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26話 打ち上げと歓迎会②

「せんぱ〜い!久しぶりですぅ!」

 元気いっぱいの声が響き、店の空気が一変した。

 店に入ってきたのは“一角獣(ユニコーン)”の面々だ。


「げっ、アルフ……」

「ステラがやけにこの店を勧めると思ったら……」

 リーシャさんとクレアさんが顔をしかめる。


「“闇鍋(シークレット・ポット)”はともかく“鋼の剣(フルメタル・ブレード)”がなぜ王都に?」

 ギルベルトさんか聞いてきた。


「王都で“闇鍋”と合同の依頼があったんだよ。今日はその打ち上げ。ギルベルト達はなんでここに来たんだ?」


「ギルマスから錬金術師(アルケミスト)を紹介されてな。せっかくだから飯でも食いながら面接しようってなって食堂探してたら……」

ギルベルトさんは横目でステラを睨む。

「この女が“老猫亭がいい”って聞かなくてな」


 ああ、ギルドマスターが僕に紹介しようとした錬金術師か。さっそくギルベルトさんに声をかけたんだね。

 しかしステラ……なぜわざわざこの店を?


「先輩、隣失礼します!」

 そして当然の様に僕の隣に座ろうとするステラ。


「ステラ……今から面接だって言っただろう!なにしれっと他所の飲み会に混ざってんだ!」

 そのステラをギルベルトさんが首根っこを掴み、ずるずると別のテーブルに引き摺っていく。


「離してください!私は今から先輩と程よく飲んだ後、そのまま一緒に先輩の部屋へ……!」

「行かせん!」

 ギルベルトさんの怒声が響き、周囲の客がちらちらとこちらを見る。

 それにステラ……君と飲んだ所で僕の部屋には入れないよ?


「ギルベルトさん!しっかりそのストーカーを捕まえてて下さい!」

 トモエさん、そこで貴方が出てくるとややこしくなるからやめて。


「ぐっ、売女め!まさか先輩を酔わせて襲うつもりですか!?」

 トモエさんに反応してステラが噛みつく。


「そんなこと……し、しないわよ!」

 真っ赤な顔で否定するトモエさん。だが声が裏返り、余計に怪しい。そしてその間はなに?何かしようとしたの?


 そのとき、入口から落ち着いた声が響いた。

「なんだ、ずいぶん騒がしいな?アルフ達じゃないか、なんでこんな所にいるんだ?」

 ギルドマスターも到着した。フードを深くかぶった人を連れている。この人が紹介しようとしていた錬金術師かな?

 ようやく席についた“一角獣”の面々、面接を開始するがステラはこちらをチラチラと見ている。


「急に悪かったなギルベルト」

ギルドマスターが切り出す。


「いやちょうど依頼も終えた所だし、それに俺達も錬金術師は欲しいと思っていたからちょうどいい」


「元々は“闇鍋”に頼まれて錬金術師を探してたんだが、あいつらもう自分達で見つけたみたいでな」


「えっメンバー補充したんですか?誰です?」

 “闇鍋”の新メンバーにステラが食いつく。


「ほ、ほらあの小人族(ハーフリング)の……」

 ギルドマスターがジルさんを指さす。


「ちっ、また雌豚ですか……でもあれなら先輩も許容範囲外でしょう」

 ステラに睨まれ、ジルはしゅんと肩をすくめる。


「ほらほら、“闇鍋”の話はそれくらいにしてこいつがその錬金術師だ」


「トリシア・ダーガです。冒険者歴は2年でEランク、ずっとソロで活動してました。基本的な回復薬やは一通り作れます。あと、そんなに強くないですがゴーレムも作れます!今回はまさかSランクパーティに誘っていただけるなんて光栄です!私でよければよろしくお願いします!」


 トリシアさんはフードをとる。只人族(ヒューム)の女性で、年齢は20代前半といったところか。肩まで伸ばした赤毛、整った顔と何より胸が大きい……まさに僕好みの女性じゃないか。

 僕はジルさんを見る。ジルさんもかわいい顔をしているが小人族のため子供のかわいさだ。

 ち、ちくしょう!

 僕はドンとテーブルを叩く。他の人が引いているけど知ったことではない。ジルさんを勧誘したのは早計だったか……まさかギルドマスターが探してくれた錬金術師がこんな綺麗な人だったなんて……


 僕はギルベルトさんの席に近付くと小声で話しかける。


「ギルベルトさん、相談があるんですけど……」


「なんだ?アルフ」


「ウチのジルさんとトリシアさんをトレードしませんか?」


「なんでだ?」


 僕は必死に力説する。

「ジルさんは回復薬だけでなく殺傷能力の高い薬など薬品全般に精通していて、B……いやAランクの魔獣に匹敵するゴーレムも作れます。“闇鍋”よりもSランクパーティの“一角獣”の方が活躍できると思うのです!」

 少し誇張しているが、まるっきり嘘ではない。なんとしてもこのきょにゅ……トリシアさんを“闇鍋”に!


「ま、まぁ俺はどっちでもいいが、本人達の意向も聞かないとな……」


「ジルさんもAランクよりSランクパーティに入った方がいいですよね?」


「わ、わだしはその……えっと、その……」

「どちらも高ランクのパーティですし、入れるのであれば私もどちらのパーティでも構いませんが……」

 ジルさんとトリシアさんは答えにくそうだ。


「ギルベルトさん、トレードなんてダメですよ!ジルさんはもう“闇鍋”のメンバーなんだから渡しません!」

「私も反対ですリーダー!売女に比べたらちんちくりんを先輩の側に置いた方がマシです!」

 トモエさんとステラが止めに入る。でもステラ……トリシアさんを売女ってさすがに失礼だろう。

 しかし、

「アタイは別にトレードしてもいいよ?そっちの小人族の方が優秀なんだろ?」

「私も。ただアルフの提案っていうのが気に入らないけど……」

 まさかのリーシャさんとクレアさんが僕に賛同してくれた。


「そうだなぁ、ジルの方がいいのか?」

 ギルベルトさんも賛成しかけたが、

「ちょっと待った!俺は反対だぜ!」

「俺もだ!」

 今度はエレインさんとパルさんが反対な様子。チッ、せっかくまとまりかけてたのに!


