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14話

読んでいただきありがとうございました。

「そうだ。俺の魔法は相手の記憶を見る魔法。産まれた瞬間から今この時まで、見てきたことも感じたことも分かる、それが俺の魔法だ。」


なんて便利な魔法なのだろうか。この魔法があれば片っ端から見ていって竜人のことも魔王のことも分かるかもしれない。


「でも最初の試合はどうやって勝ったんですか?」


「あんなもん、相手の恥ずかしい過去を晒すぞって脅しただけさ」


「うわ最低だこの人…」


紅林がとんでもなく引いている。


「あれ?枝葉にやったときはぶっ倒れてたけど…」


「あぁ、あれはな…」


「何話してるの?早く来て、尋問始めるよ」


枝葉に呼ばれ、尋問を始めることになった。彼の便利魔法は対象を一人に絞る必要があるため、俺たちは別室で待つことにした。

しばらく待つとドアの隙間から紙が滑り込んできた。

どうやら竜帝には本軍と別働隊がいて、コイツらは別働隊。竜帝は今休眠状態で、別働隊が目を覚まさせるために必要なである原初の刻印というものを探していると紙に書いてある。


「前から気になってたけどそもそも刻印ってなんなんだ?」


「刻印魔法のことだろうね。刻印魔法自体はさして珍しいものではないよ。現にメルタさんのこの魔法も刻印魔法だ」


「たしか竜人の人が私と天祢さんは原初ってやつとか言ってましたね」


「そうそこだよ、原初ってなんなんだよ。強そうだけど」


「産まれた時から魂に刻まれた魔法が刻印魔法と呼ばれてる。人によって違う魔法、遺伝も何もしない魔法。けど原初ってのはそもそも魔法の始祖となった五つの魔法だよ。それが枝分かれしていったのが現代の刻印魔法ともいえる。最近の魔法は効果が複雑化している代わりに魔力消費量が多かったり、微調整が難しかったり、効果範囲が狭かったりするんだ。原初に近い魔法は効果が単純な反面現代魔法の比にならない効果範囲や威力を持っている…ほとんどが古い学者の本に書いてあったことだけどね」


「なるほど完全に理解したわ」


「え!?私は…あまりよくわからなかったです…」


つまりは思ってた通り、俺の魔法は強いってことかな。紅林の魔法も強いのだろう。そしてなにより重要なのは悪い竜帝が寝てて、少なくとも俺ら二人がいなければ起きないってことだ。今はこちらに分がある。と、また紙が滑り込んできた。どうやらこまめに書いて送ってくれるらしい。戦法のわりに律儀なやつなのかも知れない。


「えーっと、…竜帝の名前はフリッジノース・ドラゴノイド。…使用する魔法は不明。……この国のさらに東方、絶海を越えた先にある竜帝国という場所にいる…。ってかいてあるね」


「竜人の国という場所は誰もいったことないのですか?」


「この国は島国でね、周辺は海なんだけど海獣とよばれる危険な魔物がうじゃうじゃいるんだ。沖までおいそれと船を出せないのさ」


「なるほど、竜人には翼があるのか!海に関わらないでこっちに来れるのか…今来れないのは?みんな寝てるのか?」


「二十年前の第二次竜人大戦で、初代剣聖と呼ばれた男がこの国と帝国の堺を切り裂いたんだ。海に巨大な裂け目ができて、海水が常に地脈を流れる溶岩に流れ落ちるもんだから超高熱の水蒸気が噴出し続けて周辺の空は常に積乱雲。そんな裂け目がこの星の最南端と最北端の寒冷地帯近くまで伸びてる。それが絶海とよばれる場所だよ」


「やば…剣聖何者だよ…でも避けて来ればいいんじゃないか?」


「竜人は気温が低いと動けなくなる変温動物だから、超高熱積乱雲に突っ込んで焼け死ぬか、寒冷地帯を通るしかできなくてこちら側に来れないのさ」 


そうかトカゲ野郎だから低温だと動けないんだ!生物に耐えられない高温か、トカゲには動けない低温か…


「まってください、この星って丸いのですか?」


「もちろん。大抵の星は丸いって昔の学者がたくさんの論文を出してるからね」


「なら反対側から来れるものなのではないですか?時間はかかるかも知れませんが」


さすがだよ紅林、前世の記憶をもっている俺以上の思考力とは…つまり俺ってあんまり頭良くないのか?


