3話
竜帝を倒すと決めた俺は、近くにあるという村に向かっていた。村に着いたら竜帝の情報と共に一応魔王の情報も集めようと思う。
「倒そうとは言ったけど、そんな強そうなやつらとどうやって戦えばいいんだろうか」
「竜達は数も多いからね。まずは仲間を集めないと。魔法を使う竜も多いし」
ん?魔法?
「え、この世界魔法があるのか?」
「あるよ。天祢も使えるんじゃない?記憶喪失でも感覚は覚えてるかもしれないよ」
「んー手厳しいなぁ。ま、いっちょやりますか!」
ちなみにここまでの会話で、一般常識を知らないのに妙に変なことばかり知っていたためか記憶喪失が嘘だというのは枝葉にバレていた。枝葉の目は「さすがに分かるよ」と俺に語りかけていた。彼の中で俺は単に学のない輩になっていることだろう…すこし複雑だけど。
話を戻して、今は魔法を使ってみよう。感覚でやるしかないが、前世とは違う体なので、感覚も何もない気もする。とりあえずやってみることにした。手を前…は枝葉がいるので上に向けた。手のひらから全身の色々なものを解き放つイメージで…
「いくぜ…!」
するとつま先と頭のてっぺんから、痛くない電流が手のひらに向かって走るような、そんな感覚がした。そしてつぎの瞬間…
ボン!!!
「ギャァ!!」
「大丈夫!?」
黒い何かが手から暴発し、情けない声をあげながら勢い余って転んでしまった。
「ほら、立てる?記憶がないまま使うとこんなことになるんだね…でも凄い魔力量だよこれ。天祢は名家出身とかなの?いや学がないからそれはないか…」
「んえ?」
なにやら後半失礼なことを言われた気がする。枝葉の差し出してくれた手をとって立ち上がり後ろを見ると、そこには一軒家ほどのとんでもなくでかい黒い塊があった。歩いていた道の脇の木々が薙ぎ倒され、地面には軽くクレーターができている。俺が立ち上がると枝葉はさっと黒い塊に近づき熱心に観察を始めた。
「これは鉄?いやまさか鎖?いろいろ気になるけど……いま体調どう?」
「さっきよりめちゃ気だるい」
不意に聞かれたが、言われてみればかなり気だるい。腕に関しては、まるで長時間正座していた足のように痺れている。胸もズキズキしていて痛い。
「大丈夫かい?今のでだいぶ魔力を出しちゃったんだよ。魔力は使うと疲れるからね。逆にこの量だして気だるいですんでる方が凄いよ。」
やはり俺は転生バフで覚醒しているのだ。…言ってないだけで大分重症な気もするが。
「ふふん、凄いだろう…あぁぁ」
褒められて調子に乗っていたら足が崩れた。サッと枝葉が支えてくれて、ゆっくり座り込んだが、足も痺れて膝が笑っている。これはどうやら想像以上に疲れているらしい。
「こんなに魔力つかったら疲れるよね。もうすぐ日も暮れるし、今日はこの辺で休もうか。」
「あ、ありがとう…」
その場に倒れ込んでしばらく休んだ。しばらく休んだらすっかり治ったので、その後ご飯の支度やら寝床の作り方やら、野宿のイロハを教えてもらった。枝葉よ、おそらく俺とほぼ同世代であろうにこの知識量。頭が上がらないとはまさにこの事である。…家族と死別と言っていたし、ずっと一人で暮らしていたのだろうか。一人かぁ…前世でもなんだかんだ言って、一人きりってのは辛かったもんなぁ。
焚き火の前で寝るまでの時間にこの世界の情勢を教えてもらった。
「今私たちがいる国は島国で、峡国という名前だよ。峡国の東にある大陸が竜大陸。竜帝率いる竜帝軍が支配する領域。そして峡国の西にあるのが超大陸。蟲帝が支配する領域だ。この二つの大陸の峡にあるから峡国と呼ばれているんだ」
国の名前の由来が単純かつ能動的すぎる気がする…
「今この国って攻められてるんだよね?そんな国に挟まれてたら攻められて終わりじゃない?」
「この国には魚人族の長がいるからね。そう易々と攻められないさ」
つまるところ、数年前まではやばかったけど、剣聖と呼ばれる人と魚人族の力で今はなんとかなっているらしい。部外者すぎて、よかった。という言葉しか浮かんでこなかった。魚人族、亜人族、獣人族、竜人族…一度では覚えられない量の種族がいるらしい。
全く違う世界の話。様々な種類の人間がいて、みんな魔法を使い、魔物と呼ばれる生物もいる。昨日までの自分とはまるでかけ離れた世界だが、俺はこの世界を生きてみたいと思った。前世でも生きるために必死だったけど……色々考えてたらだんだんと意識が遠くなってきた。
「…おや、もう眠そうだね。おやすみ、天祢」
「うんん…」
昔見たテレビ番組の夜空より綺麗な、澄んだ星空の下。
「おやすみ、枝葉」 そう返したのは、すでに夢の中だった。
読んでくださりありがとうございました。




