表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/77

ミョージャに嫌われた!?

 ミョージャのことを考えると、展開が読めず少し怖かったが、この問題もいずれ解決しなければならないことだ。俺は実家の屋敷に帰ってみることにした。


 屋敷に帰る知らせを送ってから帰ったのだが、いつもなら真っ先に出迎えてくれるはずのミョージャは、今回ばかりは出迎えてくれなかった。屋敷の中のどこかに点在する、とてつもない不穏な空気を察知せずにはいられなかった。


 一方でソーナとアロンゾは、俺をあたたかく迎えいれてくれた。



「晩ご飯は食べていく? それとも大丈夫?」



「食べていきなよ!」



「ごめんな、アロンゾ。食べていきたい用事はあるのだが、これから帰って修練をしなければならないからな」



 真っ赤な嘘である。本当はできる限りミョージャに会いたくないからだ。気まずいし、どんな態度を取ったらいいのかわからない。謝ればいいのかもわからなければ、事情を説明して弁解すればいいのかどうかもわからない。もっとも、そもそも俺に「あのこと」を弁解する資格なんかあるのかどうかも、わからない。



「えー、じゃあ兄ちゃん、どうして帰ってきたんだよ」



「こーら。アロンゾ。お兄さんにそんな言い方はないでしょう。家にある剣を見にきたのよね、パオロ?」



「はい、そうです。我がバレンシア家は代々皇帝に使える騎士の家系。立派なものがあるかと思いまして」



「あるわよ〜。でも、パオロ。貴方今、騎士って言ったわよね。騎士道の美徳をしっかり胸に刻んでいないと、渡せないわ」



「騎士道の美徳、ですか」



「あーら。忘れたの? 忠誠、真実、忍耐、寛容、良識、謙虚、慈悲の5つよ。貴方はちゃんと守れているかしら」



「神に誓って、守れております」



「わかったわ。剣庫の鍵はミョージャに渡しているから、ミョージャから受け取ってね。あら、そうだわ。ミョージャにも確認してみるといいわ。貴方が騎士の美徳を忘れてないか」



 ソーナは微笑んだ。俺にはそれが、悪魔の微笑みに見えた。ソーナは、すべて知っているのだ。知った上でのこの対応。恐ろしすぎません?

 

 俺はミョージャを探した。ミョージャは、廊下を掃除していた。俺の姿を見つけると、よそよそしそうに会釈をした。

 あー、なるほど。その感じできましたか。いっちばん難しい感じですね…。でも、とりあえず話しかけてみるしかない。



「ミョージャ。こないだは…」



「あ、はい。勝手に失礼してしまい、申し訳ございませんでした」



 ミョージャは当てこすりのように大袈裟に頭を下げて見せた。いやいや、やめようよ。そういうの。



「いや。あれはたまたま、誤解で」



 やばい。しどろもどろでこれじゃあ何を言っているか伝わらない。



「たまたま? 誇り高きバレンシア家の当主、パオロ・バレンシア様はたまたまで女性と抱き合ったりするのですか? あーいやらしい!」



 あー、言っちゃった。



「違う。俺はミョージャのことを1番に…」



「やめて! 言わないで!」



 ミョージャは汚いモノでも見るかのように、俺に険しい視線を送りつけながら、後退りをする。



「どうして、ちょっと」



 後退りをするミョージャの手を引こうとすると、思い切り拒絶された。



「やめて! 触らないで! けがらわしい!」



 ミョージャは顔を両手で覆いながら、掃除用具を全部ほっぽり投げて、逃げ出していった。


 俺には追うこともできなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