い』。
我が十三夜学園には食堂内が一般ブースと特別ブースに分かれている。生徒会役員や風紀委員などに所属する、もしくは学園内ランキングで上位に名を連ねている者のみが特別ブースの使用を許されている。
しかし提供する料理に違いはない。周りが騒がしく、落ち着いて食事が出来なくなったために特別ブースが作られたのであり、提供する料理の高級さに違いはないのだ。
提供する料理に違いがないということは、料理を作る料理人にも違いはないということだ。
そう。学園の食事のすべてを彼女が作っている、ということなのだ。
無論寮内のコンビニやショップは別だが、食堂内の食事は洋食和食中華イタリアフランスエトセトラ。古今東西、ありとあらゆる食事は彼女によって作られる。
彼女の料理を食べた者は、万人が「美味い」という。
数多の料理人が「上手い調理」をしてきた。無論それでも料理は旨くなる。
しかし彼女の料理はとにかく『美味い』。
今が旬の材料を使い、その材料に最適の温度や包丁捌き、そして盛り付ける。
以前新聞部が彼女を取材した時、彼女は自身が美味い料理を作ることについてこう話していた。
『私は何も特別なことはしてないさ。愛情なんてモンこれっぽっちも入っちゃない。ただ、お前らが「美味い」と考える、感じる料理が私には分かるだけだね。……え?いや別に私は自分のことを凄いだなんて思わないよ。「超理師」なんてけったいなあだ名つけられてるけど、私だって勝てない奴位いるさ。超理師の称号はアイツにこそふさわしいと思うね』
ナチュラルにノロケられたらしい。ちなみに彼女が言う「アイツ」は誰のことかは教えてくれなかったそうだ。
亜門土夏の味覚は異常だ。彼女の舌は他人の味覚の数万倍の感覚を誇っている。
ちなみに彼女、自分の作った料理を食べ残されたりぞんざいに扱われた場合、それから一ヶ月、それらをした人物に土下座し続けてもらわなければ、そいつに二度と自身の料理を食わせる気はないほどにサディスティックである。




