☆母親視点☆
☆パオロの母親・ソーナ視点☆
パオロは私のもとを巣立っていった。立派な騎士になるとか言っていたけれど、心配だわ。ご飯は毎日ちゃんと食べているかしら。勉強にはついていけているかしら。お友達とはうまくやっていけているかしら。
いじめられたりしていたら心配だわ。あの子はロベルトさんに似て繊細だから。
って、心配しすぎよね。あの子ならきっと大丈夫。信じるわ。信じるといっても、メイドのミョージャにたびたび様子を見に行かせてはいるんだけれど…。それはちゃんと信じていることになるのかしら。
ミョージャはミョージャでお転婆娘だから、一緒になって遊んでしまっているかもしれないわね。
とってもいい娘なんだけれど…。あの娘の将来のことも考えてやらなきゃいけないわ。家族同然、いや、家族だもの。
思えば、あの子は不思議な子だったわ。まるで神様に守っていただいてるかと思ってしまうくらい、運のいい子だった。
木登り中に頭から落っこちても、奇跡的に無傷だったこともあったっけ。
思い出すと、色々な思い出が昨日のように頭に浮かんでくるわ。
もちろんあの子の良さは運だけではない。あの子は誇り高きバレンシア家の嫡子として、幼い頃から周囲の大人からのプレッシャーに晒されてきた。それでもあの子は負けなかった。神童と囃されても、いつの時もみんなの期待以上の頑張りを見せてきた。あんな努力家は世界中探してもあの子しかいないと、自信を持って言える。
そうそう。あと、優しさもあの子の魅力ね。弟のアロンゾにいつも優しくして、慕われていたわ。お菓子を貰ってもすべてアロンゾにあげて自分は我慢する。アロンゾはそんな優しいお兄さんが大好きなの。
私は思う。あの子はおそらく、いや、絶対に、もう2度と私たちの元へは戻ってこない。そんな気がするの。
ロベルトさんが昔から、自分が分家の人間であることにコンプレックスを抱いているのは、気づいています。あの人は絶対に口には出さないけれど、私にはわかります。20年も寄り添った仲ですから。
私達の自慢の息子は2人とも、立派にすくすく育っている。ロベルトさんは2人のうちどちらかを、というかパオロを、バルドナード本家の養子にしてあげたいと考えている気がするわ。もちろん、そんな具体的なことは話したことがないけれど…。
そして、さらにはメンデス公爵家のお嬢様、ドーニャ様と婚約させたいんだわ。きっとそうよ。そうに違いない。勝手な妄想みたいに聞こえるかもしれないけれど、私の予想は当たるんだから。
でももしそうなったら、バルドナード家次期、ルイス様のお立場がなくなってしまう。バルドナード家とバレンシア家が対立するなんてことになったら、私達なんて、簡単に潰されてしまうわ。
というよりそもそもの問題として、私は社会的な理由ではなく、気持ちの問題では、ロベルトさんの計画には反対するつもりよ。もし考えを打ち明けられたらね。
愛する我が子を手離す母親が、どこにいるものですか。




