9話 王都へ
この話から本編になります。
楽しんで頂けると嬉しいです。
“闇鍋”結成から2年の月日が経った。
順調に依頼をこなし、2つほどダンジョンも攻略(高難易度ではないが)。現在Aランクのパーティとなった。
個人ランクは僕とエルノールさんとリリスさんがAランクに、ブルーノさんがBランクに、シャルルさんがCランクに昇格。
そしてトモエさんはメンバー全員ごぼう抜きしてSランクとなった。
トモエさんはこの2年間で能力のコントロールと、この世界の言語をある程度習得することが出来た。
今ではリリスさんを通さずともコミュニケーションを図れるし、何より軽いスキンシップで骨を砕かれる事もなくなった。
そこが1番嬉しい。カールちゃんは今でもビビっていてトモエさんに近付かないけど。
メンバーと相談し、Aランクパーティとなった事を機に拠点を王都ガイラルクに移す事にした。
王都の方が高ランクの依頼も多く、近くにあるダンジョンもヒルランテより多い。
ヒルランテには僕が育った孤児院がある。
孤児院の子やその出身者には、僕の事を崇拝してる者も多くいて物凄く居心地が悪い。
そのため少しでも離れたかった。
でも僕を育ててくれた所だから恩もあるし、収入の一部を寄付したりしていた。可能な限りこれからもするつもりだけどね。
という事で僕達は現在、王都ベルセアの教会に来ていた。
またまた教会から僕宛てに依頼が来たためだ。今度の依頼は冒険者がダンジョンで持ち帰ったアイテムが呪具だったらしい。
かなり強い呪具らしく僕にお箱がまわってきたというわけだ。
今回付いて来たのはトモエさんだけだった。
「解呪の依頼?えっ凄い!私も付いて行っていいの?」
と興味津々だったが、他のメンバーはというと。
「興味ない」とリリスさん。
「王都で解呪の依頼?今回は遠慮しようかのう。ちょっくら昔世話になった工房に寄ろうかと思っちょる」とブルーノさん。
「ウチも遠慮しようかにゃ。せっかく王都に来たんだし、美味しいお店とか服とか見てまわりたいし。リリスも行く?」
「いやいい。カールちゃんのブラッシングとかお手入れしたい」
「えー?残念にゃ。トモエはリーダーについていくみたいだし、しょうがない1人で周るか」
エルノールさんはというと、
「今回は遠慮するよ。王都に着いたばかりでバタバタしてたからな。妻とゆっくりしたい」
と聞き捨てならない事を言った。
「ちょっと待って下さい!妻ってどういう事ですか?いつの間に結婚したんですか?」
「言ってなかったか?いつの間にもなにも前のパーティを解散した時だからお前と出会った時にはもう結婚していたぞ」
「聞いてないですよ!皆さんは知ってましたか?」
僕は結婚どころか生まれてこのかた彼女すらいないのに!
「いや、まぁのぅ…」
「リーダー知らなかったのかにゃ?」
「というか一緒に王都まで来たエルフの女がいただろ?あれがエルノールの女だ」
他人に興味のないエルザさんですら知ってるのか?
「えっ?あの方がそうだったんですか?てっきり王都までの護衛を依頼して来た方だと思ってたのに」
「そりゃお主が勝手に勘違いしただけじゃろう」
「えー?私たちエルノールさん宅でこの前ご飯お呼ばれしたけど、奥さんのお料理美味しかったよね!スレンダーですっごい美人だったし」
「アホゥ!それは……」
ブルーノさんがトモエさんのセリフを止めようとするがもう遅い。
「やっぱり僕にだけ黙ってたじゃないですか!酷いですよ!」
みんなして仲間外れにするなんて、酷すぎる。
「いやまぁ、言おうとは思ってたんだよ。しかもその時お前、娼館に行こうとしていたから誘いづらかったし」
その言葉に女性陣の僕を見る目が冷ややかになる。どさくさに紛れてカミングアウトするのやめてよね。
「それにお前、前科があるからなぁ……」
「前科ってなんですか?僕が何したっていうんですか?」
「前のパーティに所属しとった時に、そのリーダーの女に手を出しただろう?」
とブルーノさんが僕の黒歴史を暴露する。
ちょっ、このドワーフ…女性陣はまだ知らなかったのに!
