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5話 シャルル・スピルトン

 ヒルランテの街はこの国でも都会な方だ。近くにダンジョンがあり冒険者も多く在籍している。

 ギルド内は平日の昼間だというのに多くの冒険者で賑わっている。依頼掲示板の前には群がる冒険者たち、酒場では昼間から酒を飲む者もいる。さすがは大きな街のギルドだ。


 僕は3人を連れ冒険者ギルドに来ていた。僕が目をつけていた最後のメンバーを紹介するためだ。ギルドに入ると真っ直ぐ受付に行く。

 ギルドの顔とあって受付には綺麗所を用意している。受付嬢のマーリンさん18歳。


「今日もマーリンさんは可愛いなぁ、僕と付き合ってくれないかなぁ」


「え?いやです」


 しまった。つい口にしてしまっていたようだ。

 それにしても、うっかりだけど告白したのに速攻で振られちゃった……僕は悲しいよ。そんなに魅力ないかなぁ。

 後ろからエルノールさんの呆れた溜息が聞こえる。ブルーノさんは苦笑いだ。


「バカな事言ってないで、アルフさんのお目当ての子ならもう来てますよ」


 ギルドには食事所が付属している。その一席に獣人族(ビースト)の女性が座っていた。猫の耳と尻尾が付いている。

   

 彼女の名はシャルル・スピルトン15歳。

 斥候(スカウト)で僕が勧誘したメンバーのうち、彼女だけがFランク(ルーキー)だ。

 シャルルさんは家は貧乏で、獣人族の村ではいい働き口は見つからなかったため、只人族(ヒューム)の国で冒険者になる事を決意する。

見た目は小柄で、まだあどけなさの残る顔立ちをしている。猫の特徴を持つ獣人族らしく、時々語尾に「にゃ」がつくのが愛らしい。

 ただし、その瞳には故郷を離れ、一人で生きていく覚悟が宿っている。15歳でこの決断をするとは、なかなか芯の強い子だ。



 獣人族は人族より五感が優れている。そして彼女自身も警戒心が強く臆病な性格もあり、シャルルさんは斥候となる。

 しかし、戦闘メインのジョブに比べ、新人の斥候を採用するパーティはなかなかない。ルーキー同士ならともかく、戦闘に直接関与することの少ない斥候は人気がないのだ。

 例によりシャルルさんを入れてくれるパーティはなく、ソロで活動していた所を僕が目を付けた。


「どうもシャルルさん、お待たせしてしまったようで、すみません」


「大丈夫、そんな待ってないにゃ。後ろにいるのがメンバーかにゃ?」


「えぇ、紹介します。精霊魔術師(マギ)のエルノールさんに魔獣使い(テイマー)のリリスさん、それから重戦士(タンク)のブルーノさんです。そして最後のメンバーで斥候(スカウト)のシャルルさんです」


「どうも」


「……」

 リリスさんは無言で手を上げる。相変わらず愛想がないな。エルノールさんは丁寧だが距離を置いている感じだし、ブルーノさんだけが気さくに応じてくれている。


「よろしくのぅ、嬢ちゃん。頑張ろうな」


 ブルーノさんだけがシャルルさんに優しく声をかけてくれた。


「よろしくにゃ。あの、それより本当にウチなんかでいいのかにゃ?他のメンバーは中堅みたいだけど、ウチは完全に初心者にゃ。足手纏いにならないかにゃ?」


「大丈夫ですよ。最初は誰だって初心者なんだから一緒に強くなっていきましょう。これからダンジョンに行くこともありますからね、鍵開けやトラップ解除などスカウトの技術が必要になる時が出てきます」


「アルフ、それなんだが…ダンジョン攻略は必要か?アタシは別に興味ないんだけど。ダンジョンの魔獣は従魔に出来ないし」

 とリリスさんが水をさす。


「必要に決まってんだろ!冒険者といったらダンジョン、ダンジョンといったら冒険者。稼ぐのも名も上げるのもダンジョンに潜った方が効率がいい」

 ブルーノさんはドグマにあるダンジョンで発見されたお酒を手に入れるのが目標って言ってたからな。


「ダンジョン関係の依頼なんて滅多にないんだぞ!そんな事に時間使うよりまず依頼をこなす事の方が大事だろ!」


 早速意見が対立してしまった。まあ、予想はしていたけど。異種族パーティの難しさがいきなり露呈してしまったな。

 シャルルさんは困惑した様子で、僕たちのやり取りを見ている。


「まあまあ2人とも、リリスさんパーティはソロと違ってメンバーの分だけ目的が違います。リリスさんはSランクに上がってドラゴンを従魔にするという目標があるように、僕やエルノールさん、ブルーノさんだって目標があるんです。もちろん僕たちはリリスさんに協力はしますが、リリスさんも僕たちに協力してくれないと。お金稼ぎと名声だけじゃなく、レベルを上げるのにもダンジョンは効率がいいんですよ?」