「この世界には三人の皇帝がいる。」


「…あっ、そうか、そういうことですか!」


「うん、そういうこと」


えっどういうこと?


「覚えているかい?竜帝の他に帝の名を冠する者がいるって話。魚人の長である淵帝ともう一人、この国の西方にある超大陸を統べる王、名を蟲帝コドク。およそ五百年前に現れ、第一次竜人大戦を一人で終わらせた蟲の帝王だよ」


「蟲帝様がいればあちらからの進軍は心配しなくてもいいですもんね」


「そんなに強いの?」


「恐らくこの星で最も強い生命体だよ」


「蟲帝さんがこちらの味方になったりは…」


「…………」


「ならないよなぁ、流石になぁ」


「その手があったか」


「あるの!?」


「あるんですか!?」


冗談で言ったつもりだったのに!


「交渉しに行くしかないね」


「おお!蟲帝に会いに行きつつ竜帝に殴り込みにいけるじゃん!完璧な旅のルートだ!」


わかりやすいのは好きなのでありがたい。この国から西に進んでいけばいずれ竜の国ってことだ。


「あ!また新しい紙がきましたよ!…軍事力…総勢十数万、竜帝四天王…次元のネツァリス、再生のゲルマニカ、氷結のティオン、悪魔のバルト…主戦力はこの四人らしいですね」


「四天王とか絶対強いじゃん。名前に助詞入ってるやつは強いって昔から決まってるんだよ」


「いや、その次元とかいうのと悪魔とかいうのはもういないはずだよ」


「そうなの?四天王二人いないとか大丈夫かなその組織」


と、


「おい!竜人共を拷問しているというのはここか!!!」


突然声がした。どうやら誰かが入り口で叫んでいるようだ。無視しようとも思ったがノックの音がが大きいし今にも入ってきそうだった。


「俺見てくるよ」


ここの取り調べは俺がいなくても大丈夫そうなので、というか正直何言ってるのかわからないので、声の主に会いに玄関へ向かうことにした。


「…どちらさまですか?」


「ふふん!僕の名前はヒイロ・レイ・ジャティス!異世界ガレリオンから転生してきた、女神ガイア様に選ばれし勇者だ!!!」


「なんだってーーーー!!!!?」


そこに立っていたのはかなり綺麗な顔立ちの金髪の青年だった。聖騎士って感じの身なりで清潔感がすごい。ってそんなことより、俺以外にも転生者がいたことに驚きをかくせない。聞いたことない世界の名前だったが。この人は熱血系の空気を纏ってるし、情熱に燃える目をしている。もしかして拷問と聞いて止めにきたのだろうか。だとすると面倒だ、時間を稼がねば。


「いやヒイロさん、拷問だなんてとんでもない…我々は穏便に話し合いをしていてですね…」


「そいつらが街を襲ったのを聞いた!僕にも拷問させろ!!!」


違う意味で面倒くさいやつがきた。どちらにせよ邪魔させるわけにはいかない。


「拷問したい側なのかよ。あんた本当に勇者なのか?」


「はん!失礼な!僕は正真正銘女神様に選ばれた勇者!魔王討伐の命を拝命しているのだ!見ろ!女神より授かったこの聖玉、エターナル・ガイアを!!!」


そう言って懐から手のひらサイズの玉を取り出した。


「え!めっちゃ綺麗ですね!ヒイロさんにお似合いですよ!」


「そ、そうか!ははは!そうだとも!僕の聖玉なんだからな!君は見る目があるな!!!」


お世辞でもなんでもって思ったがけっこうチョロそうなのでこのまま上げに上げて帰ってもらおう。


「その聖玉にはどのような力が込められているんですか?」


「ん?知らない!綺麗だろう?それで十分だ!!!」


「それもそうですね!でも勇者様は忙しいのではないですか?このような何もない場所にいてもなにもできないかと…」


「むむ!そうだな、僕は忙しいからな!…ところで君の名前を聞いていなかった。教えてくれないか?」


「はい、天祢と申します」


「そうか、アマネか!いい名前だな!」


「はい、ありがとうございます」


「僕は次にこの国の王に会いに行こうと思うんだ!」


「はい、とてもいいお考えかと思います」


「アマネ!僕と一緒に行こう!」


「はい、喜んで…え?」

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