「えっ?アルフさんそんな事したんですか?」
「そ、それはリーシャさんがギルベルトさんと付き合ってるの知らなかったんですよ……」
「それにお前、異種族の女も興味あるだろ?知ってるぞ。“闇鍋”の女性メンバーの事を性的な目で見ていると。まぁ私の知る限り実行してはないみたいだが……」
その言葉にシャルルさんは胸を隠す。
手を出すわけないでしょう。リリスさんは無防備だけどカールちゃんが警戒してるし、シャルルさんにいたってはこの通りだ。トモエさんの場合は文字通り命に関わる。
「なななななにをばかなことを!そそんなわけ、あああるわけないじゃないですか!」
「動揺が凄いにゃ」
「目が泳いどるぞ」
「じゃあ、エルフの女に興味ないのか?人妻でも手を出さないと女神様に誓えるか?」
「そんなの決まってるじゃないですか!誓えません」最後の「誓えません」だけ超小声で言う。
「こ、こいつ……これからもお前には合わせないという事でいいな?」
しまった。エルフの聴力を舐めてた。
という事があり、トモエさんだけ着いて来てくれる事になった。
「トモエさんはいいんですか?他の人といなくて。僕と一緒だと何をされるか分かりませんよ?」
「だって買い物とかより呪いの解呪の方が面白そうなんだもん。それに……アルフさんの性癖は私が矯正するし……」ボソッ。
「?最後何て言いました?」
「えー、なんでもないよ」
「そういえばトモエさんはSランクになったんだから新しい装備買わないんですか?ブルーノさんがぼやいてましたよ。『全く……トモエはいつまで経ってもワシなんかが作った武具を使いおって、高ランクになったんだから名のある名匠の武具を揃えればいいのにのぅ』って」
実に嬉しそうに。
「だって、ブルーノさんの武器の方がいいんだもん。そりゃ性能はそっちの方がいいかもしれないけど、私にはよくわかんないし」
「はは、ブルーノさんに言ってやってください。喜びますよ」
トモエさんと会話を楽しんでいたが、
「よぅ、アルフじゃないか。久しぶりだな。こんな所で何してんだ?」
と声をかけてくる者が。
後ろから声をかけてきたのは僕がかつて所属していたパーティ…“一角獣”のリーダー、ギルベルトさんだ。
懐かしいな。約3年ぶりか?
「お久しぶりですね。何って教会から依頼が来たんですよ。呪具の解呪依頼です。ギルベルトさんこそどうして教会に?」
「その呪具の解呪を教会に依頼したのが俺なんだ。今王都の教会に解呪出来る奴がいないから冒険者に依頼したって聞いたけど、お前の事だったのか。」
「……」
僕はギルベルトさんを警戒して見る。
「なんだよその目は」
「いえ、あの時の事もう怒ってないのかなって」
「もう3年も前の話だろ?それにボコったからチャラだろ。まぁクレアとリーシャはまだ許してないと思うけどな」
「はは、でしょうね。それよりSランクのパーティになったんですよね?昇格おめでとうございます」
「ああ、お前も今やAランクだろ?たった3年で……」
「僕はパーティメンバーに恵まれました」
ギルベルトさんの視線が大人しく僕の後ろを付いて来ていたトモエさんに移る。
「“闇鍋”唯一のSランクだよな?たしか名前は……」
「トモエ・アキバさんです」
「そうだった。トモエ……、“破壊者”のトモエ・アキバだ」
“破壊者”の言葉にトモエさんは嫌そうな顔をする。
高ランク冒険者になると二つ名が与えられる。
功績や能力、性格などからギルドの上層部が決めるのだけど、“破壊者”はトモエさんにピッタリの二つ名だ。
本人は気に入ってないようだけど。何度破壊されたことか。僕の体…
ちなみに僕にも二つ名が与えられたけど“性職者”とかいう名前だった。
まったく、誰だよそんなふざけた名前考えた奴!絶対呪ってやる!
