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16話

読んでいただきありがとうございました。

「なんだ魔王じゃなかったのか!!早く言ってくれればよかったのに!!」


「ふふっ、普通は初対面の人を魔王呼ばわりしたりはしないのですよ」


多分嘘つけない性格なんだろうけど、打首にされるかと思って血の気が引いた。この女王様はかなり温厚な性格なようで、魔王呼ばわりした俺たちを客人として王城の応接間に招待してくれた。


「この町に来たのは初めてですか?」


「そうだな!こんな綺麗で整った町並みは前世でも見たことないぞ!」


「でも女王様なのにこんな怪しい俺たちと一緒にいていいのか?」


「本当にご存じないのですか?…私に触れられる生物など存在しません。」


「?」


「どうしてだ?言葉は届くのにな!」


「私の魔法は近付くもの全てを捻り潰す呪われた魔法。原初の刻印、歪ですから」


そういえば淵帝は原初の刻印持ちだっていってたっけ。そんなに強力な魔法なのだろうか。


「例えばそこの花瓶の花をこちらに投げてみてください」


「わかった!!」


「おい!なんの躊躇いもなしに投げるな!!…って」


凄まじい反応速度で投げられた一本の美しい花は、女王に当たる直前で捻れ、圧縮されて小さな玉のようになって机に落ちた。


「害意のあるものに自動で作動します。任意でもできますけどね」


「俺もこうなるってこと?」


「例外なくそうなりますね」


「ははは!これは確かに安全だな!不便そうだけどな!」


なるほど、これはあまりにも強い魔法だ。これがもし竜帝の力だったらと思うとゾッとする。


「それで…私になにか用があるのでしょう?」


「あぁ!魔王かどうか聴きに来ただけだ!世話になった!」


「…本当にそれだけでここまで来たのですか?」


「あぁ!世話になった!」


「本当にごめんなさい」


部屋まで案内してもらっておいてカスみたいな要件でほんとすみません。


「大丈夫ですよ。ところでその魔王というのも言葉は文献で見かけましたが、現実にいるのですか?」


「女神様がそう言ってたからな!」


「女神様…本当に実在しただなんて…その方には会えるのですか?」


「わからない!多分魔王を倒したら会えると思う!!」


「そうですか…」


王女様は女神に会いたいのだろうか。というか、女神という概念があったのか。


「その文献って俺たちでも見れますか?」


「?えぇ、町の図書館にいくつか置いてありますよ」


「なるほど…ではそろそろ行きますね。俺たちの話聞いてくれてありがとうございました。」


「ありがとうございました!!!」


「そうですか、解決したようでなによりです。私としても息抜きには良い時間でした。どうぞこの町を楽しんでいってください」


すごくトントン拍子に物事が進んでいる。何か起きそうで怖いが止まっているわけにもいかない。


「いい人でよかったな!次はどこに行くんだ!?」


「次は図書館にいこう。魔王の話を探すんだろ?」


「わかった!」


かなりでかい図書館についた。懐かしい本の匂いがする。前世で少し読んでいたが、本はこの世界では初めて見る。ここまで懐かしさを感じるとは。


「ヒイロはあっちを探してくれ」


「…わかった!」


なんか返事に間があったけど、顔は悲しそうな雰囲気ではないので今は気にしなくてよさそうだ。


「本って色々あるんだなぁ」


魔法の使い方、歴史、魔物図鑑、宗教、魔王…


「あるじゃん。やったぜ」


魔王という文字が書かれた本を見つけたので手に取った。やはり歴史書の棚の列にあり、図鑑に比べてだいぶ薄く、そこには魔王を模したであろう図も描かれていた。しかし、読んでも読んでも魔王自体の解説がアバウトな上になぜか物語形式で、結局魔王は出てこなかった。


「面白くはあったけどなぁ…」


「アマネ!こっちにもあったぞ!!!」


「図書館では静かにな」


「ワカッタ」


ヒイロが持ってきた本には魔王の能力や戦い方が、これまた物語形式で書かれていた。魔王の図を見た限りでは角が生えていて、マントのようなものを羽織り、筋骨隆々であった。


