緊急裁判
バルドナード邸には、分家の人間も含め親族が全員集結していた。分家の中の御三家には、バレンシア家を筆頭に、クロフォード家、ヘンスリー家がある。
バルドナード家のよくわからない豪華な会議室のような部屋で、俺はまるで裁判の被告人のような扱いを受けていた。
「殺人犯!」
「よくのこのこと出てきやがったな!」
「尊属殺人だろ!」
「そうだ、そうだ!」
「なんてことをしてくれたんだ!」
「パオロを追放しろ!」
「この人殺し!」
言われたい放題なんですけど、正直、つらいっす。母親のソーナは俯いている。なんだか申し訳ないな。もっとも、自分が悪いことをしたつもりはないんだけど。一方で親父、いや、ロベルトは堂々としている。とてつもない風格である。よく見ると、現実の親父よりもだいぶ若い。そりゃそうか。実際の親父、確か60過ぎだし。
そうこうしているうちにロベルトは口を開いた。
「お言葉ですが一族のみなさん、息子は確かに、ロイド・バルドナード様の御子息、ルイス君を殺めてしまいました。しかしながら、ギルバート帝国学院剣術科の必須科目である決闘のルールに従ったまでのことです。この件に関して息子を責めたてることは、学校を責めることとなり、ひいては皇帝様を責めることになります。みなさんはそのおつもりですか」
うわー。煽りますねー。まるで俺の本物の親父みたいだな。でも、いよいよ収集つかなくなってしまいましたけど、どうするんですかね。父上殿。
ロベルトの堂々たる発言によって、場は荒れた。そこここから土豪が飛び交う。母親であるソーナと、弟のアロンゾは遂に泣き出した。いくら野次を浴びても、ロベルトは微動だにせず、きっと前を見つめている。
「おい! ロベルト! 聞いているのか!」
「バレンシア家の歴史に泥を塗りたいようだな!」
「バレンシア家を一族から追い出せ!」
好き放題の言われよう。俺も遂に、現実世界でニートだった時と扱いが変わらなくなってしまうのか。そう思った時だった。荒れた場を収めたのは、バルドナード本家の当主、ロイド・バルドナードだった。
「貴様ら黙れい! 馬鹿なことを…!」
さっきまで騒がしかった会議室が、しんと静まり返る。凄い。さすがはバルドナード家の当主だ。しわがれた声に似合った貫禄のある体系に、黒い口髭。威厳を感じずにはいられない。
「パオロ君」
「は、はい!」
「さっきからここの大馬鹿者が、君を侮辱してすまない。ワシが一族を代表して謝るよ」
「いえ、とんでもございません!」
しかし、横槍が入った。
「しかし、ロイド様! この小僧はルイス君を殺してしまったのですよ!」
そこそこ偉い雰囲気の男性が叫ぶ。恐らく、本家の人間だろう。
「やかましい…!」
そう言って、ロイドは、その男に人差し指を向けた。するとその男は血を吐いて倒れた。
「いいか諸君。ワシに逆らう者は死んでもらう。今の大馬鹿者のようにな」
もう、誰も何も言えなくなった。
「ルイスは、馬鹿息子じゃった。散々罪を犯しては、ワシは火消しに奔走した。奴のことはもう忘れる」
おいおい、マジかよ。いくらルイスでも、自分の息子だろ? 鬼だ。この爺さん。
「そこでだ。パオロ・バレンシア君にいい話がある」
「な、なんでしょう」
「君にバルドナード本家の嫡子となってもらいたい。ワシは優秀な君が欲しい。まあ、養子ということだな」
「え、それはその…」
「うん? 何か勘違いしているようだね、パオロ・バレンシア、いや、パオロ・バルドナード」
そう言ってロイドは少し笑った。恐ろしい。に、逃げてえ〜。
「これは命令じゃ。逆らったらバレンシア家をこの世から殲滅させる」
ー続くー




