必殺技
「フッフッフ。勝負あったみたいだね」
おい、嘘だろ。キヤサーにカムストックそして今度は親友のキンカーまで…! 嫌だ! そんなの嫌だ!
「キンカー! 立てよ! 頼む、立ってくれ!」
キンカーはかろうじて立ち上がった。しかし、頭と身体を壁に強く打ちつけたせいで、立っているのがやっとみたいだった。恐らくあの小さな身体のうち、いくつか骨折しているに違いない。
「降参だ! 降参しろ、キンカー!」
「外部が指示出すのは禁止事項だべ! 次からは気をつけるんだべ」
審判であるマルイに鋭く制される。マルイ! いくら審判だからって、可愛い生徒だろ? いつも剣術を教えている生徒だろ? どうしたってそんなに冷静でいられるんだよ。
「へへ、マルイ先生の言う通りだよ、パオロ! 僕は絶対に降参なんかしない。あいつを絶対に殺す! キヤサーの仇を、僕が取ってみせる!」
「キンカー! お前ッ…!」
無理だ…!力の差がありすぎる…! このままじゃ逆に殺されちまう。頼む、降参してくれ。
「ん、降参しないのかな? キンカー君も案外タフなんだねえ。クックック」
「僕は…僕は、絶対に降参なんかしない! ルイス、お前を殺すまではな!」
そう言って、キンカーはルイスの方ぬ突進していった。しかし、がむしゃらに食らいつくだけで勝てるほど、このゲームは甘くない。
「エアロブラスト!」
キンカーが中央のルイスに辿り着く前に、さっきのデジャヴのようなことが起こった。キンカーは今度は苦しそうに悶えるばかりで、起き上がろうにも起き上がれない。
「もうやめて!」
叫んだのは、ドーニャだった。一瞬、決闘場全体の注目がドーニャに集まる。ルイスは少しだけちらっとドーニャを見やっただけで、何やら口元で呟いた後、またキンカーの方を向きなおした。おいおい、婚約者の声すら耳に入らないってのかよ。こいつ、狂ってる…!
「キンカー! 頼む! 降参してくれ!」
「パオロ! さっきも言ったべ! これ以上口を出すなら、パオロは失格とすんだべ!」
そうこうしているうちに、キンカーはふらふらになりながらもなんとか立ち上がった。立っているのがやっとみたいで、よろよろしている。
そしてこれまたさっきのデジャヴのように、ルイスの方に向かって突き進んで行った。
「学習能力がないのかな」
しかし、今度は少し近づいた時点で立ち止まり、剣を構えた。そんな位置から、いったいどうするつもりなんだ。
「ジェットストリーム!」
そう叫ぶと、キンカーの周りには竜巻が巻き起こった。そしてキンカーの体は宙に舞い上がり、物凄いスピードでルイスの元へ飛んでいった。
「エアロブラスト!」
風VS風だ。風の力と風の力が、思い切り激突した。
ー続くー




