ひもの街8
「気をつけてくださいね」
ロプは歩みを止めて静止させるように手を横に伸ばした。2分ほど滑る歩行以外に動作がなかったので驚きを覚える。案内人なら少しは振り返って退屈させないように会話を続ければいいのに、と悪態を心の中でついたのは1分前からだ。
そんな心であかんべーと舌を出すのを消化された思考は、気を付けることでマン服になっている。気をつけろ気をつけろ気をつけろ……
「何に気をつけるのですか?」
「あれを見てください」
指し示す先、視線の先には次のようなものがある。
紙のようにペラペラ動く床。硬さなど全く感じず、クッション性を通り過ぎて布で折られた蛇のようにくねる。それは街の人々を乗せる。
波のようにうねるそれは大きく弾けてウェーブする。ビックフェーブに弾き飛ばされた人々は、直ぐにひもに捉えられて波に戻される。そのまま何事もなかったように進んで去っていく海原のような光景に度肝を抜かれた。
なるほど、命綱だ。
「なるほど、命綱だ」
シューはオイラと同様の幼稚な感想だった。
「ここからは同じように移動しますが、こういう絶叫系は苦手でしょうか? 苦手でしたら別ルートでゆっくり行きますが?」
「得意じゃないだけど、大丈夫です」
オイラも苦手だが、どうせなら体験したいというワクワク感が優先する。シューも同じだろう。気が合うものだ。