「トリシアの容姿を見ろよ。完全にアルフのタイプだぜ?決して美人でグラマーだから“一角獣(うち)”に置いときたいってわけじゃないぞ?」

「そうそう、トリシアが“闇鍋”に行けば確実にリーシャとクレアの二の舞だ。決して俺と付き合ってくれそうな女性メンバーを他所にやりたくないって訳じゃないからな」

「う、まぁ確かに」

 エレインさんとパルさんもエレインさんを狙っている様だ……本音が漏れてるよ。しかし、2人の言葉にギルベルトさんは納得する。


「アルフ、私も“闇鍋(うち)”に入るのはジルの方がいいと思うぞ?トリシアだと確実に揉める!」

「アタシはどっちでもいいが、ジルの方が優秀ならわざわざトレードしなくてもいいんじゃないか?」

「その通りにゃ」


 他の“闇鍋”メンバーもトレードに反対のようだ。みんなの反応を見たトレシアさんは困惑している。


「えっと、アルフさんは何かしたんですか?」


 冒険者歴2年という事は、まだ僕がした事を知らないのだろう。ギルベルトさん、エレインさん、パルさんがこぞって経緯を説明する。


「コイツ、3年前“一角獣”に入ってたんだよ」

「その時このリーシャとクレアに治療とかこつけて痴漢行為を働いてクビになったんだ」

「その噂が広まって優秀な神聖術師だったのにどこからも勧誘されなくなって、自分でパーティを作ったわけだ。ちなみにコイツの好みはトリシアの様な年上の巨乳だ」


 その話を聞いたトリシアさんは顔を青ざめ、

「あっあのギルベルトさん、お願いします!やっぱり私を“一角獣”に入れて下さい!」

 と、懇願する。


「そ、そうだな。悪いアルフ、本人の意向もあるしトレードはなかった事に……リーシャとクレアもいいな?」

「そ、そうね……」

「私らと同じ目に合わせるのも可愛そうだし……」

 2人もトリシアさんが“一角獣”に入るのに納得した様子。


「そんな……僕はただ、トリシアさんみたいなボンキュボンで綺麗なお姉さんに治療にかこつけて色んな所を触りたいだけなのに!」

 断られたショックで僕は項垂れる。他の人たちが引いているのがわかる。

 口を滑らせた僕に、ギルマスが冷たく言い放つ。

「もう二度とお前に冒険者を紹介せん……」


 そしてジルさんがオロオロと口を開く。

「わだし、いらねぇ子……?」


 トレードを断られたからか、ジルさんもショックを受けている様だ。全く、皆ひどいよ!ジルさんを要らない子みたいに……確かにドジって殺傷力の高い薬品をかけたり、ゴーレムをけしかけたり……やっぱりトレードして欲しいなぁ。


「そんな事ないよ!ジルさんはもう“闇鍋”のメンバーなんだから!」

「そうにゃ!リーダーの言う事なんか無視して堂々といればいいにゃ!」

「先輩に手を出さないと誓えるなら側にいる事を許しますよ」

 とそれぞれジルさんをフォローしている。あのステラですら……成長したんだね。


 一連の流れを見ていたビルさんが声をかけきた。

「まったくお前は懲りないな……パーティの女に手を出すのはやめとけって前に言ったろ?」

 そういえば色んな人に言われたなぁ。


「まぁ今日は王都の娼館にでもしけこもうぜ?乳のデカい女なんざゴロゴロいるだろ?」


「ビルさん!奢りですか?」


「自分で払え!お前Aランクだろうが!」

 ちっ、どさくさで奢ってもらおうと思ったのに。ん?なんだか悪寒がするぞ?女性陣の冷たい視線に……


「アルフさん、どこへ行くって?」

「この犯罪者面め、先輩を悪の道にそそのかすなんて……」


 トモエさんとステラの顔がオーガみたいになっている。女の子がそんな顔してはいけないよ。かわいい顔が台無しじゃないか。それに2人とも物凄い殺気だ。なにしろトモエさんに掴まれている僕の腕からボキッボキンと音が聞こえる、折れてるね。そしてステラはずっと僕の足を踏んでるし。


「ビルさん、アルフさんは怪我をして行けなくなりました。行くなら一人で行って下さい」

「犯罪者さん、先輩は売女になど興味ありません。一人で行ってください」


 さすがのビルさんもドン引きだよ。この2人、普段は言い争ってるのになんでこういう時だけ息が合うんだよ。


「お、おぅ……そうだな、悪かった。じゃあアルフ、そういう事だから今回は俺らだけで行くわ……」

 そんな!今日は綺麗なお姉さんに『キャッキャうふふ』して貰うのを楽しみにしてたのに!


「そういう事だからアルフさんは私達と楽しみましょう?」

「安心して下さい!どんな怪我でも私が治してあげます」


 ビルさん待って!この人たちの所に僕を置いてかないで!この2人、僕の体を壊しては治すという恐ろしい拷問を行う気だよ!


 こうして楽しいはずの打ち上げは、僕にとって地獄の夜となった。

1話から26話のセリフや詠唱を追加するなど修正してみました。誤字も多かったので読みやすくなったと思います。

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