予言と運命の前夜 ―霧亞姉弟の場合―
「姉上!」
自分を呼ぶ声に振り替えると自分とよく似た、けれど左右対称のオッドアイを持つ少年が目に入った。
「琳、どうしたの?」
「今日、狩りに出かけたんだ。」
「か、狩りぃ!」
思わず玲は大声をあげてしまった。
「大丈夫けがはなかった?泣いていない?」
「馬鹿にしないでよ!」
玲の言葉に琳はぷいっとそっぽを向いてしまった。
過保護だということは分かっているが、それでも治らないのが玲の悪い癖だ
コフの一族は、不思議な力を持つため、あらゆる人々に狙われやすい。
しかもどっから流れ込んできたのか、コフの肝は不老長寿の薬になるといううわさもある。
玲はたった一人の家族である弟を、自身の両親と同じように失いたくないと思うあまり、少々過保護になっていた。
「姉さん、大丈夫だよ。 ……あ、今日は猪を捕まえたんだ。友達と一緒に。 村の人たちと一緒に食べようよ」
そんな姉の心を知ってか知らずか、琳は玲の腕を引っ張って、村長の家に連れて行った。
「はあ、仕方ないわね。 それよりわかっているの?」
「『不用意に村を出るな。危なくなったらすぐに逃げろ』でしょ?」
「そう。わかったら。」
「はいはい、わかっているよ。」
そんな会話をしながら、二人は赤い空の下を歩いていた。
運命の糸が、二人に絡みついているとも知らずに
そして運命は動き出す。
コフの村は、彼らの力を狙う悪徳大臣によって燃やされた。
村長を始め、隣人や友人。
たくさんの人が殺された。
幼い姉弟は走った。
ただただ生きるために、逃げた。
そんな時に出会ったのだ。
彼に………
「幼いコフの姉弟よ。 私とともに来る気はないか?」
長い亜麻色の髪をなびかせる美しい男。
「私の名はクリフトル。お前たちは……?」
確実に運命は二人をとりこんでいた。
本編ではまだ語られていない二人の過去を、忘れないうちに書いておきました(笑)
あの二人とクリフトルの関係とは……
気になる方は次回をお楽しみください
予定がくるわなければ、あと数話で出るはずなので!