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30話 Aランクパーティ

 ダンジョン都市ドグマへ遠征する事をギルドに報告する。


 ギルドに入るとやけにざわついている。何かあったのか?

 僕は他のメンバーと別れ受付へ。

「サラさんこんにちは……相変わらずいい胸してけつかる……」

「訴えますよ?」

 し、しまった!つい心の声が!サラさんの僕を見る目がウジ虫を見るように冷たい。

「ち、違うんです!今のは誤解です!」

「いやらしい目で私の胸を凝視しながら言われても……」

 くそ、ついこの豊満な胸に視線がいってしまう!

「アルフさん、“一角獣(ユニコーン)”の新人メンバーにAランク冒険者の権力を駆使して無理矢理関係を迫ったそうですね?」

 そんな誤解だ!僕はただジルさんとトリシアさんをトレードできないか提案しただけなのに……情報源はギルマスか?あのおいぼれめ……


「そんなことよりギルマスがギルドに来たら顔を出すように言ってましたよ。また何かしたんですか?」

「ギルドマスターが?ちょうどよかった……僕も一言言いたいことができましたから……」

 あることないこと言いふらしやがって、一言文句を……あれ?サラさん?今また僕がトラブルを起こしたと思ってる?




〜〜〜〜〜



「失礼します」

 僕はノックをした後ギルドマスターの部屋に入る。

「おう、アルフか、いいタイミングで来たな。ちょうど使いを出そうと思ってた所だったんだが」

「何か依頼ですか?それならもうすぐドグマまで遠征に行くのでしばらく受けれないですけど」

「あん?お前らドグマに行くのか?まぁ依頼とかじゃないから安心しろ。ちょっと紹介したい奴らがいてな」

 部屋にはギルドマスター以外に4人の冒険者がソファーでくつろいでいた。

 2人ほど見知った顔がいる。会うには気まずい人たちなんだけど……

「忙しいこいつらがそれぞれ依頼で王都に来ていてな。ちょうどいい機会だから顔合わせさせておこうと思ってよ。お前も名前くらい聞いたことあるだろ?“火蜥蜴(サラマンダー)“、“道化師(ピエロ)“、”女傑(アマゾネス)”、”深緑の帳(グリーンブック)”。みんなお前と同じ、Aランクパーティのリーダーだ」


 もちろん知っている。

 冒険者は一般的に新人・見習いのF・Eランク、ベテランのCランク、一流のBランクといわれている。

 そしてだいたいはCランク、上がっても Bランクで幕を閉じる者がほとんどだ。そのためこの人たちはその領域を踏み越えた化け物ということになる。


「で、こいつが最近Aランクに上がった“闇鍋(シークレットポット)”リーダーのアルフだ」

 紹介されて軽く頭を下げる。

 すると道化師の格好をした男性が妙なポーズをとりながらこちらをジーッと見ていた。不気味だ。

「あ、あの……アルフ・ガーレンです。よろしくお願いします」


 恐る恐ると手を差しだすと彼は握り返してくれた。変なポーズは崩さぬまま……

「こいつは“微笑む檻(スマイル・ケージ)”ジャル・ピエールだ」

「ご紹介に預かりました。ジャル・ピエールと申します。ふむ、君が強いブラックドッグをテイムしたという魔獣使い(テイマー)かな?“性職者(ホーニィ・クラージー)”君」


 “道化師”……確か魔獣使いのみで構成されたパーティだ。まさか格好まで道化師だとは思わなかった。


「いえ……魔獣使いは別のメンバーのことですね。僕は神聖術師です……」

 僕が訂正するとがっかりしたのか落ち込んだポーズをとる。というか僕の職やメンバーはうろ覚えなくせに、なんで二つ名はしっかり覚えてるんだよこの人……

「それは残念……優秀な魔獣使いがいると聞いていたので、勧誘しようと思っていたのですが……」


「ちょ……ちょっと、うちのメンバーを引き抜くのはやめて下さい!」


「なんだ勧誘してもいいのかい?ちょうどよかった。“闇鍋”には前々から目を付けてたのがいたんだ」


 声をかけてきたのは背の小さい女性。

「そいつは“戦乙女(ヴァルキリー)”のライナ・ブレイズだ」

 ギルドマスターが紹介する。

 王都を拠点にしている“女傑”は戦士系が多く近接メインのパーティ、しかも女性のみで構成されていると聞く。僕も前々から興味を持っていた。

「ライナさんはじめまして。挨拶に行かなきゃと思ってはいたのですがなかなかタイミングが合わず申し訳ありません……」

 僕は握手をしようと手を出すが……

「いらん!“性職者”なんて二つ名を持つ奴なんかと握手なんかできるか!」

 と拒まれる。

「それは誤解です!この二つ名は僕の誤ったイメージから勝手に付けられただけで、僕自身はそんな人間じゃないですから!」

「いや誤解ではないだろう……」

 ギルドマスターが茶々を入れる。くっ、余計なことを……ライナさんの僕に対する印象が悪くなるだろうが!



