ニエベス大王
☆ニエベス大王☆
ギルバート帝国に突如として攻撃を開始したニエベス王国の大王には、とある勝算があった。
とはいえここのところの戦闘の戦績は、連戦連敗。ここらで騎士団に対し喝を入れる必要があった。
ニエベス王国の中心地にそびえ立つ巨大な王宮にニエベス騎士団の団長を呼び出し、大王から直々に叱咤激励をするに至った。
「どういうことかね、この悲惨な有り様は。ええ? デーシィ騎士団長」
ニエベス大王は完全に禿げ上がった頭をぱちんと自ら軽く叩き、それから白い顎ひげをいじくり回しながら言った。それが、それだけの仕草が、デーシィ騎士団長にとってはなんとも威圧感のあるものであった。
「なぜ、我々の騎士団は敵国のそれに勝てぬ?」
「騎士の数と、各々の騎士の技術力かと…!」
「違う!」
ニエベスはみっともなく地団駄を踏みながら怒鳴った。頭の先まで紅潮させている。
「騎士団長ともあろう者がそんな簡単なこともわからんでどうするッ!」
「はっ! 申し訳ございません! で、ではニエベス様。我々が奴らを打倒するには何が必要なのでしょうか」
「それだ。それなんだよ」
そう言ってニエベスは、指を鳴らした。するとニエベスそばにいた秘書が、ポケットから鍵を取り出し、部屋の奥の扉を開けた。するとそこには、魔法の杖が横たわっていた。
「ニエベス様…。こ、これは」
「クックック。教えてやろう。お前らがギルバート帝国の騎士団に勝てないのは、『愛』がないからだ」
そう言ってニエベスは笑ったが、騎士団長のデーシィはポカンとしている。
「デーシィ。まだ気づかんか。アクアミスリルだよ、アクアミスリル」
ニエベスはまたクックックと笑った。
「なるほど! 確かに我々が撃退された中で、向こうの騎士団長の持つアクアミスリルにやられた回数は数知れず…!」
「アクアミスリルという『愛』が、向こうにはある。こちらに『愛』などという高尚なモノはない。が、こちらには『科学』がある」
「は、はあ」
「そこの魔法の杖は、ただの魔法の杖だ。名前などいらん。ただ、こいつを使えばアクアミスリルの威力を無効化することができる」
「本当でございますか!」
「これを使って、ギルバート帝国全土を我が物にしてやるわい!」
ニエベス大王は不気味に笑った。
アクアミスリルを使いこなすパオロ擁するギルバート帝国がア『愛』を武器に闘うのに対して、『愛』のないニエベス王国は『科学』を武器に、迎え撃つ。
パオロは、自己実現の証を見せつけ、ニエベス騎士団からの防御を成功させることができるのか。