「挨拶が遅れたな。俺は“暴風”のギルベルト・キースだ。同じSランクの剣士だ。よろしくな」
立ち止まってトモエさんに握手を求める。トモエさんも手だけ差し出す。
「“闇鍋”では上手くやってるか?もし愛想を尽かしたらウチに来ないか?」
トモエさんは顔を真っ赤にして、僕の後ろに隠れるように肩を掴む。
「ちょっとギルベルトさん、堂々と勧誘はやめて下さい。ウチ1番の出世頭なんですから。トモエさんも嫌がってるでしょ?」
「悪い悪い、軽い挨拶のつもりだったんだが」
「全く、リーシャさんに言いつけますよ。」
後ろでぶつぶつ聞こえる。
「イケメン怖い、イケメン怖い」
この子、勧誘が嫌だったんじゃなくてギルベルトさんがイケメンだから緊張してるだけか。人見知りだもんな。
メキメキメキメキ
ボキッ
「いたたたたっ!トモエさんっ!コントロールが!折れた!また折れた!」
「あっ、ごめんなさい!」
僕は治癒魔法で両肩を治す。能力のコントロールは出来るようになってきたが、精神状態でコントロールが乱れるみたいだ。
その光景にギルベルトさんはドン引きしている。
「大丈夫なのか?」
「慣れたもんですよ」
「えへへ、すごいよねアルフさんの治癒魔法。どんな怪我でもすぐ治っちゃうし」
何故かトモエさんが誇らしそうにしている。でも僕の怪我の原因、100%貴方ですからね。
最初の頃は怪我をさせる度アワアワしてたのに、僕がすぐに完治させるからもんだから、今ではどんな傷を負わせても反省してないし。
「勧誘といえば聞きましたよ。また教会から神聖術師を引き抜いたんでしょ。いい加減にしないと目を付けられますよ?」
「ああ、お前の後釜だ。やはり神聖術師無しだとキツくてな。」
「どんな方ですか?“一角獣”が勧誘するくらいだから優秀な方なんでしょうけど。」
「………まぁ、お前も知ってる奴だ」
「へー、誰なんですか?」
「………………会えばわかる」
「なんですかその間は、その人ここに来てるんですか?」
なんか物凄く嫌な予感がする。
〜〜〜〜〜
目的の部屋に到着する。司教と司祭、修道士が2名いた。
「王都に到着早々およびだてして申し訳ありません、アルフ様。司教のアンドルフと申します。」
「この教会を管理している司祭のジェーンです。そして後ろの2人が修道士のカインとメアリーですわ。」
深々と頭を下げる教会の面々。そして頭を上げると、
「そして、えーっとそれで貴方は冒険者のクソベ…おほんっ、失礼、ギルベルト殿。この度は教会から優秀なヒーラーを2名も引き抜いたあげく、厄介な呪具まで持ち込んでくださって。よくここに顔を出せましたねぇ、クソベルトさぁん!」
明らかにギルベルトさんへの態度が違う。
顔に青筋たててるし、クソベルトって言っちゃってるし、もう手遅れなくらい目を付けられてるよ。
ギルベルトさんもいたたまれない顔をしている。
するとそこに「せんぱーい!」と聞き覚えのある声が聞こえる。
「お久しぶりです!先輩。」
「ステラ、久しぶりですね。元気でしたか?」
「先輩が教会を去ってから病み気味でしたけど、たった今元気になりました!」
「あー、一応紹介するよ、アルフ。1年前からウチで神聖術師をやってるステラだ。お前の幼馴染なんだってな?」
ステラ・ノート。僕の一つ下の後輩で同じ孤児院で育った幼馴染でもある。
例の如く僕を崇拝していて、この子の場合それは頭1つ抜きん出ている。
僕同様に魔力が高かったので神聖術師となり、教会に勤めていたはずだけど、冒険者になっていたとは。
「今日はなんという日でしょう。教会が手塩にかけて育てた2人とその2人を奪って行った男が今目の前に…」
アンドルフさんが血の涙を流しながら割り込んでくる。手にナイフを持ちギルベルトさんを狙っている。
「うぉっ!危ねー!」
急に襲われてもナイフを持った手を掴みしっかり躱している。さすがSランクの冒険者だ。
「落ち着いて下さい司教様!気持ちは分かりますがそれはダメです!」
「やるならバレないように!」
止めに入った部下の方も物騒な発言をする。もうあの人たちの相手はギルベルトさんに任せよう。
「そんな事より先輩、Aランク昇格おめでとうございます!お祝いにこの後にでも王都の美味しい店でディナーでも行きませんか?」
そんな事よりって、ステラ……一応襲われてるの貴方の所属するパーティのリーダーだよ?
