戦、勃発
「ミョージャ、俺はね。どうして自分が『異世界転生』なんてすることになったか、その理由をずっと考えていたんだ」
ミョージャは真剣な顔つきで俺の話を聞いている。質問もないし、茶化したりもしない。どうやら親父の書斎には、相当事細かな説明がなされた書が沢山あったようだ。ミョージャが話を理解できているのを確認してから、俺は続けた。
「神様が、俺にもう一度、頑張るチャンスをくれたんじゃないかって、思うんだ。それに」
「それに…?」
「ミョージャと出会うチャンスもね」
もう、ミョージャは何も言わなかった。でも、俺の言うことは理解してくれたと思う。彼女は頷くと、黙って俺の部屋を後にした。悪い、ミョージャ。俺、頑張るよ。
俺は、1週間の謹慎処分のところ僅か4日間で許された。なんでだろうと少し訝しんでいたが、やはり俺の予想は的中した。詳しいことはわからないがついに、ギルバート15世と、隣国であるニエベス大王との何らかの交渉が決裂し、ニエベス大王はギルバート帝国との国境ラインである魔膜を突き破り、我が国に侵入すると宣言したらしい。
こうなったら、我々は大至急闘う準備をし、なんならいつでも先制攻撃ができるように準備しておかなければならない。当然のことだ。
騎士達が宿舎に全員集められると、講堂にギルバート15世が現れた。
「我が愛すべき親衛隊の諸君! 今、我々は危機に瀕している!」
ギルバート15世は力強く叫ぶ。さすがに相手が皇帝ともなると、いつもの調子で囃したりする者は誰もいなかった。
「私は、諸君にこの国を防衛してもらいたい! いや、私は諸君と一緒に闘いたいのであるッ!」
ついに耐えきれなくなった馬鹿どもが、盛り上がってきた。歓声を上げ、講堂は熱狂に満ちている。
ギルバート15世による演説のようなものが終わると、俺達は部隊ごとにわかれて、作戦会議を始めた。俺達『師団』は出征する部隊である。防衛戦の時は主に国旗ラインの魔膜を敵から守る役割を任せられる。今回は防衛戦であるため、俺達『師団』の役割はかなり重要になってくる。しかも俺は組織のリーダーだ。失敗は許されない。が、さすがに作戦にかんしては、先輩方と一緒に話して決めることになり、新人の俺に権限はほとんどなかった。
夜中、俺は師団を率いて国旗ラインに騎士達を集結させた。まだ何も起こっていないようだが、いつ敵が襲ってくるかわからない。そのため、寝ずに番をする必要がある。俺達騎士は代わりばんこで仮眠を取りながら、国境ラインの魔膜を見張っていた。
「もう、大丈夫なんじゃねえか?」
誰かがそんなことを言い出した頃、敵はいきなりやってきた。物凄い爆発音とともに、魔膜が一気に破られていく。敵の姿はまだ見えないのに、凄まじい威力の攻撃だけが、我々を襲っていく。チキショウ。なんてこった!
俺達の仲間は、一気に半分近くがやられ、その殆どが大きな怪我を負った。もちろん、死人も出てしまった。




