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19話

読んでいただきありがとうございました。

「この本はなんてお話なの?」


「これはムム太郎ってお話しさ。空から落ちてきたムムから生まれたムム太郎が、竜を退治するお話しさ。」


「へぇーかっこいいね!…ところでムムって何?」


「さぁ…桃の親戚なんじゃないか?」


「だってそれは桃太郎のパロディ作品だからな!」


「あ!OOくん!」




目が覚めると俺は見知らぬ部屋で寝ていた。また前世の夢か…身体中が痛く、思うように動かない。体に目を落とすと、手足が包帯でぐるぐる巻きにされていた。


「大丈夫かい?」


「ん…あぁ…生きてはいるみたいだ………って枝葉!来てくれたのか!」


「紅林さんもいるよ」


「天祢さん意識戻ってよかったです!」


竜帝を女王が撃退した後から記憶がほとんどないけど、2人が来てくれてよかった。そうだ、ヒイロを紹介しないと…


「ってヒイロは?」


「ヒイロさんはもう行っちゃったよ?」


「……は!?!?どう言うことだってばよ…」


たしかにここに連れてこられたのも勢いだったし、ヒイロにもヒイロの考えがあるのか…?それにしたって訳がわからないけど…スカウトしようと思ってたのに…


「話は変わるけどね天祢。私は今とても怒ってるんだよ」


「へ?なんで?」


あっ、今眉毛がピクってした。まずった。


「………ちょっと出てくる〜でこんな遠い町に知らない人と来たらだめでしょ!!!!」


「大変申し訳ありませんでした!!!!」


想像以上にブチギレてた!!


「まぁほら!天祢さんのおかげでこの街救われたらしいじゃないですか!いいことですよ!」


「…紅林さんの言うことも一理ありますね。ここは紅林さんに免じて不問にしてあげます。次やったら粛正するからね」


「はい!二度とやりません!!」


言われてみれば確かに、俺の行動はかなり不可解だった。ノリノリだったわけではないが、なぜあんなにホイホイついていったのだろうか…ヒイロは既にここを立ったっていうし…


「それにしてもよくここがわかったね」


「それでしたら枝葉さんが凄腕の情報屋に頼み込んで探してもらったんですよ!」


「そう、大会の参加者の情報を筒抜けにしてた情報屋のことを思い出してね。あの人がいなかったら分からなかったよ。まさかこんな遠い街に来てるだなんて」


そういえば俺の体の生前がどこ産まれかも調べたって言ってたし、ただものではない情報屋がいたのだろう。


「え、ここそんな遠いのか」


来た時は片道数十分でついたけど。話してたから短く感じたのだろうか?


「…?あの港町からこの街まで3日かかるよ?」


「…は?」


「気づかないほどだなんてそんな楽しかったの?…ってたしかに私たちも探し始めて1日と少ししか経ってないのに天祢がここにいるのは不自然…何でここまで来たの?」


「え?ゴンドラみたいなやつだけど」


「そんなものここになかったよ」


「ホラー小説の世界にきちゃった?めっちゃ怖いんだけど」


何が起きてるんだろうか…もしかしてヒイロの魔法か何かなのか?あの宝玉みたいなのは神器とか言ってたし、不思議なことが起きた可能性は十分ある…のか?


