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メナセリア─1

「────わよ」

暗闇で何かが聞こえる。綺麗な声だ、もしかしたら女神の声...


「ついたわよ!」

瞬間、太ももに強い痛みが走る。


「──っつ」

衝撃で瞼が開き、周囲の光を認識する。

白を基調とした清潔感に溢れた建物に来たようだ。

そして相反する黒の服を着た少女、エリスがおんぶされている僕の太ももをツネっていた。


「そろそろ降りてくれる?」

「うわっ、ちょっ」


僕にそう言い、エリスは僕の足を手から放した。

強制的に降ろされた僕はまた床に座り込んでしまった。

開放的になったのだろう、エリスは服をパタパタとはたいて背伸びをしている。


「こちらエリス、本部到着。迎えにきてください。」


通信機で連絡を取り始めるエリス。

本部に連れてきたことで、僕のことはもうどうでもいいのだろう。先程までと違い顔が生き生きしている。


10秒もせず、廊下から足音が聞こえる。


「やだわーエリスったら、そのままおんぶして連れて来てくれても良かったのに。アオハルよアオハル。」


180cmはあるだろうか、研究職の白衣に身を包んだ金髪の男...口ぶりは女性的だが...首にはスカーフを巻いている。

その男が僕たちに向かって歩いてきた。


「そういうのセクハラですよ(ひじり)さん」

「ほーんと、近頃はセクハラのボーダーラインが下がって生きづらいわねぇ」


エリスとの会話のラリーを終えると、聖と呼ばれる男は僕に話しかけてきた。


「私はメナセリア本部、悪魔研究対策課の早乙女聖(さおとめ ひじり)よ。

蓮司君、君の情報はもう本部に送られていて、私も確認済みよ。

これから体や精神に異常がないか改めて調べるのと、悪魔についてのあれやこれ教えちゃうわね。」


そう言うと僕の体をひょいっと片手で持ち上げ肩に担ぐ。ガッチリとホールドされているようでピクリとも動かせない。


「んんっ、久々の貧弱な男の感触っ」


そう言うと、聖の腕の筋肉が一際膨張した。

僕は怯えた視線をエリスに向ける。


「ははっ、まぁ私はこれで、またね」


そういうとエリスは僕と反対方向に歩き出した。

終わった、このまま身体測定という名のもと、僕は貞操を奪われるのだ。


それなら最後に......


「あ、あの!!エリス....さん!!助けてくれてありがとう!」


僕の最後の叫びに彼女は足を止めて振り返った。

返事は無かったが、微笑むその顔は今まででみた表情の中で一番の可愛さだった。


「アオハルねぇ〜」


小指を噛みながら聖は僕とエリスを交互に見て満足そうにしていた。


「さ、それじゃあ行くわよ蓮司君。」

「あっ...いやぁ...」


僕は拒否しても逃げられない恐怖を感じ、担がれたまま廊下の突き当たりにある部屋に運ばれたのだった。

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