バトル!?
『じゃあ…この問題を誰かにやってもらおうかな。え〜…』
次の日の数学の時間。
先生がそう言って教室を見回した。
どうやら昨日習った公式を使うらしい。
昨日の数学はちょうどセイジと言い合ってた時。
授業を聞いていなかった私は、黒板に書かれている問題文を見ても、さっぱりわからなかった。
『(当たりませんように)』
先生と目が合わないように下を向きながらそう祈っていると、セイジが手を挙げたのがわかった。
『え〜……村松』
先生が座席表で名前を確認してからセイジをさした。
『えっと、吉田さんがわかるそーです!』
思わずセイジを見ると、ニヤリと意地の悪い笑顔を見せた。
『そうか、じゃあ吉田。答えてみろ』
『え…えっと…』
授業を聞いていなかった私にわかるわけがない。
戸惑う私を見てセイジが心の底から楽しそうな表情になった。
『ん?どうした、吉田。わからないのか?』
『あ…あの…。…はい』
『…じゃあ、他にわかる人…』
先生が呆れたようにそう言って再び教室を見回す。
クラス全員が見守る中、恥をかいた私は、セイジの方を思い切り睨んだ。
『ククッ、ばぁか』
小声でセイジがそう言ってくる。
『ムカつくムカつくムカつくぅぅぅ!!』
昼休みになった瞬間私はヒナに向かって叫んだ。
『私がわからないの知ってワザと言ったんだよ!?絶対!』
『ま、まぁまぁ。悪気はなかったんだって』
『悪気がないぃ!?あんなクソ意地悪い笑顔のドコに悪気がないってゆーのよ!?』
勢い良くまくしたてる私をなだめるようにヒナが肩を叩いてきた。
『落ち着いて。お昼ご飯買いに購買行こ、ね?』
興奮が治まらない私はヒナに手を引かれて購買へ連れてこられた。
サンドイッチとジュースを手に取り、レジに向かう私の目に、天敵、セイジの姿が飛び込んでくる。
セイジは今まさに会計をしようとしていた。
『すいません、これも一緒にお会計お願いします』
急いでレジまで行き、カウンターにサンドイッチとジュースを置く。
『は?』
財布を開いたままセイジの動きがとまる。
『え…えっと…一緒でいいの?』
購買のお姉さんが困ったような顔でセイジにそう尋ねた。
『え…いや』
『セイジくん?早くしないと後ろつかえてんですケド〜?』
『…っ。てめ…絶対後で返せよ…』
後ろを軽く確認したセイジは、渋々ながらも私の分まで会計をすませた。
もちろん返す気など毛頭ない。
『おぃ、金』
教室でヒナとサンドイッチを頬張っていると、突然目の前に手が伸びてきた。
『何のコト?』
『金だよ、か〜ね!何でお前にオゴんなきゃいけねぇんだよ』
『アンタなんかにオゴられたくもない』
サンドイッチから視線を外さず、吐き捨てるように言った。
『だったら返せ!』
『オゴりじゃなくて慰謝料だも〜ん』
最大級の笑顔をサンドイッチに向けながらそう言うと、セイジは大げさなため息をついた。
『何だそれ』
『さっきの仕返し?』
『…ったく。アホ?』
そう言いながらも、セイジはそれ以上返済を求めなかった。
やり取りを見ていたヒナに言わせると、
『さっきのコト悪いと思ってるんだよ。悪い人じゃないじゃん』
となるらしい。
『アイツは悪い人!』
『もぉ美波ぃ〜』
ヒナが苦笑いする。
確かに悪い人ではないかもしれない。
悪い人ではないかもしれないけど、気に入らない人。
それだけは間違いないと思う。
コイツと解り合える日なんて一生来ない。




