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妨害工作

 俺と父ロベルトは、再びバルドナード邸に呼び出された。呼び出しの知らせがバレンシア家に舞い込んできた時、まさに屋敷中に戦慄が走った。




「パオロ、心配するな。言うべきことを言うだけだ」




 あのー、そのあなたが仰る「言うべきこと」を言ったら、俺達この世から抹消されちゃうんじゃ…。そこんとこ、父上殿のご見解をお聞かせ願いたいのですが。

 ごちゃごちゃ考えている俺をよそに、ロベルトの振る舞いは堂々としていた。まるで自分が負けることなんて有り得ないと、頭から信じきっているようだった。何か計算でもあるのだろうか。


 バルドナード邸に向かう途中の場所で、俺達は一言も口を利かなかった。やっぱり、俺だけでなくてロベルトも緊張しているようだ。

 俺達は馬車に乗り、東京で言うところの「一駅分」くらいの距離にある、目的地に向かっていた。

 バルドナード邸に近づいてきた頃、突然、馬車に物凄い衝撃が走り、俺とロベルトは少し吹っ飛んだ。




「な、なんだ!」




「父上殿! 前をごらんください!」




 馬車を破壊したのは、オーガだった。持っている鈍器のようなものを振り回して攻撃してきたらしい。

 す、すごい。オーガだ。魔物学の授業で習った。人のことを襲うんだよな。てか転生前から知ってるけど。



「父上殿! 大丈夫ですか!」




「なあに」




 ロベルトは余裕ちゃんちゃんだ。大丈夫か? オーガはどの世界でもかなり強いはず。ロベルトの強さは知らないが、少し心配だ。様子を見ながら、少しでも危なそうだったら助け船を出そう。もっとも、いくら無双主人公の俺でも、今の段階でオーガに勝てるかどうかは微妙なところだが…。



 オーガは何やらおぞましい声で叫び、持っている鈍器を振り回しながら、ロベルトに向かってきた。ヤバい!





ガツンッ!




 俺は、無意識のうちに唾をごくりと飲み込んだ。砂ぼこりが舞う。





「ウガー! ガー!」




「フフフ、飼いなされている割には、非力なオーガだ」




 ロベルトは片手でオーガの攻撃をガード、というかキャッチし、そのまま鈍器を奪ってフルスイングでぶん殴った。オーガは、地平線の彼方まで飛んでいった。




「お怪我はありませんか、父上殿」




「あ? ははは、あるわけないだろうが」




 す、すげ〜、父上殿。うん、すげえよ。これならロイド・バルドナードにも勝てる。って、そんな簡単じゃないか。





「もう近いし、歩いていくぞ」





「はい。でも父上殿、さっき飼いなされたオーガって…」


「何も喋るな!」




「は、はい!」



 何がなんだかわからず、俺はロベルトの後を追うのだった。




 バルドナード邸の前に着くと、小柄で、綺麗な格好の白髪の老人が待っていた。




「ようこそおいでくださいました。ロベルト・バレンシア様、パオロ・バレンシア様。わたくしカバジ・ジャコフがロイド・バルドナード様の御所へご案内致します」




 そう言って、「カバジ・ジャコフ」と名乗る男性は深くお辞儀をした。なんだか、不気味な雰囲気が漂っていた。

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