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ギルバート15世の要求

「あれは…!」



「おい、見ろパオロ、シュミート! 変なジジイが突っ立ってるぜ!」



「ブルーナ君、失礼ですぞ! あのお方は皇帝様にお仕えのカバジ・ジャコフです!」



 なるほど。シュミートはカバジ・ジャコフを知っているのか。この世界では一応顔と名前が知られている存在らしい。ただ、俺はこのジジイを許すことができない。

 ロイド・バルドナードの悪事の証拠を押さえるために、親父を助けることなく見殺しにしやがったのだ。



「パオロ・バレンシア様、皇上がお会いしたいそうです。後で宮殿までお越しいただくように」



 それだけを言うと、返事をする間も与えず、カバジ・ジャコフは跡形もなく姿を消した。瞬間移動だ。



「すっげーな! パオロ、皇帝様だってよ」


「ん、まあ…。シュミート、ブルーナ。先生や、仲間達の祈祷の準備をすまんが頼んだ。後から行く」



 2人は頷いた。さすがに相手が皇帝とあっては、文句を言うわけにもいかない。こうして俺は心の中で自分なりにみんなの供養をしながら、身支度を整えるため一旦寮に戻った。


 寮の自室には、ミョージャが待っていた。



「ミョージャ…!」


「パオロ様!」



 俺達2人はきつく抱きしめ合った。生きて帰ってこれたことを確認するかのように。

 ここで、ミョージャの「覚醒治癒能力」が発動した。俺は「魔物サバイバル」においてさほどダメージを負っていないが、それでもだいぶ元気になった。



「ミョージャ」



「はい、パオロ様」



「シュミートと、ブルーナの傷を治してやってくれ。俺は皇帝に謁見してくる」



「は、はい! わかりました」




 俺は寮を後にした。寮から1時間ほど馬車に揺られようやく宮殿に着くと、入口には既にカバジ・ジャコフが待っていた。



「パオロ・バレンシア様。ささ、こちらに」



 そしてあまりに大きく、宝石やら高そうな毛皮の絨毯やらで装飾された部屋に案内された。俺の代わりにカバジ・ジャコフがドアをノックした。するとドアはひとりでに開いた。奥のテーブルには、大柄で青い瞳の美しい、中年くらいの男性が座っていた。この男が、この男こそがギルバート15世。我が国の第15代皇帝だ。



「皇上。失礼します」



 礼儀作法がよくわからなかったので、どうしたらいいかわからず、緊張した。



「緊張しなくていいんだよ。ありのままの自分でいなさい。パオロ・バレンシア君」



「は、はい」


 俺はギルバート15世の目の前の椅子に腰掛けるように言われ、挙動不審に陥りながら、座った。



「さて、バレンシア君。今日の君の活躍は、モニターを通して観ていたよ。先生や仲間にはお気の毒だが、バレンシア君を含む御三方。卒業おめでとう」



「え、僕達はまだ2年です」



「先生がいないんだよ。だから皇帝の私が特別に認めてあげよう。君達は卒業だ。残りの2人にも伝えておきたまえ」



「はっ!」



 俺は頭を下げた。



「立派な騎士になれるよう、精進致します!」



「そのことなんだがね。バレンシア君」



「は、はい…!」



 ギルバート15世は、少し溜めてから次のように言った。



「代々騎士の家系であるバレンシア君にこんなことを言うのは心苦しいのだが」



「は、はい」




「君には騎士になるのを諦めてもらいたい」


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