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13話 カズスール山脈

 カズスール山脈には高ランクの魔獣が多く生息している。目的地に近付くにつれて手強い魔獣が襲って来ていた。


「サイクロプスにゃ!全部で3体!」


 サイクロプスは3〜5mはある一つ目の巨人。怪力ででかい棍棒を振り回す怪物、Aランクに相当する。


「1体はカールちゃんが相手をする!後頼む」


「了解!1体はトモエさん!最後の1体はブルーノさんお願いします!」

「うん!」

「おう!」

 さすがは2年間一緒に戦ってきただけあって、役割分担がスムーズに決まる。

 サイクロプスの巨体に臆することなく立ち向かうメンバーたちを見て、改めて皆の成長を実感する。


「エルノールさん、魔法準備!」

 と言ったものの、エルノールさんは既に呪文を唱え始めていた。


「3人とも!エルノールさんの魔法が来ます!サイクロプスをなるべく一ヶ所に!」


「トモエ!ブルーノ!いけるか?」


「私は大丈夫!」

 トモエさんはサイクロプスの手を掴み力比べをしている。


「ワシはちときつい!」

 ブルーノさんは棍棒をまともに受け、吹き飛ばされた。

迫るサイクロプスを、シャルルさんの矢が横から牽制。

「援護するにゃ!」

「おう!助かる!」


 2人の呼吸が合っているのを見て、改めて皆の成長を実感する。シャルルさんはこの2年間エルノールさんから弓矢を教わっていた。


「トモエ!ブルーノの所に誘導するぞ!」

 リリスさんが指示する。

「わかった!」


「カールちゃん!」


 カールちゃんは素早い動きでサイクロプスを翻弄。時折攻撃しながらヘイトを集め、サイクロプスを誘導する。

 力比べをしていたトモエさんはサイクロプスをブルーノさんの近くにぶん投げる。


 上手く3体のサイクロプスを一ヶ所に集めてくれた。

 エルノールさんをみると頷く。


「3人とも離れて!」


 3人が離れた事を確認すると、

「エクスプロージョン」


 爆炎がサイクロプス達を包む。炎が治まると無事サイクロプスは焼け死んでいた。


「皆さんお疲れ様です。先を急ぎましょう」


 サイクロプスの死骸はそのまま先に進む。



「それにしてもカールちゃん強くなりましたね。Aランクの魔獣と戦ってもものともしてない」


「ふふ、大分鍛えたからな。私と一緒に強くなった」


 僕とリリスさんがカールを撫でていると、

「えへへ、カールちゃんえらいえらい」


 便乗してトモエさんも撫でようとするが、カールちゃんはすぐに僕らの後ろに隠れる。

 さっきまで巨体のサイクロプスに勇敢に立ち向かってたのにガクガク震えている。

 何年経っても身体中の骨を折られたのが忘れられないようだ。


「なんで!?そんな怯えなくても!もう力をコントロールできるようになったから大丈夫だよ?」

 カールちゃんはブルブル震え、さらに後ずさり。

「トモエ……諦めろ」

「気持ちはわかります。カールちゃんの……」

 僕とカールちゃんはトモエさん被害者の会のツートップですかね。しかも精神状態ですぐにコントロール乱れるからいまだに骨を砕かれる。


「でも、もったいないにゃ……サイクロプスの素材って高く売れるのに……」


「まぁの、もっと時間に余裕があればのぅ。トモエのマジックバックがあるから荷の量を気にする必要はないのにのぅ」


「帰りに残ってれば回収するか……」


 シャルルさんが上を向く。

「また魔獣にゃ!あれは……げっ!ワイバーンにゃ!」


 ワイバーン。ドラゴンの頭に蝙蝠の翼に1対の鷲の脚、先が矢尻の様なトゲを具えた蛇の尻尾を持つ。こちらもAランクだけど、サイクロプスよりも厄介さは上だ。

 空を飛ぶ敵は地上戦に比べて格段に難しい。エルノールさんの魔法が頼りだ……


 シャルルさんが弓を構えるが……

「待ってください!」


 ワイバーンの軌道がズレている。狙いは……

 ワイバーンはサイクロプスの死体に突っ込み、屍肉を貪っている。


「なんて所だ。サイクロプスが餌に……」


「うげぇ……グロォ」

 異世界ではあまりこういうシーンは見ないのだろう。トモエさんがドン引きしている。


「弱肉強食……これも自然の摂理です」


「今のうちに先に行こう」


 僕達はヘイトがこちらに向かないうちに先に進む。襲ってこないならわざわざ相手をする必要はない。

 でもこの光景を見ると、改めてこの山脈の危険性を実感する。


「しかし、カズスール山脈に着いたはいいけど、何処にあるんだ?洞窟なんていくらでもあるぞ」


「火竜の匂いを辿ろう。カールちゃんが匂いを覚えていると思う」


「リリスさん、火竜に遭遇した事あるんですか?」


「ん?ああ……ちょっとな」


「凄いにゃ!ドラゴンと戦ったなんて……」