「うぐ…」


「確かに実力もないのにランクだけ上がってもしょうがないからな」とエルノールさん。


「そうじゃそうじゃ」ブルーノさんも相槌を打つ。


「ブルーノさんもダンジョンにこもるだけじゃダメですよ。いくらお宝を見つけても名声があっても、依頼をこなさないとランクは上がりませんからね」


「わ、わかっとるわ」


「アルフ、私は別にシャルルを入れるのは構わないが、初期メンバーにするのか?登録時のパーティランクはメンバーのランクの平均で決まる。最初に登録だけして後で加入させたらどうだ」


「僕たちならそれでいいでしょうがそれだとシャルルさんがついてこれないでしょう?僕たちだけで登録となるとおそらくCランク、受けれる依頼もB〜Dランクですからね」


「…まぁ確かに。Fランクにはきついか」


「という事ですのでこのメンバーでパーティ登録します。異論がなければしようと思うのですが…」


「お?アルフじゃねーか。ギルドでお見合いとは珍しいな」


とそこにいかつい坊主頭の冒険者が声をかけてきた。Bランクのビルさんだ。Cランクパーティ“鋼の剣(フルメタル・ブレード)”のリーダーでもある。

 仕事終わりで飲んでいたのか酔っ払っている。


「えぇ、ついに僕もソロ卒業です」


「それにしても、森人族(エルフ)魔人族(ジーニー)土人族(ドワーフ)獣人族(ビースト)か。ブルーノの事は少しは知ってるが、他は知らねーなぁ。ちゃんと能力は把握してんのか?」


「失敬な、名前とジョブと何年冒険者やってるかくらいは調べましたよ。僕が求めていたのは現在ソロで異種族の冒険者でしたから」


「お前、そのくらいしか私達の事を知らなかったのか?」


「そんな知ったかでアタシに、偉そうに説教していたのか?」


「正気か?お主…」


「だ、大丈夫かにゃ?このパーティ…」


 うわあ、一気に信頼を失った。確かに僕は表面的な情報しか知らずに彼らを勧誘していた。

 ビルさんは苦笑いを浮かべている。「やっぱりこうなったか」とでも思っているのだろう。


「まぁまぁ、これから知っていけばいいじゃないですか」

 僕は慌てて取り繕うが、メンバーの視線は冷たい。



「まるで闇鍋みたいだな。いっそのことパーティ名にしたらどうだ?」


 そういえばパーティ名を考えてなかった。ビルさんの言う通り闇鍋でいいや。


「闇鍋…いいですね。では、パーティ名は“闇鍋(シークレット・ポット)”にしましょう!」


「お、おいおい、冗談だったんだが……真面目に考えろよ、アルフ。パーティ名は冒険者としての看板だぞ?お前らもいいのか?そんな名前で」

 ビルさんが他のメンバーにも確認する。


「名前にこだわりはないな。前は森人族のパーティだったかだからと“森の人(フォレスト・ピープル)”だったし」


「名前なんかどうでもいい」


「まぁかっこいいとは思わんがのぅ 」


「うちはルーキーだから発言権ないにゃ…」


「いいのかよ。まぁ一応止めたからな。後で後悔するなよ?」


 そういうと去っていった。悪い人じゃないんだよなぁ、ビルさんって。厳つい顔して以外と面倒見がいいし。それより、

「ところでリーダーは誰にします?ランク的にいえばリリスさんかエルノールさんですが」


「アタシは嫌だ。面倒な事はしたくない」


「アルフでいいだろう。君が作ったパーティなんだから」


「そうだのぅ」


「うちもアルフで大丈夫にゃ」


「わかりました。僭越ながら僕がリーダーをさせていただきます。ではさっそく登録してきますね!」


 僕は受付で登録手続きを済ませた。


「本当にこの名前でいいんですか?もう変えられませんよ?」


 マーリンさんが最終確認する。


「大丈夫ですよ。僕たちのパーティにピッタリの名前でしょう?」


「そうですね。では手続きはこれで終了です。パーティのランクはDからスタートとなります。そしてこれがパーティ用のカードです。ランクが上がると個人のギルドカードと同様更新のために一度返却してもらう必要があります。また、こちらのカードもなくしたら再発行に手数料かま必要になりますので気を付けて下さい」


 僕は人数分のカードを受け取る。パーティカードを手にするのは久しぶりだ。約1年ぶりにパーティに所属する事が出来た。


「Fランクの方がいるので、高ランクの依頼を受ける際は注意して下さい。まぁ、アルフさんがいれば死ぬ事はないと思いますが。」


「はい!心得てます!」


「あ、それと教会からアルフさんに依頼が来てますよ」


「教会からですか?なんでしょう?」

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