夜雨、おやすみ
あれ、俺何で時枝を警戒してたんだろう。
「そろそろ寝ますか。部屋はどうしますか?」
「部屋か、、、このまま秘密でも話し合っちゃうか?」
思わずそう言ってしまった。。。この部屋に無言の時間が流れ始める。気まずい。
「冗談だよ。布団敷くんだろ、手伝う。」
そしてこのまま、布団を敷き終わった二人は眠りにつくことにした。
時計の針は深夜2時を指していた。陽香留の部屋には重たい静寂が漂い、快斗は布団に横になりながら天井を見つめていた。
「…なんでこんなことになってんだよ。」
呟いた声は自分の耳にさえ小さく響いた。
陽香留は隣のベッドで、すでに眠っているのか、それとも起きているのか分からない。快斗は彼の無防備な寝顔にチラリと目をやり、視線を戻した。
「俺、こんなとこに泊まるとか、絶対間違いだよな。」
再び呟いたが、返事はない。
少しだけ身体を起こし、部屋の隅に置かれた雑多な本や小物を見回す。陽香留の趣味が垣間見える品々だが、そのどれもが快斗には理解できないものばかりだった。
「まったく、なんでこんなやつのところに来ちまったんだろ。」
再び横になろうとしたとき、ベッドから陽香留の声がした。
「後悔してるんですか?」
快斗は一瞬驚き、声のする方を振り返った。陽香留は目を閉じたまま、静かに問いかけるような声だった。
「お前、起きてたのかよ。」
「なんとなく。快斗さんが帰りたそうな気配を出してるから。」
快斗は舌打ちしながら頭をかいた。
「後悔っていうか…ただ、なんか居心地悪いだけだ。」
「それは快斗さんがまだ本音を隠してるからですよ。」
「は?」
陽香留は目を開け、ゆっくりと快斗の方を見た。
「さっきも言いましたけど、僕は快斗さんの隠してるものを見てみたいんです。でも、無理に聞き出そうとは思ってません。快斗さんが話したいと思うまで、ただ待つだけ。」
その言葉に快斗はイラつきを隠せなかった。
「お前、ほんと何なんだよ。俺が何か隠してるって勝手に決めつけてさ。」
「違いますか?」
陽香留の声は柔らかいが、どこか挑発的でもあった。
「違う…かもしれねぇけど、それがどうしたんだよ。お前に関係ないだろ。」
「関係ないですね。でも、僕は快斗さんに関わりたいんです。」
その一言に快斗は言葉を失った。自分に向けられる無条件の好意が、どうしても受け入れられない自分がいる一方で、どこかそれにすがりたい気持ちも心の奥に芽生えているのを感じた。
「…あー、もう、分かんねぇよ。」
そう吐き捨てて快斗は寝返りを打つ。
陽香留は、そんな快斗の背中を見つめながら微笑んだ。
「おやすみなさい、快斗さん。今日は、少しだけいい夢が見られるといいですね。」
その一言に快斗は返事をしなかったが、胸の奥にほんの少しだけ暖かさが灯った気がしていた。