再び騎士に!?
「な、なんだ! どうした!」
「皇上! ささ、シェルターに!」
カバジ・ジャコフは的確な指示を出す。しかしながらギルバート15世の足が動くことはなかった。
「避難なさってください! 皇上!」
やがて、ギルバート15世がもたもたしている間に、俺達のいる部屋にも何者かが窓を割って勢いよく侵入してきた。それはどう見ても人間ではなかった。長身のギルバート15世よりもさらにひとまわりもふたまわりも大きな体に、黒々とした体の色。おまけに筋肉隆々で、頭には角が生えている。顔はまるで獣だった。
「デーモンだ!」
「デーモン…。隣国のニエベス王国による攻撃か!」
「ささ、皇上はシェルターにお逃げください! ここは私が対処致します!」
「フッ。なあに…」
ギルバート15世は逃げなかった。その代わりに、手にしていたアクアミスリルをデーモン目がけて振り下ろした。しかし、水の分身も出なければ、攻撃の威力も弱く、デーモンに簡単に剣ごと掴まれ、投げ飛ばされてしまった。剣はがらんと音を立てて地面に落ちた。
「貴様…! 皇上になんてことをッ!」
しかし、カバジ・ジャコフは一旦冷静になり、今はギルバート15世を避難させることを優先した。
あのー。俺のことは助けてくれないんですかね? 部屋にひとり取り残された俺。しかし、そんな余裕もないのも確かだ。
デーモンは、そそくさと逃げるギルバート15世とカバジ・ジャコフに狙いを定めている。
まずい! 俺は剣を拾おうと走る。幸い、デーモンは指令を受けているためか、俺のことは眼中にないみたいだ。
あれ、でも。俺は騎士をやめなきゃいけないのではなかったか? だとしたら、剣を持つことすら許されないのでは? いくつもの疑問が、俺の頭を駆け巡った。そんな時、「騎士の美徳」ぱっと頭に浮かんだ。忠誠、真実、忍耐、寛容、良識、謙虚、慈悲。初めにくるのは「忠誠」だ…! 主君に忠誠を示さない騎士なんて…! いや、厳密にいうと今は騎士ではないのだが、剣術科の卒業生として、今まで学んできたことを無駄にはしたくなかった。無駄にしたら、マルイにも顔向けできない。
俺は思い切ってアクアミスリルを拾った。そして少し離れた位置から、思い切り振り切った。
「覚醒アクアソード!」
今度は水の分身が出た。そしてそれデーモンに襲い掛かり、デーモンの体は真っ二つに裂けたのだった。やったぜ!
俺はデーモンから、ギルバート15世を守り抜いた。しかし、まだ宮殿内には敵がいる。待ってろ! ぶった斬ってやるからな!
再び剣を手にした俺は意気揚々と部屋を飛び出し、宮殿内を走り回った。