「そういえば!天祢さんに女性の方がお見舞いに来てですね、目が覚めたら伝えて欲しいと言ってましたよ!」


「あ…女王様か。でもヒイロいないしどうしようかな…」


「まだ目覚めたばかりだしゆっくりしてなよ。病み上がりなんだから」


「確かに…」


「じゃあ私は少し出てくるよ。紅林さん、天祢のこと頼みますね」


「わかりました!お任せください!」


枝葉はどこかへ出かけ、紅林と病室に二人きりになった。


「いやぁ、それにしても大変だったみたいですね!生きててよかったです!」


「まぁヒイロと女王様が頑張ってくれたからね」


「そのヒイロさんとは少ししか話してないですが、なんでついていったんですか?初対面だったんですよね?」


「それが俺にもよくわかんなくて…」


「なんかおっかないですね…いい人っぽかったですけど」


「いい奴ではあるよ、間違いなく」


「天祢さんが消えたとき枝葉さんすごい剣幕で怒ってましたから、ヒイロさんと会った時に切り殺しちゃうんじゃないかと焦りましたよ」


「えっそんなに怒ってたの?」


「もう港町ではすごかったですからね。尋問も終わりそうなくらいで急に、「天祢の気配が消えた」って言い出して、さっき出かけるって言ってましたよって言っても聞かないで焦り出して情報屋を探しにいってましたよ」


気配が消えた?……こっわ!


「そしたら情報屋が知ってるって言うんですけどとんでもない額を言ったんですよ。そしたらいいねで買うから早くしろって逆に情報屋がビビってました!私も怖かったですけど」


本当に申し訳ないことをしたな…そんなに心配してたなんて。


「行き先を聞いた後は魔道具を家まで取りに帰るから待っててくれって言われて、半日後に戻ってきた枝葉さんが持ってた魔道具でひとっ飛びですよ!すごかったなぁあの魔法」


「まだそんな隠し玉持ってるんだ…」


「こう、指輪から光が出て光に包まれたと思ったらこの街にいた〜みたいな!」


体術なら類を見ない強さを誇る枝葉だが、まだそこが見えないとは。そんな便利な魔道具とかいうものがあるのか。前の世界とはやっぱ大違いだ。


「枝葉といえば結局大会はどうなったんだろうな」


「奏さんが勝ったそうですよ。途中で異変に気づいて中止したらしいですけど、そこまで奏さんがリードしてたかららしいです。」


「剣聖って名前なだけあってやっぱり強いんだなぁ」


「そうですよ、私なんて瞬殺でしたもん。剣筋すら分かりませんでしたからね」


「戦った本人がそこまでいうなら相当なんだなぁ」


正直戦ってみたい気もする。こっちもこっちで枝葉の剣術にボコボコにされた仲間みたいなもんだからな。


「あ!そうだ天祢さん!確かまだ身分証もらえてないですよね?この街にも提携してる傭兵組合があるらしいので、歩けるようになったらリハビリがてら行きませんか?」


あ、色々あって忘れてた!そもそも身分証をつくるのが目的だったんだ。


「そうだね、そうしよう。てかもう行こうか。多分歩けるし」


「えっ、無理しないでくださいね!天祢さんって絶対回復力おかしいですよね…何回か気絶してますけど、すぐ治ってますし」


「そうかな?鎖魔法で体を補助すればだいぶ楽に動けるからそれかも」


「へぇー!すごく便利ですね鎖って」


「じゃあ行こうか…一応枝葉に置き手紙しておこう」


「そうですね、次やったら多分朝起きたとききっと天祢さん親指しか残ってないですよ」


「こわ」


病院の看護師のような人に外出許可をもらい、組合で身分証を作る旨を書いた手紙を机の上に置き、俺は紅林と共に傭兵組合へ向かった。




「魔力計がカウントストップしてますね」


「なんてこったい」


「病み上がりなのに凄いですね、さすがです」


そういえば前回も魔力が正確に測れなくてダメだったっけ。と、奥から受付の上司のような人が出てきた。


「ご心配いりません、天祢様の場合この海底城下都市カイフを救った英雄の一人として実績を上げていますので。実績を上げ認められた方は特定以上の位の者からの推薦があれば身分証を発行できます。そして女王様自らがすでに推薦してくださっているので、多少のことなら問題ありません」


