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2話

「そういえば魔王っているの?」


 前世で死亡し、転生した俺は、目覚めた時に出会った枝葉という少年と共に近くの村を目指していた。


「魔王?物語じゃないよね?現実だとしたら聞いたことないよ。あ、でも竜帝とか蟲帝とか、それっぽい雰囲気のヤツならいるね」


 村へ行く道すがら、俺はこの世界のことを(記憶喪失にものを言わせて)根掘り葉掘り聞いていた。


「竜帝に蟲帝か…魔王ってそいつらなのかなぁ」


 目覚める前に聞いたあの声。本で読んだ通りならおそらく女神様の声だ。しかしなんだか記憶が曖昧で魔王を倒して世界をー、みたいなところしか覚えていない。けど魔王を倒したら世界が救われるのはお約束のはずだ。


「その竜帝とかは悪いヤツらなのか?」


「うーん、そもそも竜帝軍と蟲帝は別の派閥というべきかな。竜帝軍はいろんな国を攻めてて、蟲帝は中立って感じだよ。だから私達にとって蟲帝は普通、竜帝軍は悪いヤツかな」


「なるほどなるほど」


まあ悪いやつだからと言って魔王というわけでもないか。そもそも魔王が悪いことをしているのかすらわからないのに、決めつけるのはよくないな。


「実際数年前までこの国の北側は竜帝軍にかなり攻められてたよ。そこの人たちも大分殺されてる」


「え」


 なるほど、この世界は魔王というより竜帝というやつが暴れているのか。こうも死が近くにあるとまた死んでしまいそうで怖い。俺は前世では無力だったが、ここは異世界。転生者が覚醒するのもお約束のはずだ。


「ここは覚醒した俺が竜帝軍とやらをとっちめてこの国を救ってやるぜ」


「是非覚醒してみんなを救ってくれ」


 枝葉はノリがよくて話しやすい。こちらの質問にも嫌な顔ひとつせず答えてくれる。なんなら楽しそうだ。しかし竜帝の話が出た途端、すこし表情が曇ったように感じた。


「もしかして、なんかあったのか?」


「うん………昔、お世話になった人が竜帝に襲われてね。その人はきっと今でも苦しんでるんだ。それに、あいつらのせいで大切な家族とも死別してしまった。だから私は竜帝を許さない。…もし記憶が落ち着いて、それでもまだその気持ちがあったら私と……いやごめん、なんでも」


「絶対倒そうぜ!竜帝!今からでも!!」


「!」


俺は反射でそう答えていた。優しく、見ず知らずの俺を手当てして村まで案内してくれた枝葉が、拳を握り震わせている。まだ出会って、話して半日のつき合いだ。そのはずなのに、協力したいと思った。一緒に戦いたいと強く感じた。なにより俺も許せないと思ったのだ。前世の時から理不尽なことが嫌いだった。悪意を持った理不尽なんてなおさら絶対に許せない。転生後の身体も共鳴しているのか、そう考えるとこの身体はなぜか熱く、鼓動が速くなっていた。


「ありがとう…」


枝葉の声は少し震えていた。女神様、ごめんな。俺は魔王より竜帝を倒さなきゃならなくなった。世界と友人。一度死んだ俺を導いてくれたかもしれない女神様に、救えと言われたのに。俺は枝葉の助けになりたい。世界を救うのは、今目の前の友人を救ってからでも遅くはないはずだ。


「そうと決まればどんどん行こう!まずは村だ!」


「…あぁ、さすがは天祢だ。」


打倒竜帝。これが俺の最初の旅の目的、そして友との約束だった。

読んでくださりありがとうございました。

今、小説家になろうでいくつか作品を読ませていただいております。比べてみると私の一話ごとの量はとても短いですね。

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