「ありがとうございます。ただあいにくこの後も予定が入ってまして……」
「えー?残念です……それと“闇鍋”ってまだメンバー募集してますか?高ランクのパーティだからもう1人くらい神聖術師がいてもいいと思うんですよね」
「いえ、いらないですね」
「そうだよね。そこら辺の神聖術師ならともかくウチはアルフさんがいるんだから1人で十分だもんね」
おっと、さっきまで空気だったトモエさんが急に入ってきたぞ。人見知りだからいつも知らない人がいると黙り込むのに。
「あ?今私は先輩と話してるんですけど、無関係な人は出しゃばらないでくれませんか?」
「無関係じゃないですぅ!これでも“闇鍋”のメンバーなんだから!ウチに入りたいならメンバー全員の承諾を得ないと!」
トモエさん……そんなルール初めて聞いたけど。
「何よ!後から入ったくせに!リーダーである先輩がいいって言ってるんですよ!?」
ステラ……そんな事言ってないよね。
「はぁはぁ、やっと落ち着いた……ってこっちも揉めてんじゃねぇか」
「ギルベルトさん、無事でしたか」
「ああ、なんとか縛って無力化した」
見るとアンドルフさんが石柱にグルグル縛られていた。
「ステラさんが“闇鍋”に入りたいって言ってるんですが大丈夫なんですか?」
「いれるのか?」
「まさか、神聖術師は間に合ってますし、“一角獣”と揉めたくないです」
「普段は優秀な神聖術師なんだよなぁ。ウチに入ってたとはいえ1年でDランクまでいったし。せっかく教会に恨まれてまで勧誘したのに……お前が絡むとアイツは……はぁ、教会にはあんなのしかいないのか?それともアルフが“一角獣”にとって疫病神なのか……」
それ、僕のせいじゃないですよね。
「次から錬金術師を入れた方がいいんじゃないですか?」
「実はもうその話は出てる」
錬金術師はポーションなど回復薬や解毒薬などの薬物全般を扱っている。それにゴーレムを作れたりと攻撃面でも役に立つ。
神聖術師と違い材料費などのコストはかかるが、教会から目を付けられるよりいいだろう。
「それより、依頼の方をを進めましょうか」
「私が案内しましょう。こちらです」
アンドルフさんに代わりジェーンさんが案内する。
僕達は奥の部屋へ。
そこには厳つい鎧を身に付けた重戦士が鎖で拘束され座っている。そして手には見るからに怪しい剣を握っていた。
見覚えがある、“一角獣”のパル・ケイン、この方もSランクだ。
「ダンジョンでトラップに引っかかって分断されたんだよな。その時にこの呪具を見つけたらしい。合流した時には手にしてしまったみたいでこの様だ。かなり強力な呪具みたいでステラでも解呪出来なかった」
「とりあえずやってみますか」
これは時間がかかりそうだぞ。
「うぐ、ああぁあああ!」
僕が詠唱を始めるとパルさんが苦しみ出した。
「あれ、大丈夫なんですか?」
初めて解呪を見るトモエさんが心配そうにジェーンさんに聞く。
「呪具が抵抗していますね。簡単には行きませんが、効いている証です」
「ぐぅおおおおおお!」
抵抗が激しくなる。すると拘束具が千切れそうになる。
まずいな、解放され暴れられると解呪できない。
僕は詠唱を続けながら指でトモエさんに指示を出す。
僕の意図を汲んでくれたのか、トモエさんがパルさんを押さえつける。
しかし、2人の動きがぴたっと止まる。
トモエさんはゆっくりと呪具の剣をパルさんから受け取った。
しまった…あの呪具、意思があるな。
効いてるのは罠か?弱ってるフリしやがった。
強力な魔法道具は稀に意思を持つ物がある。この呪具もそうなのだろう。
そして呪具を手にしたトモエさんは僕に斬りかかる。やばっ!
ギィィン
しかし、結界に阻まれる。
「先輩!お怪我はないですか?」
間一髪でステラが結界を張ってくれたようだ。危なかった。
「ありがとうステラ、助かりました!」
「とんでもないです!それにしてもあのアバズレめ……よくも先輩に剣を……」
「何が起きた?なんでトモエが呪具を手にしたんだ?」
「あの呪具は直接触れなくても操れるみたいです。しかも複数の人間を」
呪具の所有者がトモエさんになってもパルさんの呪いは解けていない。今も拘束を解こうと暴れている。
「嘘だろ?」
「Sランクの2人が簡単に操られたんです。想像以上にやばい呪具ですよ。ギルベルトさんは絶対に近付かないで下さい!」
これでギルベルトさんが加わったら流石に手に負えない。
「2人を解呪は出来るのか?」
「この状態での解呪は僕でも無理です」
「おい、2人を諦めるのか!?」
「ギルベルトさん、あの呪具を破壊してもいいですか?売れなくなりますけど」
呪具は身を滅ぼす危険な物だが、呪具専門店があるほど需要がある。
この剣も呪具コレクターなら高値で買い取ってくれるだろう。
「あ?そんなのいいに決まってんだろ!方法があるならさっさとやれ!」
「せ、先輩まずいです!結界が持たない!この女どんな力してるんですか?」
トモエさんは結界に阻まれてもずっと攻撃を続けていた。結界は万能ではない。
強度は術者によるが、強度を超えた力で攻撃されると結界は壊れる。
そしてついにステラの結界は破壊された。
しかし、またトモエさんの攻撃は阻まれる。今度は僕が結界を張ったからだ。
「僕の結界は硬いですよ。何せまだ誰にも破られた事ありませんからね。」
「先輩!流石です!」
「でも、これからどうするんだ?」
「そうですね。ステラ、トモエさんを煽って下さい!僕はその間、別の呪文を唱えます!」
「あ?煽る?」
ギルベルトさんは僕の意図が分からず戸惑う。
「わかりました!任せてください!ふふふ、アバズレごときが“闇鍋”に入ったからって調子こきやがって!お前さえいなければ私が入れたのに…少し乳が私より大きいから選ばれただけのくせに!」
ステラ……流石の僕もオッパイの大きさでパーティには入れないよ。
それに君を入れないのはトモエさんが入ったからじゃなくて、能力が被ってるんだよ……僕と。
「あれれぇ?どうしましたぁ?さっきからガンガンしてますけどぉ!全然効いてないようですよ?
