表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

恋じゃない

体育祭から3日。

何となく気まずくて、セイジと目を合わせられなかった。

            だから、今日の席替えは正直嬉しかった。

セイジと離れられる。

顔を見なくてすむし、たぶん話すことだってなくなる。

体育祭の日に感じた気持ちはきっと気のせい。

セイジなんか好きになってない。

席が離れれば、こんな不思議な胸の痛みもなくなる。

ひたすらそんな事を思いながらクジを引いた。

            『またお前の隣かよ』

            …私のクジ運はよっぽど悪いらしい。

移動した席の隣にいたのはまたもセイジだった。

            『…最悪』

            そうつぶやきながら仕方なくその席に腰を下ろす。

最悪なのはそれだけではなかった。

体育祭でセイジの人気があがったらしく、休み時間になると何人もの女の子がセイジの席にやってくる。

            『セイジくんて運動も出来たんだねぇ』

『マジかっこよかったよ』

『てか、カノジョとかいるの?』

            騒がしいぐらいの女の子達の黄色い声。

昼休みにはさらに女の子の人数が増えていた。

            『ちょ、ごめん。俺購買行くから』

            女の子達の質問攻めに合いながら、セイジがそれを制止して立ち上がった。

            『えぇ〜?私、お弁当作ってきたよ?』

『あっ、私も!コレ食べてよ〜』

            そしてセイジの机の上に次々とお弁当箱がのせられていく。

セイジはすでに教室を出ようとしていた。

            『後でちゃんと全部食うから!』

            扉の手前で女の子達にそう叫ぶと、さっさと教室を出ていった。

            『あ〜行っちゃった』

『私たちも戻ろっか』

            続くようにして女の子達の群れが教室から出て行く。

しばらくして戻ってきたセイジの手には、サンドイッチとジュースがあった。

            『ほら』

            そう言って、それを私の机に置く。

            『…?』

『足。痛くて購買まで行けねぇんだろ』

            体育祭の日に捻った足はまだ痛みが残っていた。

            『何で…』

『あんなうるさい中ずっと席座ってれば嫌でも気付く』

            そう言って自分の机に置かれたお弁当を食べ始めた。

            『……』

『んぁ?』

            無意識にその様子を見つめていた私に気付き、不思議そうにこっちを見た。

            『あ、他のがよかった?何食えっかわかんなかったからさ。とりあえず前食ってた奴にしたんだけど』

『えっ?あ、ありがと…』

『どーいたしまして』

            そう言って再びお弁当を食べだした。

セイジとまともに話すのは3日ぶりだった。

心臓の音がうるさいぐらいに大きく聞こえる。

            『って…てゆーか、モテモテじゃん』

            不意にそんな言葉が口をついた。

            『ん?』

『ソレ』

            積み上げられたお弁当を指差す。

            『あぁ…』

『全部食べるの?』

『当然。食わねぇと悪ぃじゃん?』

            当たり前のようにそう言ってニッと笑う。

セイジのその言葉に、いつもなら『カッコつけすぎ』とか『調子乗んな』とか言っているはずなのに、心臓の音はますますうるさくなった。

            セイジなんか好きになるわけない。

ちょっと優しくされたから、勘違いしただけ。

そう、勘違い。

この心臓の音も。

胸の痛みも。

自然と緩む顔も。

全部勘違い……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