「別に戦ったわけじゃない。カールちゃん匂いを辿ってくれ」


 ワンと吠えると空中に鼻を向ける。歩いた方が良さそうだ。

「光の神イーリスよ!この地を汝の御座となし、あらゆる魔獣を遠ざけたまえ!グレーターサンクチュアリ」

 目立たない所へ馬車を置くと魔獣除けの結界をかけ先へ進んだ。




〜〜〜〜〜



 途中何度も魔獣に遭遇するが、匂いを辿りなんとか目的の洞窟に到着する事ができた。

 カールちゃんの毛が逆立ち尻尾が直立する。


「ここですか……問題は、今現在ドラゴンがここに居るのか、という事ですがシャルルさん分かりますか?」


「う〜ん……いない?気がするにゃ。もしうちより強い魔獣がいたら、もっと尻尾がぴーんってなるにゃ」


 その表現はよく分からないけど信じて良さそうだ。彼女は人一倍臆病で危機管理能力も他のメンバーより優れている。もしドラゴンくらいやばいのがいたら、シャルルさんはもっとビビっているはずだ。

「でも油断は禁物ですね。いつ帰ってくるかわかりませんから」


「今のうちに入ろう」


「待ってください。万が一戦闘になった時のためにトモエさん、あの服を来ておいてください」


「え?あれ着るの?」


「もちろん!何かあってからじゃ遅いんですよ?」


「え〜?恥ずかしいのに……」


 渋々カバンから転移した時に着ていた服を取り出す。

 この服はトモエさんが通っていた学校の制服で、何でもセーラー服というらしい。元々ただの布の服だったけど召喚した際に防刃性があり、防御力の高い物に変換されたようだ。

 デザインも異世界らしく、この世界にはない独特の美しさがある。機能性と美観を兼ね備えた素晴らしい装備だ。

 今彼女が持っている装備品の中で1番防御力がある。

 このプリステラにはない物だから、彼女が異世界人だとバレないよう普段はしまってもらっているが(僕的にはセーラー服姿は琴線に触れるのでもっと着て欲しい)、肝心な時にはセーラー服を着て戦ってもらっている。ここには僕達しかいないから大丈夫だろう。


「もう中学卒業してる年なのにセーラー服着るの恥ずかしいのに……それにこれ着たらアルフさん変な目で見てない?」


(そんなわけないでしょう!これでも僕は聖職者ですよ?)「トモエさんのセーラー服姿に興奮してます!」


「リーダー……心の声が漏れ出てるにゃ」


「なんて分かりやすい奴……」


「さすが“性職者(ホーニィ・クラージー)”の二つ名を持っとるだけあるのぅ」


 しまった……つい心の声の方を言葉にしてしまった。


「やっぱり着たくないんだけど」

 渋り出すトモエさんに、

「その服が戦力になるのは事実なんだ。アルフが変な目で見ていようがどうでもいいだろう」


 まさかのリリスさんからの助け船。

 リリスさんは羞恥心があまりないのか男性陣がいても平気で着替えたりするからな。そういう時はトモエさんとシャルルさんが止めたりするけど……眼福です!


「そりゃリリスさんはいいだろうけど……」


「いいから早く着替えろ!」

 渋るトモエさんに痺れを切らしたリリスさんが無理矢理脱がそうとする。


「ちょっ、リリスさん?やめてよ!ここは男の人もいるのに!」

「そんなの関係ない!戦闘準備が先だ!」


「リリス!それは流石にまずいにゃ!リーダーが鼻血出してガン見してるにゃ!せめて物陰に……」


 なんだかんだでセーラー服に着替えたトモエさんは真っ赤な顔をして出てきた。うん、やっぱりこの方がいい、ずっとこの服を着てくれたらいいのに。

 白い布地に紺色の襟と赤いリボン、膝より少し上の紺色のスカート。トモエさんが着る事で清楚さが際立っている。

 しかし、

「できればシャルルさんとリリスさんの2人にも着てほしいですね。なんとか量産できないものか……」


 2人がセーラー服を着ているのを想像し、熱いものが込み上げてくる。


「確かに……この軽装で高い防御力だからな。あるんならアタシらも着るべきだろう」

 やはりリリスさんは話が分かる。


「リリス違うにゃ。リーダーがうちらに着せたいのはきっと別の理由にゃ」

 ちっ、この猫娘は……これだから勘のいい子は嫌いだよ。


「だ、ダメだよ!これは私のなんだから、私以外着ちゃダメ!それに量産なんて出来ないし!そんな事したら著作権に引っかかるよ!?」


「チョサクケン?新しい剣技か?」

「必殺技みたいな響きだな」

 この子はたまに意味の分からないことを言うな。異世界の言葉かな?さっきまで着たがらなかったのに他の人に着せようとしたら急に自分のだなんて……これがトモエさんが以前言ってたツンデレというやつなのか?


「いよいよですね…全員、気を引き締めていきましょう」

 そして僕達は洞窟に入る。

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