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※第六話 ゴードン(ドジ悪党)登場

「クハハハハ!ついに手に入れたぞ!伝説の秘宝、『精霊石』を!」


 薄暗い洞窟の中で、場違いな礼服に身を包んだ男は高らかに笑っていた。

 しかしその手にあるのはただの光る石ころだった。


「ゴードン様、それはただの夜光石かと……」


 部下の声がゴードンと呼ばれた男の笑い声を遮る。


「な、なんだと!?これが精霊石に決まっているだろう!この光を見ろ!精霊の力が宿っている証拠だ!」


 ゴードンは必死に反論するが、石ころはただぼんやりと光っているだけだった。


 その頃トホホたちは森の中を移動していた。


「しかし本当にこの先に村があるのか?もう何日も歩きっぱなしなんだが……」


 トホホが疲れ切った声で呟く。


「文句ばかり言うな!トホホ!ほら、あそこに何か見えるぞ!」


 アリスが指差す先には怪しげな洞窟があった。


「まさか魔物の巣窟じゃ……」


 トホホが青ざめる。


「まさか~、こんなところに美味しい記憶の足跡があるかもよ~」


 グルリンが目を輝かせる。


「グルリン、お前は本当に……」


 トホホが呆れていると、洞窟の中からゴードンの声が聞こえてきた。


「クハハハハ!精霊石の力、思い知ったか!さあ願いを叶えてもらうぞ!」


 ゴードンは石ころに向かって叫んでいる。


「……あれは?」


 アリスが眉をひそめる。


「なんか、変なのがいるみたい……」


 リリアがゴードンを指差す。


 トホホたちはゴードンの様子を伺うために、そっと洞窟の中に入った。


「ええい、早く願いを叶えろ!世界征服だ!そうだ可愛いお嫁さんも欲しいぞ!」


 ゴードンは石ころに向かって叫び続けるが何も起こらない。


「ゴードン様その石では何も……」


 部下が再び忠告しようとするが、ゴードンは聞く耳を持たない。


「うるさい!お前は黙ってろ!……ん?お前たちは誰だ?」


 ゴードンはトホホたちに気づき、怪訝そうな顔をする。


「僕たちはただの通りすがりの冒険者だよ。君は一体何を……?」


 トホホが尋ねる。


「フフフ、教えてやろう。俺様はゴードン!この世界を征服する男だ!そして、この精霊石の力で、願いを叶えてもらうのだ!」


 ゴードンは得意げに石ころを掲げる。


「……それ、ただの夜光石だよ」


 アリスが呆れたように言う。


「な、なんだと!?そんなはずはない!これは精霊石だ!精霊の力が宿っているんだ!」


 ゴードンは必死に否定する。


「グルリン、こいつ、精霊の力を勘違いしてるみたいだぞ」


 トホホがグルリンに話しかける。


「ふ~ん、記憶の足跡は持ってなさそうだし興味ないな~」


 グルリンはあくびをする。


「お前たち俺様の邪魔をする気か!ならば力ずくで排除してくれる!」


 ゴードンは部下たちに指示を出す。


「ですがゴードン様、相手はただの冒険者のようですし……」


 部下たちは乗り気ではない。


「うるさい!さっさとやれ!」


 ゴードンは怒鳴る。


 部下たちは仕方なくトホホたちに襲いかかるが、トホホたちは難なくかわす。


「お前たち、弱すぎるぞ!俺様が相手をしてやる!」


 ゴードンは自らトホホたちに襲いかかるが、あっさりと転んでしまう。


「ゴードン様!」


 部下たちが駆け寄る。


「くそー!覚えてろよ!必ず精霊石の力を手に入れて、お前たちに復讐してやる!」


 ゴードンは捨て台詞を残して、部下たちと逃げていった。


「……あんなのが精霊の力を悪用しようとしていたのか」


 トホホは呆れ顔で呟く。


「まあ、あんな間抜けな奴、放っておいても大丈夫だろう」


 アリスはそう言って洞窟を後にした。


「とりあえずドジ悪党って名前を付けておくね。それにしてもあの男達、ちょっと美味しそうな味がしたんだけどな~」


 グルリンが呟く。


