両親の目線
☆パオロの母親・ソーナ視点☆
私はパオロの母親として、いや、母親としてでなく客観的に判断したとしても、あの子がしたことは糾弾されるべきことではないと、自信を持って言えるわ。あれは学校のルール上避けられない死だった。だからこそ、パオロがあそこまで糾弾されたのは悲しかった。もちろん、本当に悪いことをしたのではないかという錯覚に陥ったりもして、また、ルイス君や残された婚約者のドーニャさんが気の毒に思えてきてしまって、涙が出てきた。
そんな中、私の夫、ロベルトさんがなさった立派な演説には心を打たれた。あの四面楚歌の中、自分の息子を力強く、堂々と守った。さすがはロベルトさんだわ。
あの人の立派な態度には感動したのだけど…。問題はロイド・バルドナード様がお話された件よ。やっぱり私の予感は的中した。これがきっかけできっと、パオロはこの家から離れてしまうんだわ。この家の人間では、なくなってしまうんだわ。
さっき、ロベルトさんとパオロが話し合っていたけど、私は気が気じゃない。まだ、ロベルトさんから話し合いの結果は聞いていない。ロベルトさんはあくまで、パオロの意思を尊重すると言ってたけれど、その場合、パオロはなんていうか…。
ロベルトさんの本家に対するコンプレックスのことを慮って、本家に行くなんていうんじゃないかしらあの子、優しいから。
☆パオロの父親・ロベルト目線☆
ついさっき、息子のパオロと話し合った。私は今、その時の感動の余韻に浸っている。
目頭が熱い。あいつの正直な気持ちが、私の気持ちと一致していたことは、何より嬉しかった。確かに我々バレンシア家は、分家である。私自身もたかだか分家の当主に過ぎん。それでもそれをコンプレックスに思ったことはない。私はバレンシア家に生まれ育ったことを心の底から誇りに思っている。分家だろうがなんだろうが、我がバレンシア家は、ナンバーワンだ。だから、いくらロイド・バルドナードが私達を潰そうとしても、負けるつもりは一切ない。バルドナード家に対し徹底的に抗戦し続け、最後は必ず、勝利を収めるつもりだ。我が息子、パオロを守るために。我が一家、バレンシアを守るために。
実をいうと、私は最近のパオロの目を見張るような頑張りには、度肝を抜かれている。何故ならば、私は他の人間達、ソーナですら知らない、パオロの本質を見抜いているからだ。パオロは、あんなに強くない。本来は繊細で、弱い人間だ。何度でもいうが、私はパオロの本質を知っている。何故ならば…。
まあとにかく、そんなパオロがここまでの奮闘を見せている。父親の私が、ロイド・バルドナードの前に屈服している場合ではない!




