ひもの街3
門がある。
白くて柔らかそうなものだ。わたあめのように揺れるそれをシューは2、3度つつきながら首をかしげる。
「やはり柔らかいな」
「そうだね。柔らかい街だね」
オイラも門の下の部分を猫パンチした。犬なのに猫パンチしたのだ。そう、オイラは犬なのに猫パンチだ。
「――何がおかしいんだ?」
腹を抱えて笑うオイラに対してシューが怪訝そうにしていた。オイラは特にいう必要がないと思うので、肩を揺らして深呼吸していた。
「なんでもないよ」
「そうか? それならいいけど」
オイラ達は足を伸ばした。
と、足を取られた。
何に? 何に足を取られた? 虫か?
いや、違う。
心臓を氷に掴まれたように焦るオイラが街に入った右前足に視線を下ろすと、白いひも状の何かが地面から伸びて巻きついて絡まっていた、境界線をはさんで土色からいろいろに変わった瞬間の生えるもの。
街に入ったら、地面からひもが出てきて繋がる。これは街に飲み込まれるのだろうか、巨大な食虫植物に捉えられたかのように。この街には白い悪魔か?
踏ん張るにしても地面がふわふわと沈み弾み勝手が効かない。踏ん張りが効かないなか、状況は好転しない。暴れるほど絡みつく罠のように悪化するわけではないが、それが逆に気持ち悪い。
「なんだこれ?」
「離せ、コノっ、コノっ!」
シューは少し足を振り、それでも取れないので屈んで手で解こうとしたが悪戦苦闘していた。そして、困ったように後頭部をかいた。
オイラは蹴りに蹴って爪で剥がそうとしたり歯で千切ろうとしたりした。暴れるように転がると、新たなひもが伸びてきて残った3本足を捉える。
唸りながらそれらを噛み千切ろうとした。それでも取れそうになかったので、いよいよ白旗を上げたい。
シューはリュックに手を伸ばした。ナイフが常備されているのだ。革のカバーをボタンで外して現れた刃は鈍く虹色を映す。