「……チッ、こんな奴を勧誘しようとしたなんてな……人生の汚点だぜ」

「お久しぶりです。バルドさん」

 舌打ちしたのは赤髪を逆立てた長身の男性だ。    

 バルド・ライガン、“火蜥蜴”のリーダーで“一番槍(ファースト・スピア)”の二つ名を持つAランクの槍士(ランサー)。“火蜥蜴”はパーティとしては多い11人のメンバーで構成されている。そのため攻守・近遠とバランスが取れたパーティだ。


「なんだ“火蜥蜴”とは知り合いか?じゃあ紹介はいらなかったか?」

「ええ、一応……以前勧誘された事がありまして……」

「なのにギルベルトの野郎の所にいったんだよなぁ!?」

「その節はすみませんでした……でも僕もあの時は色々なパーティから勧誘されてまして、身体も一つしかないわけですし、どこかを選ばないと……でもバルドさんも“一角獣”をクビになったあと誘ってくれなかったじゃないですか?」

「するわけねぇだろ!あんなしょうもない理由でクビになった奴をよぉ!」

 怒ったバルドさんに胸ぐらを掴まれる。

 バルドさんとギルベルトさんは年齢も冒険者歴も近い。そのせいか、彼はギルベルトさんの事をライバル視している。まぁ“一角獣”の方が先にSランクパーティになっちゃったわけだけど……

 “火蜥蜴”は僕が冒険者になる時に誘ってくれたパーティの1つで、僕はそれを蹴り、よりにもよって“一角獣”を選んでしまった。バルドさんはその事を快く思ってないだろう。


「まあまあ落ち着いてバルド君」

 止めてくれたのは壮年の男性、もう1人の顔見知りだ。

「ああ?あんただってこいつにフラれた1人だろうが!頭にこねぇのかよ!ダンさんよぉ」


 ダン・エリーゼ、“深緑の帳”のリーダーで“氷刃(アイスブレイド)”の二つ名を持つ精霊魔術師(マギ)

 “深緑の帳”はSランクパーティの“不死鳥”と同期のパーティ、この中で最も冒険者歴のある大先輩だ。

「アルフお前、“深緑の帳”からも誘われてたのかよ?」

「バルド君の言う通りふられましたがね。しかしアルフ君が選んだ“一角獣”は今やSランク、あの時の君の選択は間違ってなかったようだ」


「ダンさん……」

 どうやらダンさんは僕が“一角獣”に入った事を気にしてはいないようだ。よかった……

 僕はダンさんに手を差しだす。でも……

 パァン

「悪いが、君と馴れ合うつもりはないよ」

 ダンさんは僕の手をはたき握手を拒む。

 え?今のは過去のいざこざは水に流して仲良くする流れじゃないの?

「君、私の娘に手を出したそうだね?」

「え?」

 え?ダンさんの娘?心当たりないんだけど……

 何回かしか会った事ないけど、温厚な印象のダンさんの目は怒りに満ちている。


「そんな、誤解です!いくらなんでもダンさんの身内に手を出すなんてするはずないでしょう?」

 ダメだ……ダンさんは完全に勘違いしており、僕の言葉を信じてくれてない。

 でも他の皆さんは信じてくれるよね?


「お前……ダンの娘にも手を出してたのか?」

「最低ですな」

「女の敵め……」

「クズが……」


 何故だ?誰も信じてくれてない……

 みんな僕の事をゴミを見るような目で見ている。



「それはともかくギルマス、私達を集めたのはただ紹介したかっただけですか?」

 ダンさんが話題を変える。

「あ、ああ、まあともかくだ俺はギルマスであるうちにもう1組、Sランクパーティができると思っている」

 ギルマスは僕らを見渡す。

「そしてそれはお前達のパーティのどれか、という事になるわけだ……」


 なるほど、要するにギルドマスターは僕達に発破をかけたかったわけか。

 先を越されこそすれ、彼らは“一角獣”と鎬を削りSランクを目指してきたパーティ……

 “闇鍋”はそんな彼らを超えなければいけない。


 自然とお互いを見る目が険しくなった。

 

〜〜〜〜〜


「おいアルフ」

 話が終わりギルドマスターの部屋を出るとバルドさんに声をかけられる。何の用だろう?また胸ぐら掴まれるの嫌だなぁ……


「お前、ギルマスの部屋に入った時、ドグマに行くっつってたな。ダンジョンに入るのか?」

「ええ、そのつもりです」

「ドグマは“火蜥蜴(俺達)”ですら攻略できていないダンジョンだぜ?それを結成2年の“闇鍋”が挑むのか?」


「もちろんクリアが目的ではないですよ。“闇鍋”には新人メンバーもいますし、ただの腕試しです」

「腕試しで入れるほど緩くないんじゃないか?」

 僕達の会話に興味があるのか、横からダンさんも加わる。“深緑の帳”が拠点にしているシルヴァリスの町は、近くに超高難易度のダンジョンがあり、彼らもそこを何度も挑んでいる。

 ジャルさんとライナさんは興味がないのかさっさと帰って行った。

「ドグマならある程度はどうにかなると考えてます」

「根拠は?」

「僕がいますから」

 僕が即答すると一瞬沈黙の後背を向ける。

「はっ、言うじゃねぇか」

「まあ、健闘を祈ってるよ」


 僕は彼らの背を見送った。

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