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すれ違いの天気雨

その日、いつものように教室で過ごしていた陽香留は、快斗の態度にまた違和感を覚えていた。最近、快斗は僕を避けるようになっている。そのことを陽香留は何となく感じ取っていたが、最初は気のせいだと思っていた。しかし、日に日にその距離が大きくなっていくのを感じ、次第にそれに耐えられなくなってきた。

放課後、陽香留は決心して、快斗に直接話すことを決めた。教室を出る直前、陽香留は快斗が一人で歩いているのを見つける。彼の背中を見て、陽香留は一歩踏み出した。

「……快斗さん、ちょっと待って!」

陽香留の声が響いた。振り返った快斗は、少し驚いた表情を浮かべているが、陽香留はその表情にさえ気づかず、すぐに歩み寄った。快斗は軽く息をついて、何も言わずに立ち止まる。

「どうしたんだよ、陽香留?」

「……もう、我慢できない。」陽香留の言葉に、快斗は眉をひそめる。

「快斗さん、最近僕を避けてますよね。」

その言葉に、快斗の心臓が跳ねる。陽香留は続けて言った。

「僕、何かしましたか? それとも、僕が嫌いになったんですか? どうして、急にそんな」

その言葉が次々と快斗に突き刺さり、快斗は言葉を失った。陽香留はただの軽いからかいのつもりだろうに、それがどうしてこんなに重く感じられるのか、快斗はどうしても理解できなかった。

「別に、嫌いになったわけじゃない。ただ……なんか、わからなくなったんだ。」

その言葉を聞いた陽香留は、ますます苛立ちが募った。陽香留は不意に近づき、快斗の前に立ちはだかると、片手で壁を叩いて、快斗を壁際に追い込んだ。

「じゃあ、何なんですか?どうして、」

陽香留の声は、今までにないほど真剣だった。快斗は一瞬驚いて後ろに体を反らせたが、陽香留は動じずに続ける。

「ちゃんと教えてください。僕が何か間違ったことしたのか、ただ気づかないだけなのか、教えて」

快斗は動揺し、口を開けて言葉を探す。しかし、陽香留の切羽詰まった表情に、何も言えずにいた。陽香留はその顔を真っ直ぐ見つめ、さらに問い詰めるように言った。

「お前、僕が嫌いなら嫌いって言ってください。今のまま、無視される方がよっぽど辛いです。それに、やっぱり、嫌でしたよね。」

快斗はその言葉に胸を突かれるような感覚を覚えた。陽香留の真剣な眼差し、焦り、そしてどこか怖いほどの熱意。それを前に、快斗はやっと言葉を絞り出す。

「違う……ただ、俺、なんかお前に変に気を使ってるみたいで、どうしたらいいのか分からなくなって……」

その言葉を聞いた陽香留は、少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐにその顔に理解の色が浮かんだ。

「気を使ってる? 僕が、快斗さんに気を使わせてるんですか。そんな、」

快斗は焦って首を振る。

「違う! そういうわけじゃない……ただ、最近、お前とどう接すればいいのか、わからなくなって……。」

陽香留はしばらく黙って快斗の言葉を聞いていた。彼の顔が少しずつ柔らかくなり、静かに言った。

「……それなら、何も怖がらなくていいのに。」

陽香留は、少しだけ距離を縮めるように体を動かし、優しく言った。

「僕は、快斗さんに気を使わせたくない。普通に、いつも通りに接してくれればいいんです。」

その言葉に、快斗は肩の力を抜いたような気がした。陽香留が微笑むと、快斗はその笑顔に心から安心した。

「でも、これからは無理に避けたり、距離を取ったりしないでくださいよ。」

陽香留はしっかりと快斗の目を見て言った。快斗はその言葉にうなずき、少し照れくさそうに答える。

「その、わるかった……。」

陽香留の顔に、少し満足げな笑みが浮かび、快斗はその笑顔を見て、少しだけ心が軽くなるのを感じた。



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