「やったー!よくわかんないけど女王愛してるー!」


「よかったですね!」


なんと言う幸運。結局魔力を測定できなかったが、この街に来たおかげで無事に身分証を作れた。これはこの後女王様にお礼を言いに行かねば。


「それで天祢様、紅林様、お二人はパーティ作成などは考えておりますか?」


「「ぱーてぃ?」」


「この組合でのパーティというのは「複数人で依頼をうける仲間の集まり」のことです。パーティを正式に登録すると金銭面の分割をこちらが代行するサービスがございますので、パーティ間のトラブルになりにくかったり、依頼のレベルも本人の階級より上のものを受けることができる場合があります」


そう聞くとなんかお得そうな制度らしい。


「どうする?」


「うーん、別に傭兵になるつもりないですからね」


「…お二方の目指すところは知り得ませんが、竜帝関連の依頼が入った場合、もし他の方と争奪することになってもパーティ単位ならそちらが優勢になる場合もあります。…なのでど」


「やります。やらせてください」


「さすが天祢さん即決ですね!」


「ありがとうございます!ではこちらにサインを…」


手続きが終わり、晴れて身分証を手に入れることができた。これで他の街に行くときも安心である。


「それでは最後に、パーティ名はいかがいたしますか?」


「パーティ名?うーん…どうする?」


「竜帝絶対許さない団とかどうですか?」


「名称を文章にするのは良くないだろ…」


「有名なパーティですと、砲煙、剣聖親衛隊、クロノスタシス、白亜などがありますよ」


「はぇー、みんなかっこいいですね!ここはばっこりとかっこいい名前決めちゃってください天祢さん!」


「………うーん」


非常に悩ましい。もし変な名前をつけようものなら、竜帝を倒して凱旋したとき「彼らがあの『オムツ祭り囃子』か!」とかになりかねない。慎重に考えねば…うーん………


「…クサリビト…とか?」


「いいですねそれ!どういう意味なんですか?」


「なんだろ…急に頭に湧いてきたっていうか…どっかで聞いたのかな…」


「天祢さん鎖の魔法使いますしいいですね!覚えやすそうです」


「じゃあクサリビトで」


「かしこまりました。それではこれから紅林さん、枝葉さん、天祢さんの三人はクサリビトのメンバーとして登録させていただきます」


無事に身分証も作れて、ついでにパーティも結成した。よくよく考えればようやく異世界生活っぽくなってきたかもしれない。


「一旦病室に戻りましょう!枝葉さんも心配しているでしょうし」


「そうだな、戻って次どこに行くか決めようか」


病室に戻ると枝葉がリンゴを剥いていた。


「おかえり、また帰ってこなくなるかなと思ったよ」


「ただいま。流石にもうやらないよ」


「ただいまです!しっかり見張っといたんで大丈夫です!」


「ありがとう紅林さん」


「よし、身分証もゲットしたことだし、次の目的地を決めようか!」


「次に向かうなら蟲帝の国、超大陸アイサルエかな」


「海渡るんですね!」


「これはまた骨が折れそうだ…道中で物理的に…」


なんかこの世界に来たばっかりの頃の俺はもっとポジティブ思考だった気がするんだが。よくないな、人生は楽しく生きないと。


「今大体この国の真ん中だから、ここから東に向かってく。そして東の港町ミナミから船で向かう」


「東の街ミナミ?なめてんの?」


「たしかにややこしい名前ですが…日数はどれくらいかかるんですか?」


「指輪は温存したいから馬車になるけど、一ヶ月くらい?」


「なっが」


「遠いですね」


「けど確実に竜帝に近づいてるよ。あの町での聞き込みが正しければ魔王も十中八九竜帝で間違いない」


「まじか!」


「魔王?」


あぁ、紅林には詳しく言ってなかったっけ。そういえばそもそもニ人とも俺が転生してることすら知らないのか。


「では天祢さんの体が回復したら向かいましょう!」


「そうだね」


いつか二人にも俺の過去を話す時が来るのだろうか。それを知ったらどうなるんだろう。ヒイロみたいに全力で自分を話せない。俺の過去を知ったら、転生したと知ったら、軽蔑されるのだろうか。それともそのままでいてくれるのだろうか…

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