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現実の親父!?

 部屋に入ると、そこには衝撃的な人物がいた。



「お、親父!?」



 部屋の中にいたのは、どこからどう見ても、つい先ほど俺を怒鳴り散らしていたクソ親父だった。おいおい嘘だろ。俺は悪い夢でも見ているのか。




「パオロ! なんだその無礼な口の利き方は! わがバレンシア家の名を汚す気か!」



え? ちょっと待って、どういうこと? 異世界続行って感じっすか? いや、待て待て。頭の整理が追いつかない。親父、何言ってんだ?



 バレンシア家? いやいや、俺も親父も、苗字長谷川じゃなかったでしたっけ、あれれ〜?


 まさか俺、親父と一緒に異世界転生したの? てことは親父はなんでキャラになりきっちゃってんの? 馬鹿なのかな? まあいいや。さっきも怒らせたことだし、ここはひとつ、乗ってやろう。




「申し訳ございません父上殿!」




 深々と頭を下げてみた。やれやれ、現実なら絶対こんなことしないっつーの。




「まあいい。パオロ、進路のことだが」

「だから俺は働かねえっつってんだろ! あ、やべ、いや、これはその…」



「おいパオロ。お前さっきからおかしいぞ。具合でも悪いんじゃないのか?」



「は、はい、少し熱がありまして…」




「そうか。では話は後でいい。今日はゆっくり休め。お前はバレンシア家の希望だからな。進路についての話だが、お前もゆっくり考えておけ」



「申し訳ございません。失礼致します」




 あっぶね。ついさっきのケンカのノリが出ちまった。でもなんとか乗り切れてよかった。


 ていうか異世界の親父、優しいな。現実だったらあんな対応あり得ない。ひょっとして、ただ見た目が同じってだけで、完全に別人物なのかな? 明らかに性格違いすぎるし。多分そうだろう。少しやりにくいが、その方が俺にとって都合がいい。

 後で改めて出直すことにするか。



 部屋に戻ると、さっきのメイドがいた。



「パオロ様、進路についての話はいかがなされましたか?」




「ふふふ、お前はメイドの立場でそんなことを聞くんだな」



「えっ! あ、申し訳ございません! パオロ様はいつも気さくにお話してくださるのでつい甘えてしまいました!」



 メイドはまた深々と頭を下げた。すげー罪悪感。そうか、パオロってキャラは結構優しいキャラなんだな。確かにさっき鏡みたらかなりのイケメンだったし、メイドに好かれるのもわかる気がする。



「ああ、いいさ。問題ない。進展はなかったよ」



「そうでございますか!」



 メイドの顔がぱあっと明るくなる。やっぱりすげえ可愛い。



「そういえばパオロ様、ご存知ですか?」



「何をだ」



「本家のお話でございます」



「ん、本家?」



「どうしましたか?」




 あれ、バレンシア家って何かの分家だったのか。ちょっとテンション下がるな。




「いや、なんでもない。続けろ」




「バルドナード本家の次世代当主と言われるルイス様が、メンデス公爵令嬢のドーニャ様と、婚約なさったらしいです! で、本日はこのバレンシアハウスにお目見えになってるみたいなんですよ!」





「ん、あ、そうなのか。おめでたいことだな」



 いや知らんし。バルドナードもルイスもメンデスもドーニャも、登場人物1人も知らんし。なんて返したらいいのよ。俺コミュ障だし。ここで陽キャなら、ちゃんとした返しが出来るのか。いやいや、流石に無理だろう。




「あのう、パオロ様? さっきからご様子がおかしいようですが、具合でも悪いのですか? お身体の調子が良くないようでしたら、少しお休みになった方が…」



 メイドめっちゃ優しいじゃん。俺はこの子と付き合いたいくらいだわ。まあいいや。今はそんなことを考えている場合ではない。



「いや、心配には及ばない。少し屋敷の中を散歩してくる。この屋敷は広いからな」



 冗談ぽく言うと、メイドはくすりと笑った。可愛すぎて、まともに目も見れねえや。



 逃げるように廊下に出ると、遠くの方から大名行列のような集団がこちらに向かって歩いてくるのに気づいた。医療ドラマの、院長回診みたいだ。



 だんだんその集団が近づいてくると、行列の中にやたら派手なドレスを着た女性と目があった。

 今までで見たどの女性よりも美しく、瞳も綺麗だった。俺はまともに彼女の顔を見れなかった。視線を少しずらすと、ふふっと彼女は微笑んだ。


 もしかして、この女性がメンデス家のドーニャか? 間違いない、今日お目見えななるとかメイドも言ってたし。


 やべ、部屋に戻ろう。俺はお辞儀だけして、慌てて自分の部屋に逃げ帰った。

 部屋にはまだ、メイドがいた。




「あれ、お早いですねパオロ様。お散歩はもうお済みですか?」



 メイドは意地悪そうに笑っている。



「ああ、ちょっとな」




 時間を置いた後、気を取り直して、俺は父の部屋に向かうことにした。


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