先輩の結界は魔王の最終奥義だって耐えられるのに、胸だけで選ばれたアバズレに壊せるわけないでしょう!」
ステラ……流石の僕も魔王の最終奥義は耐えれないよ。そんなの受けた事もないし。しかし凄い顔だな……せっかくかわいい顔してるのに煽りすぎて顔が歪んでるよ。
でもそれが効いているのかトモエさんの攻撃がどんどん強くなっている。
「アバズレなんかその呪具の操り人形がお似合いです!うふふふ、これで私も“闇鍋”に入れます。そして先輩と……うふふふふ」
ステラ……だからトモエさんがいなくても君を“闇鍋”には入れないって。
トモエさんは上段の構えで力を溜める。渾身の力を込めて攻撃するようだ。
「ブライア!」
僕は呪文を唱えると肉体強化の魔法をトモエさんにかける。
「おい!今のは攻撃力を上げる魔法だろ?なんでトモエに?」
「いいんですよこれで!」
魔法で攻撃力が最大まで上がり、さらに今は怒りで能力のコントロールは出来てないはず。
トモエさんは渾身の力で剣を振り下ろす。
きぃぃん
そしてついに壊れた。今度は呪具の方が。
能力を全解放したトモエさんの力と僕の結界に呪具の方が耐えられなかった。
能力をコントロール出来ない時期は、よく武器を破壊していたからな。
「あれ?私、なにを?なんで私が呪具を持ってるの?」
「なんで俺こんな所にいるんだ?ダンジョンにいたはずじゃ……」
よかった。2人とも無事に正気に戻ったようだ。
「全く2人とも先輩に感謝して下さいよ。特にアバズレさん。貴方は迷惑をかけたんだからちゃんと“闇鍋”を抜けて下さい」
「誰がアバズレよ!抜けないわよ!」
「お前、アルフか?久しぶりだな、お前が助けてくれたのか?」
「アルフさん、ありがとう!」
「お礼を言われる事はしてないですよ。今回僕は結局解呪出来ませんでしたし、呪具を壊したのはほとんどトモエさんの力です」
「それにしてもバフがかかった状態とはいえ、力だけで呪具を破壊するとは…恐ろしいな。流石“破壊者”…」
ギルベルトさんもドン引きしている。
「まぁとにかく“闇鍋”には借りが出来ちまったな。お前達も何か困った事があったら俺達を頼ってくれ。力になるぜ!」
“一角獣”とは喧嘩別れする形になったけど無事仲直りできてよかった。
「これでクレアさんとリーシャさんとも仲直り出来た訳ですね。着替えや湯浴みを覗いたり、治療にかこつけてオッパイを揉んでいたのもチャラですね!」
「アルフさん?」
「先輩、まだビッチどもの事を?」
「お前、反省してないな?」
「…その件はチャラって言っちゃったからな。俺はだけど。でも、クレアとリーシャの2人が許してくれるとは言ってないぞ」
しまった。つい余計な事を…口が滑ってしまった。何はともあれ無事依頼をこなす事が出来た。
アルフ・ガーレン
18歳。身長158cm。黒髪、前髪で目が隠れている。
元大司教。
“闇鍋”のリーダーでAランクの神聖術師。
聖職者だが煩悩に塗れており、“性職者”の二つ名を持つ。
武器はヤナギの杖で小さい魔石が埋め込まれている。
トモエ・アキバ
16歳。身長160cm。黒髪を肩まで伸ばしている。
異世界転移者。元剣道初段の腐女子。
転移時に“怪力”のチート能力を得る。
“闇鍋”のメンバーでSランクの剣士。
人見知りが激しく、知らない人がいると黙る。
武器はブルーノ作のショートソード。
防具は旅人の服の上にブルーノ作のプレートアーマー。