表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/77

☆母親視点☆

☆パオロの母親・ソーナ視点☆





 パオロは私のもとを巣立っていった。立派な騎士になるとか言っていたけれど、心配だわ。ご飯は毎日ちゃんと食べているかしら。勉強にはついていけているかしら。お友達とはうまくやっていけているかしら。

 いじめられたりしていたら心配だわ。あの子はロベルトさんに似て繊細だから。


 って、心配しすぎよね。あの子ならきっと大丈夫。信じるわ。信じるといっても、メイドのミョージャにたびたび様子を見に行かせてはいるんだけれど…。それはちゃんと信じていることになるのかしら。

 ミョージャはミョージャでお転婆娘だから、一緒になって遊んでしまっているかもしれないわね。

 とってもいい娘なんだけれど…。あの娘の将来のことも考えてやらなきゃいけないわ。家族同然、いや、家族だもの。


 思えば、あの子は不思議な子だったわ。まるで神様に守っていただいてるかと思ってしまうくらい、運のいい子だった。

 木登り中に頭から落っこちても、奇跡的に無傷だったこともあったっけ。

 思い出すと、色々な思い出が昨日のように頭に浮かんでくるわ。

 もちろんあの子の良さは運だけではない。あの子は誇り高きバレンシア家の嫡子として、幼い頃から周囲の大人からのプレッシャーに晒されてきた。それでもあの子は負けなかった。神童と囃されても、いつの時もみんなの期待以上の頑張りを見せてきた。あんな努力家は世界中探してもあの子しかいないと、自信を持って言える。

 そうそう。あと、優しさもあの子の魅力ね。弟のアロンゾにいつも優しくして、慕われていたわ。お菓子を貰ってもすべてアロンゾにあげて自分は我慢する。アロンゾはそんな優しいお兄さんが大好きなの。



 私は思う。あの子はおそらく、いや、絶対に、もう2度と私たちの元へは戻ってこない。そんな気がするの。



 ロベルトさんが昔から、自分が分家の人間であることにコンプレックスを抱いているのは、気づいています。あの人は絶対に口には出さないけれど、私にはわかります。20年も寄り添った仲ですから。


 私達の自慢の息子は2人とも、立派にすくすく育っている。ロベルトさんは2人のうちどちらかを、というかパオロを、バルドナード本家の養子にしてあげたいと考えている気がするわ。もちろん、そんな具体的なことは話したことがないけれど…。


 そして、さらにはメンデス公爵家のお嬢様、ドーニャ様と婚約させたいんだわ。きっとそうよ。そうに違いない。勝手な妄想みたいに聞こえるかもしれないけれど、私の予想は当たるんだから。

 でももしそうなったら、バルドナード家次期、ルイス様のお立場がなくなってしまう。バルドナード家とバレンシア家が対立するなんてことになったら、私達なんて、簡単に潰されてしまうわ。


 というよりそもそもの問題として、私は社会的な理由ではなく、気持ちの問題では、ロベルトさんの計画には反対するつもりよ。もし考えを打ち明けられたらね。


 愛する我が子を手離す母親が、どこにいるものですか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