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ミョージャ

 ルイス・バルドナードは狂った極悪人だ!

  

それに、ルイスの罪を自らの権力を使って揉み消したバルドナード家も許せない。そんな極悪な意の分家ってだけで凄い嫌な気分、恥ずかしい気分だよ本当に…。ていうか、本来ならば俺なんつーのはバルドナード家にもバレンシア家にも何の思い入れもないはずの40のニートなんだけど…。




 でも、今回の一件でわかったのは、この世界の主人公はルイスではないということだ。いくらなんでも主人公があんな邪悪な笑い方するアニメはそうそうないだろう。



 長年に渡ってアニメやゲームに触れてきた俺は、ひとつ断言できることがある。それは、この世界の主人公のは間違いなく俺。つまり、パオロ・バレンシアであるということだ。ロベルト・バレンシアの顔が現実の親父そっくりなのは解明不能です、すみません、はい。


 だから、俺は闘わなくてはならない。ルイスを、3日後の決闘で、倒さなければならない。殺したっていいと思う。俺が負けることはないと思う。ただ、俺はいいさ。主人公だから。でも、俺には守るべきものがある。それは、キンカーをはじめとする、友達だ。


 仲間をもうこれ以上、失いたくない。人生で初めてできた仲間だから、尚更だ。


 だから、一応念の為、俺は実家に手紙を送っておいた。もうそろそろ届いてもいい頃だと思うんだけれど…。



ガチャ!



「パオロ様! ちわー!」



「うわびっくりした! いきなり開けるなよ! てか、蕎麦屋の出前じゃねえんだからさ!」



「え? ソバ?」



「なんでもない!」



 そう。俺はメイドを呼んだ。「覚醒治癒能力」を持つメイドがいれば、いざという時に役立つかもしれない。


 俺が手紙でロベルトに頼んで、寮長にも特別宿泊許可出してもらって、部屋を用意してもらっておいた。

 決闘当日は一般見物客の出入り自由だから、メイドにもいてもらって、いざという時には治癒をしてもらおうと思う。




「パオロ様、 おそば食べたいんですか?」



「へ?」



「いいですね! 私もおそば食べたいです! おそば大好きなんですよー私! ぜひぜひご馳走してください!」



 驚いた。マルイといい、マルイの方言といい、蕎麦といい、この世界って日本にあるもの多すぎるだろ。ってか、メイド図々しすぎ。こいつ本当にメイドかってくらいの軽さだよ、まったく。



 俺はメイドと一緒に、寮から歩いて10分ほどのところにある蕎麦屋に入った。




「うわー! おそば食べられるなんて、私、何年ぶりなんですかね!」




「そんなこと知るか! ていうか恥ずかしいから大きな声でそういうこと言うのやめろよな」



「えー、何が恥ずかしいんですか? パオロ様、恥ずかしがり屋さんなんですね♪」



「っさいわ!」



 俺が嗜めると、メイドは口を窄めた。やべ、可愛すぎ。



 やがて、蕎麦が運ばれてくると、メイドは嬉しそうな顔をして無邪気に蕎麦を啜った。




「そういえばさ、メイド」




「はい? なんでしょ」




 メイドはもごもごしながら答える。




「メイド、いや、ミョージャ」





「はっ! ごほんごほん!」




「あ、悪い。大丈夫か?」




 俺がいきなり予めキンカーに聞いてもらっていた、メイドの本名を言ったせいだ。それは驚くだろう。いきなり名前で呼んだら。

 むせるのも仕方ない。




「パオロ様」



「いや、だからすまない」



「違います!」



 メイド、いや、ミョージャは、こちらを向き直り、俺の顔をしっかりと見つめて言った。



「嬉しいです。ありがとうございます」



 この時のミョージャの顔は、俺は一生忘れない。この世界、いや、現実世界を含めた、どの世界のどんなものよりも輝いていた。








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