トーナメント
遂に決闘の日がやってきた。待ちに待った、という感じでもあり、憂鬱に感じていたイベントでもある。
朝から剣術科のクラスメイト達は緊張しきっている。って、それもそうか。なぜならば、「決闘」は必須科目であるばかりでなく、負けたら命まで失う危険性があるからだ。
決闘は学校から少し離れた「決闘場」という、なんていうか、「道場」の洋風バージョンのようなところでやるみたいだ。
場所はなんだっていい。それよりも大事なのは、ルール。俺は決闘についてのルールを、「相手に降参させるか殺す」かをすれば勝ち、ということしか聞いていない。まあ、直前に説明はされるだろう。ただ、命がかかっているというのになかなか不親切だな、という気はする。知ある程度システムがわかっていれば、対策の立てようもあったのだけれど。
今日は寮から学校には行かず、直接決闘場に向かった。決闘場には以前に一度見学にきたことがあったので、道順はしっかり覚えていた。ドキドキしながら目的地までの道のりを歩く。ただ、他のクラスメイトは誰もが、俺の100倍くらいは緊張してそうだった。どの顔も強張っており、とても話しかけられる雰囲気ではなかった。
決闘場に到着した。時間的には早い方だったとは思うが、俺が到着して数分もしないうちにほとんどのクラスメイト達が揃ったことは、俺的にはかなり印象的だった。そしてさらに印象的だったのが、集合時間前ギリギリまでルイスは来なかったことだ。
ルイスが着く頃には、もう決闘場の周りに見物客も集まってきていた。だから、ルイスがギラギラの服を着てトリマキと共に現れた時には、ギャラリーから歓声が上がった。
なんなんだこいつは。主人公気取りかよ。ったく、主人公はお前じゃなくて俺だっつーの。
ルイスとトリマキのモブキャラ達が到着したのは確認すると、ようやくマルイが口を開いた。
「遅えべ。俺早めに集まっとけって昨日行ったべ?」
「はい。マルイ先生。申し訳ございません」
ルイスは半笑いで一礼した。いけすかねえやつ。でもこのくだりに限った話でいえば、マルイが変すぎるのが悪いのかもしれない。その証拠に、観衆からもどっと笑いが起きている。
「じゃあ、説明を開始すんべ。まず、決闘はトーナメントでやることになっているべ。男子部門と女子部門で、ふたつあるべ。ほんで、ルールは簡単。対戦相手を降参させるか、絶命させた方が勝ちだべ。初戦敗退したやつは留年だから気をつけるんだべ。以上!」
マルイは機械のようにあくまで事務的にルール説明をする。方言を除いて。ていうか、トーナメントなのかよ、初めて知ったわ。初戦の相手が気になるな。もっとも、ルイスと対戦するまで負けるつもりはないが。
まあ、俺主人公だし。初戦で負けるわけないわな。
「こちらがトーナメント表だべ!」
マルイが叫ぶと、中央にスクリーンのようなものが出現した。マルイの魔法もなかなか凄いな。
俺の初戦の相手は、ルイスではなかった。クラスでもあんまり話したことのない奴だ。そういう奴の方がかえってやりやすくていい。
ルイスの相手は誰なのかなーっと。見つけた。おいおい、マジかよ。キンカーじゃん。
俺は隣にいたキンカーに激励の言葉をかけてやろうかと思ったがやめておいた。その必要はないと感じたからだ。
キンカーはきっとルイスの方を睨みつけていた。
「殺す…」
そう何度も呟いた。対するルイスは、不敵な笑みを浮かべながらキンカーを見つめていた。
そしてやがて、キンカーの方にゆっくりと近づいてきた。俺とキンカーは思わず後退りする。
「キンカー君、お手柔らかに頼むよ」
「殺す…殺す」
キンカーは、それしか言わない。ルイスは大袈裟に手を上げトリマキ達と一緒に馬鹿にしたようにキンカーを笑いながら、去っていった。
「あの野郎、絶対殺す」
「キンカー、気をつけろよ。委員長だったキヤサーも、かなりの腕だった。それを殺すということは、奴も相当たる腕前だということだからな」
俺からのアドバイスは、キンカーの耳に一切、聞こえていないようだった。
ー続くー
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