「グルリン、お前は本当に……」


 トホホは再び呆れ顔になった。


「まぁ、どうせもう会う事なんてないだろうけどね〜」


 グルリンが笑いながら話して数日後、やはり機会は訪れた。


「フハハハハ!ついに見つけたぞ!伝説の精霊石の在り処を!」


 ゴードンは古びた地図を片手に、薄暗い洞窟の奥へと進んでいた。


「ゴードン様、本当にこんなところに精霊石が?」


 部下が不安そうに尋ねる。


「決まっているだろう!この地図は、かつて精霊石を手に入れたという伝説の冒険家が残したものなのだからな!」


 ゴードンは自信満々に答える。


 その頃、トホホたちは洞窟の入り口付近で休憩していた。


「しかし本当にこの先に村があるのか?もう何日も歩きっぱなしなんだが……」


 トホホが疲れ切った声で呟く。


「文句ばかり言うな!トホホ!ほら、あそこに何か見えるぞ!」


 アリスが指差す先には洞窟の奥へと続く道があった。


「まさか魔物の巣窟じゃ……」


 トホホが青ざめる。


「まさか~、こんなところだからこそ、美味しい記憶の足跡があるかもよ~」


 グルリンが目を輝かせる。


「グルリン、お前は本当に……」


 トホホが呆れていると、洞窟の奥からゴードンの声が聞こえてきた。


「フハハハハ!ついに見つけたぞ!精霊石はどこだ!?」


 ゴードンは興奮した様子で叫んでいる。


「……あれは、もしかして先日の?」


 アリスが眉をひそめる。


「なんか変なのがいるみたい……」


 リリアがゴードンを指差す。


 トホホたちはゴードンの様子を伺うために、そっと洞窟の中に入った。


「精霊石はどこだ!どこにあるんだ!?」


 ゴードンは洞窟の中を必死に探している。


 その時グルリンがゴードンの目の前に飛び出した。


「ねえねえ、ボク、グルリン!精霊だよ!キミ先日出会ったドジ悪党だよね?精霊石を探してるの?ボクならキミの願いを叶えてあげられるかもよ?」


 グルリンは得意げに話しかける。

 精霊といえども、人から頼りにされたいと思うものなのだろう。


 しかしゴードンはグルリンを一瞥しただけで、再び精霊石探しに夢中になってしまった。

 まさに眼中にない、である。


「邪魔だ!どけ!俺様は精霊石を探しているんだ!」


 ゴードンはグルリンを払い除け洞窟の奥へと進んでいく。


「ええ~!?ボク、精霊なのに~!?なんで無視するの~!?」


 グルリンはショックを受けて、その場にへたり込んでしまう。


「……あいつ目の前にいる精霊に気づいてないのか?」


 トホホが呆れたように呟く。


「あんなのが精霊石を狙っているのか」


 アリスも呆れ顔だ。


「グルリン、ドンマイ……」


 リリアがグルリンを慰める。


「……あいつ、本当に精霊石を見つけられるのかしら?」


 シズクが心配そうに呟く。


 その後、ゴードンは洞窟の奥でただの光る石ころを精霊石と勘違いして持ち帰り、再びトホホたちの前に現れるのだった。


「フハハハハ!ついに手に入れたぞ!伝説の精霊石を!」


 ゴードンは高らかに笑うが、その手にあるのはただの光る石ころだった。


「ゴードン様それもただの夜光石かと……」


 部下が恐る恐る忠告するが、ゴードンは聞く耳を持たない。


「うるさい!これは精霊石だ!精霊の力が宿っているんだ!」


 ゴードンは石ころに向かって叫び続けるが、何も起こらない。


「……あいつ本当に懲りないな」


 トホホは呆れ顔で呟く。


「まあ、あんな間抜けな奴、放っておいても大丈夫だろう」


 アリスはそう言って再び歩き出す。


「それにしてもあの石ころ、ちょっと美味しそうな味がしたんだけどな~」


 グルリンが呟く。


「グルリン、お前は本当に……」


 トホホは再び呆れ顔になった。


 さらに数日後。


「さあさあ、皆さん!伝説の精霊石の力をその身で体験してみませんか!」


 ゴードンは広場の真ん中に特設ステージを設け、怪しげな宣伝文句を叫んでいた。


