決闘の結果
厳しい修練の後でも何のその。騎士達は俺とハドソンとの決闘を見届けるために、疲れを忘れて修練場に残っていた。宿舎に戻る者など1人もいなかった。
熱気の渦に包まれる騎士達の修練場は、昼間とはうってかわって、彼らにとっての娯楽の場と化していた。ただ、それだけではない。俺もハドソンも必死だった。俺達の決闘に決着が着けば、我が近衛師団は一致団結する。そう誰もが信じていた。
レフェリーは特別にパーレンに残ってやってもらった。
「やれやれ。若い奴のやることはわからない。では2人! 近づいて剣を構えろ!」
俺とハドソンは睨み合った。数秒後はどちらかが怪我を負っているかもしれないというのに、そんなことは気にならなかった。それは恐らく、ハドソンにしても同じことだろう。
「はじめッ!」
パーレンのドスの効いた声が響くと、早速ハドソンは飛び交ってきた。物凄い勢いで剣を右や左に振ってくる。俺はそれらの対応に追われてなかなか自分のペースが掴めなかった。
「どうだ師団長! 前師団長の素早さもなかなかのもんだろう…!」
「くっ…!」
強い…! 前近衛師団長ともなるとこんなにも強く素早いものなのか。ハドソンは喋りながらでも、まったく攻撃のペースを落とさなかった。
「どうした、師団長! アクアミスリルを使ってみろや!」
「そ、そうか…! 覚醒アクア…」
「フハハハハ!」
「ぐわっ!」
俺の「覚醒アクアソード」が、出るまでにハドソンは次々と攻撃を繰り出してくる。隙を見せたらやられる…!
「師団長の体力がどれだけ持つかな!?」
あり得ない。化け物みたいな体力だ。ハドソンはさらに攻撃のペースを上げてくる。観衆からは、歓声が上がる!
「いいぞ、やっちまえ!」
「ぐわっ!」
俺はついにガードにもたつき、少し頬にかすり傷を負った。すると集中力の緩みにつけ込み、ハドソンはますますペースを上げてきた。もう無理だ…!
俺は多少のダメージを覚悟し、万全な「覚醒アクアソード」を放つことにした。
「覚醒アクアソード!」
観衆からは再び大歓声が上がる。その間にもハドソンは攻撃の手を緩めない。血だらけになりながら、俺は「覚醒アクアソード」を放った。「覚醒アクアソード」はハドソンに命中した。修練場には割れんばかりの大歓声が沸き起こった。
結論からいうと、ハドソンは大怪我を負った。だが、俺の受けたダメージもかなりのものだった。俺とハドソンは看護室に運ばれ、ギルバート帝国騎士団統括団長から師団及びパーレンごとこっぴどく叱られた。
特に俺とハドソンは帰郷を命じられ、軍法会議にかけられた結果、1週間の謹慎処分が下されることとなった。
やってしまった。俺は深く反省した。何をしているんだ俺は。ハドソンなんて仲間なのに。一歩間違えれば、確実にハドソンは死んでいた。絶対にこんなことをしている場合ではないということに、冷静になってから初めて気づいた。不思議だ。決闘する前までは、この戦いが物凄く意味のあるものに思えてならなかったのに。まあいい。この決闘によって、俺とハドソンは仲良くなり、師団そのものが一致団結することに繋がるのであれば。




