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死にたがり  作者: 紫雪ラミ
2/2

未知との遭遇

彼だった肉塊の背後にギリシャ数字が刻まれた時計が何処からとも無く現れ、通常では考えられない速度で針が巻き戻る、それに連れて彼の肉体が落下によって潰れた直前の姿まで巻き戻る。


彼は起き上がり重いため息を吐いた。

「やっぱり死ねなかった……。」

そんな抑揚の無い声で天を仰ぎ呟いた。


「んっ?」

そして、彼は背後を振り向いて、とある違和感に気づいた。

彼の視界に映ったその空間だけ蝋燭の炎のように揺ら揺らと空間が歪んで見えたのだから。


「そこに誰かいるのですか?。」

その歪んでいる空間を訝しげに視線を飛ばしながら彼は問いかける。


「あら、良く分かったわね。」


そんな、声音の高い返答と同時にその歪んだ空間が

開き少し長身の女性が現れた


「貴方は?」

その歪んだ空間から現れた女性に問いかける。

「私の名前はウタウスと言うわ。」


「単刀直入に言うわ、貴方を私たちの世界に招待しに来たわ。」


「その私達の世界とは異世界みたいな物ですか?」


「当たらずとも遠からずよ。」

彼女はそんな意味深な返答をするが……。


「そうですか」

彼女は彼の言葉の続きを待つが……

「…………」

彼は何も喋らず沈黙したままだった。


その様子に少し彼女は困惑してしまう、それもそうだ何か質問をしてくると思い黙っていたが、当の本人が何も話さないのだから。


彼女はもしや……と思い彼に対して言葉を紡ぐ


「もしかして……今の話を信じていないのかしら?。」


「そうではないです。」

彼はキッパリと彼女のその発言を否定した。


「では、何故何も言わないのかしら?」


そうだ、嘘だと思うから何も話さないのかと思っていたが、今の彼の発言からしてどうやら違うらしい、だから彼女は彼は今の発言の真意を問い正したかった。

「どうでも良いからです。」


「はっ?」

彼女は彼の予想外の発言につい素っ頓狂な声をあげてしまった。


「僕は、自分が死ねれば、それ以外どうでもいいんです。」


彼女は、そんな彼の発言に驚愕する。

今まで、色んな人を招待してきたが、「本当か?」

と疑ったり、「やった-」と喜んだり、多種多様な反応を見てきたが、


(どうでもいい。)


そんな発言をした人は彼だけだったのだから。


「面白いわね、貴方。」

(あの人が招くように指示した理由が少しだけ分かった気がするわ)


心中で彼を招くように指示した彼女の事を思い出しながら笑みを浮かべる。


「貴方が自殺する事以外には興味も関心も示さないのは事前に調べていて分かってはいたけど……。」


「異世界に来てみない?と言われて(どうでもいい)何て返答が来るとは……、本当に興味も関心もないようね。」


その発言をされても心底どうでもよさそうな事が彼の目をみて分かった。


「まあ良いわ。」

「改めて自己紹介させてもらうわ、

私の名前はウタウス、貴方と同じ能力を持った人間よ、改めて、私達の世界に来るつもりはあるしら?」


そんな彼女の言葉に溜息吐き出すように彼は返答する

「……好きにしてくれ。」


「一応警告しておくわ、一度向こう側へ行ったら戻れないわよ?。」


「この世界に僕の居場所は無いですから……。」


「……そう。」


彼女は片手を大きく上げ、何も無い空間から全く別の世界を確認することができる。


「今から貴方の行く世界について説明するわ、先に言っておくきど貴方みたいに能力を持った人間達しかいないわ。」


「そうですか」


「他にも違う事は多々あるけど……。」


「貴方は興味なさそうだから省かせてもらうわ。」


「………。」


「そして……、これが貴方にとって一番重要だと思うけど……、あちら側に行けば、貴方の願い……、叶えられるかもしれないわよ。」


「………。」


彼は俯いて何も話さない……。

「あれ?、無反応?。」


「本当に……。」


「えっ…?。」


「本当に僕を殺せる存在がいるんだろうな!!。」


彼女は一瞬、目の前にいる彼が同一人物か疑った……。

特別髪を切ったり、姿が変わったわけでも無い‥.、

だが、彼は先程までと打って変わって笑顔だった、

だがその目には光が無く、その笑みは……、その姿は、

"狂気“その物だった


「………。」


その姿に少しだけ固まってしまったが、流石、色んな人を見てきた人間なだけあるか、すぐにいつもの平然を取り戻した。


「だからこうして誘っているのよ。」


「…そう、か。」


彼がその言葉を吐いた瞬間、先程までの狂気的な笑みが収まり、少しずつ落ち着きを取り戻した。


「……はあ。」


彼女に対して心底申し訳なさそうに溜息を吐いた。


「すみません…、取り乱して。」

そんな彼の姿を見て。


(面白い…。)


(今まで色んな人間を見てきたけど…、一番面白いわ

生に執着せず、死に執着する人間…。)


彼女は一人心の中で呟いた。


「やっぱり面白いわね、貴方」

満面の笑みで彼の謝罪に返答する。


「は、はぁ…。」


彼はその返答に戸惑ってしまう、

そりゃそうだろう

謝罪したら、

「貴方面白いわね」

何て返答されたら誰だって困ることだろう。


「それじゃ、ここを通ればあちら側に着くわ。」


「それでは……。」


「さようなら、次があれば良いわね。」


「次がない事を祈っておきます。」


そうして、新たな世界に一人の少年が招かれた。





































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