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キンカーVSルイス

 今までのキンカーならば、ルイスの挑発にまんまと乗ってしまい、ルイスの術中にハマり、思いっきりぶちのめされていたに違いない。ただ、今のキンカーは違う。今のキンカーならやれる。そう思った。きっと、「決闘」における仲間の死、すなわちカムストックの死が、彼にとっては大きかったのだろう。あんなに間近で仲間が絶命する瞬間を見たとあっては、嫌でも気を引き締めざるをえない。

 キンカーは、静かに燃えていた。何も言わない。ただ前を見据えている。集中力を高めているようだ。そんなキンカーとは対照的なのが、ルイスだった。



「では、行って参ります。必ずや貴女に勝利を届けます。我が愛しのドーニャ」



 ドーニャはおびえきった様子で、それでも差し出されたルイスの手を握った。

 ルイスは自信に満ち溢れた様子だった。きっと奴は、自分がキンカーに負ける可能性などこれっぽっちもないと頭から信じ込んでいるんだろう。


 あー。ガチでムカつく。そんな奴は成敗されればいい。主人公の俺が許す。





「ルイス。早く位置に着くんだべ」




 マルイが急かしたってどこ吹く風。このクソ野郎は、ゆっくりと、まるでランウェイを歩くかのように、フィールドに向かった。外野から、特に外野の女性から黄色い歓声が聞こえる。ルイスはそれにいちいち礼をしながらゆっくりと歩く。早く歩けよタコ!



 きっと、これは心理戦だ。キンカーをイライラさせ、キンカーから自分らしさを奪おうとしている。姑息な奴。貴族らしいおおらかさはないのかよ、こいつには。って、あったら人殺しなんてやらねーか。



 ようやく所定の位置に着いたルイスは、悠然と剣を構えた。クソ、悔しいけど様になってやがる。イケメンだし。やはりギャラリーの女性から悲鳴。



 しかしながら嬉しいことがひとつだけある。それはルイスの揺さぶりに、キンカーが一切動じなかったということだ。よかった。ここで挑発に乗ったら、ルイスの思う壺だ。思い出したくはないが、さっきのカムストックの二の舞になってしまう。

 いいぞ、キンカー。頑張れ、キンカー!




「はじめ」




 決闘が始まった。遂にルイスのお手並みが拝見できる。しかしながらそんなことは俺にとってどうでもいいことだった。

 もし、ルイスが思ったよりもずっと強かったら、キンカーは殺されるかもしれない。そんなの、絶対に嫌だ。考えたくもない。だから俺はそんなことは考えずにひたすら祈り続けるしかない。




 ルイスはゆったりキンカーに近づく。キンカーは小刻みなステップで有利なポジションに入ろうと、隙を狙う。

 最初に動いたのは、キンカーだった。キンカーは自分の小柄を有効に活用し、長身のルイスの懐に入り込んだ。そして脇を締め、最短距離でルイスを斬りにかかった。女性達からはさっきまでとは意味の違う悲鳴が上がる。よし、やったか。


 ところがなんと、ルイスはそれ簡単に受け止めた。しかも片手で。今度はギャラリーから歓声が上がる。ミュートにしたい。




「なかなかやるね、キンカー君」




「く、くそ…!」




 驚いた。ルイスは笑っている。どれだけ馬鹿力なんだ。




「いいよ。もっと押してごらん。待ってあげるから」




 そう言ってルイスは片手でキンカーの攻撃を受け止めながら、口笛を吹き始めた。

 しかし、そこでまたキンカーはルイスの挑発に乗らない。腰を屈ませ、手を引っ込め、素早す別の角度から攻撃した。

 これはさすがにクリティカルヒットしたかと、誰もが思ったと思う。しかし、あんな素早い突きに対して、またしてもルイスは片手で対応した。

 マジかよこいつ。パワーもスピードもあんのかよ。




「待っててあげたのに。僕はズルする人は嫌いなんだ。キンカー君。もう、容赦はしないよ」




 ルイスは真面目な顔つきになった。そして、素早くキンカーから離れた。そして剣を構え、叫んだ。




「エアロブラスト!」




 一瞬、何が起こったのかわからなかった。が、キンカーはその一瞬の間に、約50メートル先の壁まで吹っ飛んだ。



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