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本当の意味での覚醒

 マルイもシュミートもブルーナも俺も、やったかと思い、悶え苦しむドラゴンを見つめていた。しかしドラゴンは、俺達の期待をいとも簡単に裏切った。



「グオォ!」



 雄叫びをあげると、すうっと不気味なほど静かに、そして目にも止まらぬスピードで、ドラゴンはマルイの元へ飛んできた。そして野球でバットを振るような要領で、尻尾を振り抜いた。振り抜いた尻尾の先がマルイの体に命中し、マルイは数メートル吹っ飛んだ。

 あの攻撃で数メートル吹っ飛んだだけで済むマルイも凄いが、それに何より、ドラゴンはわざと尻尾の先をぶつけ、殺さない程度の攻撃としてコントロールしたかのように見える。

 まるでドラゴンは、俺達を弄んでいるかのようだった。




「先生! 大丈夫ですか!」



「馬鹿野郎! 前を見とけ!」



 ドラゴンは、今度は辺り一帯に火を噴いた。「火」か。ではここは「水」の出番だ。


 俺はアクアミスリルを全身全力で振り回しながら、いくつもの水の分身をドラゴンに浴びせた。



「うおお! 覚醒アクアソード!」



「グオォ! グオォ…」



 よし、効いている。いくらドラゴンといえど、さすがにこれを食らってタダで済むはずがない。


 フッフッフ。


 調子に乗った俺が助走をつけ、再び思い切りアクアミスリルを振り回そうとした、その時だった。



スウゥ…!



 何かがとてつもない勢いで血を這う音が聞こえたか聞こえないかのうちに、鼓膜が破れるような爆発音がした。

 俺は一瞬怯んだ。気づくと、俺の目の前にはどういうわけかマルイが倒れていた。

 マルイ!? ドラゴンの何らかの特殊な攻撃を、マルイが俺を庇った、だと…!?



「絶対に、死ぬな…」



 マルイは息絶えた。お、おい。嘘だろ? マルイ? 先生?



「先生ー!」


 マルイはもう、起きなかった。俺が油断しているうちに、きっとドラゴンは光線を放ったのだ。そしてマルイが俺を守るために素早く俺の目の前に進み出て、身代わりとなった…。


 チキショウ。俺はいったい、何をやっているんだ。俺のせいで、マルイを死なせてしまった。チキショウ。チキショウ。チキショウ。


 しかし、まだドラゴンは活発に動いている。今はまだ、反省している場合ではない。スキを見せたら、シュミートやブルーナ、そして自分まで殺される。



「うおお!」



 俺はアクアミスリルを持って、走った。驚くべきことに、あんな重たい剣が軽く感じられ、足も速くなっている。



「パオロ君…!」



「パオロ、お前!」



 ん? なんだ? 走りながら自分の体を見ると、なんと「覚醒アクアソード」の水の分身の部分を、俺の体全体が纏っていることに気づいた。


 俺が近くを通ると、ドラゴンによって火の海になっている辺り一面は、すべて消化された。



 ドラゴンは焦ったように火や光線を、嵐のように俺に浴びせた。しかしどれも、俺の纏い水によって、掻き消された。



よし、いける!



 ドラゴンの顔の高さまで飛び上がることができた。凄い脚力だ。身体能力まで上がっているのか。



「本当の意味での、『覚醒アクアソード』!」



 アクアミスリルをドラゴンの目と目の間に突き刺す。すると、そこを起点に、ドラゴンの体に亀裂が入った。そして、一瞬にして、ドラゴンは粉々になった。



 ドラゴンがいた場所には、カバジ・ジャコフが綺麗な格好をして立っていた。

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