「この精霊石はどんな怪我も病気もたちどころに治してしまう、奇跡の力を持っているのです!」


 ゴードンが掲げたのは例の如くただの光る石ころだった。


「嘘だ!あんな石ころで病気が治るわけがない!」


 広場に集まった人々は、ゴードンの言葉を信用していない。


「何を言うのです!この石は、本物の精霊石なのです!証拠をお見せしましょう!」


 ゴードンはそう言うと、部下の一人に怪我の演技をするように指示した。


 部下は大げさに足を抱えて苦しみ始めた。


「ほら、見てください!こんな重傷も、精霊石の力があれば……」


 ゴードンは石ころを部下の足に当てた。


 しかしもちろん何も起こらない。


「……あれ?おかしいな?」


 ゴードンは焦り始める。


「おい!全然治ってないぞ!」


「インチキだ!インチキ!」


 広場の人々は怒り始めた。


「金返せ!」「詐欺師!」「吊るし上げろ!」


 人々はゴードンを取り囲み、今にも襲いかからんばかりの勢いだ。


「ま、待ってください!きっとまだ力が足りないのです!もう少し時間をくだされば……」


 ゴードンは必死に弁解するが人々の怒りは収まらない。


 その時、一人の女性が前に進み出た。


「皆さん、落ち着いてください」


 シズクは優しく語りかける。


「彼女は……確か、あの旅の一行の」


「癒やしの力を持つシズク様だ!」


 人々はシズクに気づき騒ぎを止めた。


「皆さん、怪我や病気で苦しんでいるのですね。私が皆さんの傷を癒やしましょう」


 シズクはそう言うと、回復魔法を唱え始めた。


 しかしシズクは少し緊張していたのか、呪文を言い間違えてしまった。


「癒やしの光よ、傷を……えっと、痛いの痛いの、飛んで行け~!」


 シズクの言葉に広場の人々は戸惑いを隠せない。


 シズクの魔法が発動すると、広場に光が溢れ人々の傷や病気は……

 治らなかった。


 それどころか、ゴードンの部下のズボンだけが消し飛んでしまった。


「ええっ!?」


 シズクは自分の魔法の効果に驚きを隠せない。

 トホホ達や広場の人々は、シズクの魔法に唖然としている。

 グルリンだけが癒し系ポンコツは今日も予想を裏切らないね、とばかりに笑い転げている。


「シズク様、一体何を……?」


「私のズボンが……!」


 部下が真っ赤な顔で抗議する。


「あ、あの、ごめんなさい!ちょっと呪文を間違えてしまって……」


 シズクは慌てて謝罪する。


「シズク落ち着いて。もう一度正しい呪文で」


 アリスがシズクを落ち着かせようとする。


 シズクは深呼吸をして再び回復魔法を唱え始めた。


 今度は正しい呪文を唱えることができた。


 シズクの魔法が広場の人々の傷や病気を癒やしていく。


「おお!本当に治ったぞ!」


「シズク様ありがとうございます!」


 人々はシズクに感謝の言葉を述べた。


「……くそー!」


 ゴードンは悔しそうに呟く。


「ゴードンさんもうこんなことはやめてください」


 シズクはゴードンに優しく語りかける。


「……わかったよ」


 ゴードンは渋々といった様子で、騙して売った偽物の精霊石を返金し始めた。


「チッ、これで精霊石探しの資金が……でもこれくらいじゃ、諦めないぞ!」


 ゴードンはそう呟くと、すごすごと広場を後にした。


「……また何か企んでるみたいね」


 アリスはゴードンの後ろ姿を見ながら呟いた。


「グルリンお腹空いた~」


 リリアがグルリンに話しかける。


「ん~、美味しい記憶の足跡ないかな~」


 グルリンはそう言いながらトホホの周りを飛び回る。


「……仕方ない。何か食べ物を探そうか」


 トホホはそう言って立ち上がった。


 その後もゴードンは懲りずに様々な計画を立てトホホたちを巻き込んでいくのだった。


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