「うーん、鬼人族か?でも竜人族も生えてたよなぁ」


「…やっぱ探すの難しいか?」


また悲しそうな目をしている。寂しがり屋なのかもしれないな。


「ん?大丈夫さ、絶対見つけてやるから。…あっそうだ!よければ俺と一緒にs」


「お前原初持ちだな」


「?」


急に話しかけられた。声の方を向くと深くフードを被った俺と同じくらいの背丈の人がいた。


「どちら様で?」


「誰だお前は!!」


「ふっ、私はネツァリス。原初持ちであるお前を竜人から助けてやろう」


ネツァリスさんはそういうと、着いてこいと言わんばかりに歩き出した。


「なんだアイツ、悪いけど全く信用できないぞ!」


「たしかにな。ほっとくか」


怪しげな人物はほっといて本の続きを読み始めた。


「そうそう、それで俺と一緒にさ、k」


「…お前原初持ちじゃないのか?」


「またきた!今話してるんだ!帰れ!」


「どちら様で?」


さっきの人がまた話しかけてきた。無差別に話しかけて宗教に勧誘してるのかと思ったが、狙いは俺たちのようだ。


「だから私の名はネツァリス。隠しても無駄だ、お前は原初の刻印を持っているのだろう?…もしやなんなのか知らんのか?」


「原初って名前かっこよくて強そうだな!てことで帰れ!」


本を読んでも情報に限界があるだろうし、何か知ってそうなので付き合ってもいいかもしれない。


「まぁ話くらいなら聞いてやるか」


「アマネがそういうならいいけど…」


「ふっ、そう来なくてはな。では場所を変えよう。ついてこい」


ネツァリスと名乗る人物についていき、路地裏についた。


「ここでいいか」


「こんなところでいいのか?」


「あぁ…いくつか質問させてくれ、君は竜人を何人相手にした?」


「ん?えーっと…二人?」


「ふむふむ…ではもう竜人に顔や能力は割れているのか」


「だと思いますけど…」


「どこ出身で?」


この体は確か…


「北方地区ですが」


「ん?…まあいいか…では最後に、刻印の魔法は?」


「鎖ですが…」


「アマネいいのか?そんなペラペラ話して…」


「多分大丈夫だよ」


そもそも鎖を出すことしかできない魔法だ。それを知られたところでどうとでもなるだろう。


「鎖…たしか…四…」


「」


「アマネ?」


「お前」


「四なら私でもなんとかなりそうだ。」


そういうとネツァリスはこちらに指を向け魔法を発動した。その瞬間放たれた魔法が俺の頬を掠った。


「痛っ」


「悪いけど捕縛させてもらう。私は竜帝軍四天王のネ」


「よくもやりやがったなクソ野郎が!!ぶっ殺してやる!!!!」


「ヒイロさん!?」


なぜか魔法が当たったわけでもないヒイロが激昂している


「死ね!!」


「なっ、あっ、危ないっ、このっ」


とんでもない勢いでネツァリスに殴りかかり、狭い路地でうまく避けられないのかなんとか防御している。


「俺も手伝うぞ!」


地面に手をつけ鎖を路地の壁と地面から無数に飛び出させる。


「がっ、くそ、鎖だけならなんとかなったものをへぐぅ!」


鎖がネツァリスの足を貫き、その隙をついてヒイロの暴走フィストが顔面に食い込んだ。そのまま馬乗りになって殴り続けている。


「このっ!このっ!このっ!このっ!よくも!よくも!」


「落ち着けってヒイロどうしたんだよ!」


さすがに見かねて引き剥がした。


「離せっ!アイツは僕がぶっ殺すんだ!!」


「殺しちゃダメだ!まだ話を聞いてないんだ!」


「う!…確かに…」


落ち着いたのでとりあえず満身創痍のネツァリスを簀巻きにして近いた。


「四天王とか言ってたな。話せ」


「は、はっ。誰が話すか……今は確か…女王が外壁補強…」


「なにぶつぶつ言ってる」


「コード!緊急招集!!竜帝!!!」


「は?」


急に叫び出して何かと思ったらとてつもない地響きがした。


「アマネ!悪いけどそいつはもう殺すぞ!」


「え」


返事をする間もなくヒイロがネツァリスの頭をどこからか持ってきたレンガ片のようなもので叩き潰した。


「今こいつが発動したのは絶対やばい魔法だ!勘だけど絶対!」


「…たしかに、竜帝がどうとか言ってたもんな!すまない!」


「かまうな!今は何がくるかに備えないと!」


路地から出て広場に出た。地響きが止み、数秒、この町の空が割れ、大量の水が入ってきた。ここが海底ということをすっかり忘れていた。そして何かが俺たちのいる広場に降りてきた。


「ネツァリスは…死んだか…」


竜人がいた。それは今まで感じたどの生物よりも不快な空気を纏っている。


エターナル・ガイア、起動。目標を確認、個体名、竜帝フリッジノース・ドラゴノイド。最適解、消滅魔法。行使しますか?


「なになになになに!!?!?!?!!」


急にヒイロの持っていた球が喋り出し物騒なことを言っている。ヒイロ本人もものすごく驚いている。


「…行使する!迷ってたら後悔するだけだ!!もう二度と」


行使します。発動まで二、一、


球から白色の気泡のようなものがスーッと飛んでいった。別段早くもなく、そして遅くもない。


「なんだこれは」


そしてそこに立っていた竜帝にあたった。


「?…妙に不快な魔力だったが…この国の住人の魔法がこれか?笑わせる」


「全然消滅してないんだけど!どうしようアマネ!」


「どうするもこうするも…ヒイロは女王を探してくれ、なんか誰かが外壁がどうとか言ってた気がする」


「でもアマネは!」


「大丈夫、これまで竜人相手に負けたことなんてないから」


「わかった、気をつけて!」


そう言って走って行った。


「…まぁあとで殺せばよいか。してお前、ネツァリスをやったのはお前か?」


ほんとは俺じゃないけど、ここでヘイトがあっちに向くのはまずい。


「そうだ」


「その程度の魔力の者に負けるのか…所詮木っ端な亜人ということか」


「は?」


何を言ってやがるこいつは。


「お前も混ざり物の亜人か?そのような化け物どもは我が世界には要らぬ。死ね」


「撤回しろ」


「…あ?」


「この世に要らない命なんてない。撤回しろ、亜人なんて言葉も、考え方も、お前のその思想は絶対に許さない。死ぬ前に撤回しろ」


「…は!なんだ、お前。殺した相手の人権を主張しているのか?気持ち悪い。それに自分が死ぬ前に撤回しろ?そんなのする必要ないだろ、死んだら何も残らないのだから」


「死ぬのはテメェだ!!」


そう言って鎖の破片をばら撒いた。


「鎖…はっ、四位の雑魚魔法ではないか」


「!!」


ばら撒いた破片から鎖を鋭く伸ばして突き刺す。が、鎖が弾き飛ばされ、届くことはなかった。


「テメェその魔法は!」


「ふん、流石の低脳猿でも理解できたか?我の魔法は原初の磁、金属でできた鎖など、我の脅威になり得ない」

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