雨宿り
時枝の家に着いた快斗はどうするのか
かれこれ一時間。
「くっそ、また負けたぁ!なんでどのゲームやっても勝てるんだよ。ばけもんか?」
「あは、照れるなぁそれにしては快斗さんちょっと弱くないですか?」
「んなっ弱くねぇくそ、もう一回だ」
「快斗さんはからかいがいがありますね。また勝負するのもいいですけど、一度休憩しましょう。飲み物取ってきますね。ちょっと待っててください。」
ガチャ
出ていったな。することもねぇし暇だなぁ。少しぐらい手伝うか。
と言って廊下に出たものの、、、無駄に広いな、、、どこがキッチンなんだ?ドアが閉まっててどれがどれか解らねぇ。戻ろうとしても、どこのドアだっけ?
うろちょろしてるうちに、1番奥のドアから物音がした。
「あそこか、ったくもう、余計なことしないで部屋で待ってるんだった。」
徐々に早足になり、ガチャと音を立ててドアを開ける。
「お前の家ってこんなに広いのな。ちょっと手伝おうと思ったら迷子だぜ。」
「え!快斗さん!手伝いに来てくれたんですか?家、広いですよね。僕も最初の方とかトイレ行くのにも時間かかっちゃって。あ、ちょうどよかった、これ、トレーとかないの忘れてて、、こっちのお菓子とか持ってってもらってもいいですか?」
そういうこいつの前にはお菓子が詰め込まれたお皿があった。
「おう、てか、飲みもんのが重いだろ?そっち持つぞ?」
「あっ、いや、大丈夫です。お気遣いありがたいんですが、快斗さんはお客さんなので」
そう言ってドアを開け、部屋の方へと一緒に戻った。
率直に言おう。ゲームって、こんなにむずかしかったっけ?
一体飲み物を取ってから何戦しただろうか。一回も勝てない。今までゲームを誰かと一緒にすることはあった。ただ、一回も負けたことはない。はずだったのに。
「だぁああああっ!また負けたぁ!って、もうこんな時間じゃん。。。」
時計を見ると、もうすでに7時を回っていた。とりあえず、親に連絡をしなければと思い立ち上がると、時枝が声をかけてきた。
「快斗さんが良ければなんですが、ここに泊まりませんか?明日は休みですし、今から帰るのもだるいでしょう?」
「えっ!本当か?」
「はい。もちろんです!一緒の部屋が嫌だったら他にも部屋がありますし、晩御飯はピザでも頼んじゃいますか?ゲームももう少ししたいですし。」
まじか。。。。やばい、泊まりたい。。。。友達の家なんて泊まったことないもんな。
「お前がいいなら、親に連絡してくる。晩飯代は割り勘でな?」
「はい、わかりました。実は僕、友達と泊まるのは初めてなんです!楽しみですね」
フッと微笑むこいつを見て、思わず俺も笑ってしまった。こいつの邪魔にならないように一度廊下に出て、親にメッセージを送った。放任主義なのと日頃のあっちの俺のおかげで案外すんなりと受け入れられた。こういうときに役立ってくれないと意味がないけど。了承を得ることができたので部屋に入る。
「おまたせ。許可が取れた。ゲームしようぜ」
「良かったです。ゲームも良いんですけど、せっかく泊まれるんですし、映画でもみませんか?僕は風呂を準備してくるので、映画何かみたいのを選んでおいてほしいんですが。それと、ピザは何味が良いですか?」
「映画か…それもいいな。じゃあ、ちょっと選ばせてもらうか。」
俺は適当に棚に並んでいるDVDを物色し始めた。アクションにホラー、コメディにサスペンス、いろんなジャンルが揃っている。こんなに揃ってるなら何でも選べるが、時枝がどんなのが好きなのか考えつつ、少し迷ってしまう。結局、二人で楽しめそうなアクションコメディを手に取って、彼が戻ってくるのを待つことにした。
数分後、風呂の準備を終えた時枝が部屋に戻ってきた。
「映画、決まりました?」
「おう、これにした。アクションとコメディが混ざったやつだけど、どうかな?」
「おお、面白そうですね!僕もそういうの好きです。」
そう言って笑う彼の顔を見て、安心する。なんだか、いつも見てるクールな時枝よりも、今夜は少しだけ砕けた感じがして、親しみが湧いてくる。
「じゃあ、ピザはどうする?オレはペパロニがいいかなと思ったけど、他に食べたいのあったら言ってくれ。」
「ペパロニ、いいですね!僕もそれで大丈夫です。注文しておきますね。」
時枝がピザを注文している間、俺は座って映画の準備を始める。やがてピザの到着予定時間を知らせてくれた時枝と一緒に、部屋の明かりを少し落として、映画が始まるのを待った。
ピザが届き、熱々のピザをつまみながら映画を観ていると、いつの間にか時枝といろんな話をしている自分がいた。ゲームのこと、学校のこと、些細なことまで、話題が尽きることはなかった。
「あれ、お前、そんな風に笑うんだな。」
「え?そうですか?」
「普段はもっと壁っていうか、クラスでもあんまり話さない感じじゃん。愛想笑いみたいな。でも今は、なんか別人みたいだ。」
「そうですね…快斗さんといると、安心して話せるんです。こんな風に笑って過ごせるの、楽しいです。」
その言葉に、なんとなく照れくさくなってしまい、俺もつい笑ってしまった。気がつくと、もう映画はクライマックスに差し掛かっていて、結末を見届けると二人で少し余韻に浸る。
「なあ、泊まるっていいな。今まで友達とこういうの、したことなかったから。」
「僕もです。でも、今夜は本当に楽しいですね。」
時枝と俺、一日がこうしてあっという間に過ぎていく。
映画が終わり、部屋には心地よい静寂が訪れた。画面にはエンドロールが流れているが、二人とも話すこともなく、それをぼんやりと眺めている。部屋にはまだピザの香りが漂っていて、なんとも言えない安らぎを感じる。
「いやぁ、楽しかったな…映画も良かったし、ピザもうまかったし。」
俺がそう言うと、時枝も「ですね」と小さく頷く。その姿に、なんだか親近感が湧いて、いつもより自然に話せている自分に気がつく。あれ、俺なんで時枝を警戒してたんだろう。
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