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そんなフラグはへし折ってしまえ  作者: 耀
死亡フラグ
3/7

03



――死ぬんだなあってぼんやりと思った。

後ろに、幼馴染を庇いながらでもまあ悪くない死に方だとマークはメディアには絶対いえないような事を内心で呟いて。迫り来る剣を見ていられなくて目を閉じた。

心残りは、愛を告げて約束をして将来を共に過ごそうと決めた村に残してきたもう一人の幼馴染。


もう二年も顔を見てない。もう一年も、連絡を取ってない。

年頃の女の子だったんだ。きっと帰ったら美人に育っている姿を見れたことだろう。


――ああ、最期に。会いたかったな。





次の瞬間には、身体中を鈍い痛みが襲った。








――マークが次に目を開けて、目の前に敵国の将軍が倒れていたことにまず驚いた。

続いて、身体は地に伏しているものの、将軍の剣が彼の身体を貫いていないことにまた、驚いた。



「――え?」

「こおんの馬鹿が!!」


更には自分が庇った幼馴染が思い切り頭をグーで殴ってきた。怒られるだろうとは思ったが行き成りグーで殴られるとは思わなかった。マークは両手で頭を押さえて「何すんだよ!」と後ろのメディアを振り返った。その瞬間、全身が激痛を訴えたがどちらかというと混乱の方が強かった。何が起きたのかさっぱり分からない。


「……えっと、何が起きたの」

「貴様の死亡フラグを粉々に砕いてやった」

「しぼ……ん?」


メディアの言う事はよく分からない。マークは身体を起こしながら大きな負傷が特に何も無いことを確認する。目立った外傷は特に無かった。身体中を襲う痛みは、内側から訴えてくるようで頭をそっと傾げる。

「……どゆこと?」

「魔法をぶっ放した」

「……んん?」

「ようは、貴様が飛び込んでこなくても反撃してたから私は死にやしなかったということだ」


メディアの言っていることは、多分事実だった。嘘を言っている表情でもないし、この現状を見るに多分マークが此処に飛び込んでこなくても平気だったに違いない。




――実際事実である。


メディアは片手に魔法を放つ準備をしていたし、マークが飛び込んできても来なくてもどちらにせよ今地に伏して目を回しているヴィオラ将軍はやはり目を回していただろう。それの数が一人か二人かの問題だ。

メディアは物凄くほっとしていた。唱えていた魔法が即死を煽るものでなくてよかったと。

だからこそ戸惑うことなくマークを巻き添えにして魔法をぶっ放せたのだし、そうでなければメディアはきっと躊躇してマークは死んでいたかもしれないし、メディアも死んでいたかもしれない。

だからまあ、結果的にはこれでよかったのだろうと目を回すマークに回復魔法を唱えながらそんなことも考えた。



兎に角――これでマークの死亡フラグも粉々に折れたと信じていたい。

敵兵は将軍が倒れたことにより戦意を喪失していたし、これ以上戦闘が続くようなことはなさそうだ。

きっとこれで戦争は終わるし、終戦準備はあれど何れ近いうちに彼らは故郷に帰る事が出来る。


「――シュリーが待ってるな」

「……ああ、そうだな」


メディアの差し出した右手をとって、マークは小さく笑った。











「かんぱーい!」

最後の戦から一ヶ月近く経った。終戦宣言がされて、徴兵で集められた兵士は一時的に軍で復興活動を行い。ある程度落ち着いてきた頃に彼らは漸く軍から解放された。

そして、メディア率いる隊は別れる前、最後にと出立前と同じ酒場に集まっていた。

グラスを皆で掲げ、皆で笑いあう。それを幸せだと感じながらメディアは一気にグラスの酒を飲み干した。

もう兵士でない彼らとの上下関係など無くなり、年齢順で言えば下から数えた方が早いメディアは今までの敬語と打って変わって、皆から砕けた口調で話しかけられていた。


「生き残れたのはお前のお陰だぜ!」

そういってがしがし、と頭をかき回されたり飲み比べを挑戦されたり、そうこうしながら何本もの空瓶を出し――


「これで別れだと思うと、少し寂しいな」

「なー!」

ぐでんぐでんに酔った彼らを見つめて、酒に強いメディアは小さく笑う。ほっとんどの人物は酔い潰れる程まで飲み、もう目が虚ろになったマークだけが僅かに意識を残していて。

――戦は大変だったが、このメンバーと居た日々は確かに幸せだったと。

そんなことを考えて。


「――これで、故郷に帰れるな」

「ああ。シュリーが待ってるな」


乾杯。とまた一杯グラスを互いにぶつけて。マークがでれーっと情けなくも幸せそうな笑みを浮かべる。

「うちに帰ったらよ、結婚して――親父の畑を継いで、もう剣なんかにぎらねーんだ!」

「ふふ。そうなるといいね。何より貴様とシュリーの結婚式は是非出たい」

「呼ぶに決まってんだろ!友人代表だよ」


からから、とマークが笑いながら酒をぐびーっと飲み干す。メディアも、酒に強いとは言えそろそろ眠くなってきて。互いにテーブルに突っ伏した。


「――ああ、楽しみだなあ」

「そうだな。楽しみだよ、私も」







綺麗な服を身体に纏って、互いに笑って誓いを立てて。

マークが畑を耕している姿なんて簡単に想像できて、思わず噴出すぐらいだった。

シュリーもなんだかんだ言って、畑を耕して。わいわいと穏やかな家族を作るんだろうなあ。

偶には顔を出さないといけない。色々と考えて、メディアも意識を飛ばして。







そんな幸せが。

この時のメディアも、マークも来ると信じてこれっぽっちも疑っていなかった。







死亡フラグ終わり。

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