第7話 お許しを得ました。
さらに1年が経過。
屋敷の訓練場にて、バラバラに砕け散る氷の欠片……。
氷の大魔法が繰り出されたその残滓、冷気と電撃をはらんだ空気が流れる。
その中心に、俺とシルヴィアがいた。
俺は身体に電撃を纏い、臨戦体制のまま尋ねる。
「もう良いよな……シルヴィア、なぁ?」
「……」
「ねぇ、マジで死ぬ、本当に死ぬよ俺」
「……」
「何で何も言わないの、ねぇ」
シルヴィアは構えた杖を戻すと、先端の水晶がバリン、と割れた。
「私に一瞬でも本気を出させるとは……合格です、アスタ様」
え、なに今の間は。
めちゃくちゃ恐かったんだが。
まぁいいや、ともかくこれで……。
「――冒険者ギルドに行けるぞぉぉぉ!!」
俺はバタンと寝転んだ。
そう、これは俺がギルドに行くほどの実力を付けたかどうかの確認の試験だった。
アスフロは剣と魔法の異世界が舞台のゲーム、つまりはモンスターもいる。
少しずつ実力も付いてきた今、ぜひこの目で見たいと思うのが男の子だ。
それに……俺が私的に使えるお金も欲しい。
実際のアスフロでも、ギルドは金策用の施設だった。
ついこの前、家の金で最高品質のポーションを買っちゃったし(エミリアにあげたやつ)、小遣いくらいは自分で稼ぎたい。
『――ギルドに行くなら、このシルヴィアを退けてからにしなさい!!』
だが……そこに立ちはだかったのがシルヴィアだ。
彼女の目から見るに、俺はまだ少し実力が足りないらしい。
熱いディスカッションを繰り広げた結果、決闘で彼女に認められれば、ギルドの出入りを許してもらえることとなった。
そして2ヶ月の間、鍛錬後に毎日決闘を申し込んで初の白星……これで1勝59敗となった。
……だってめちゃくちゃ強いんだもん、鬼だよ鬼!
まともに勝負してくれたのなんてここ1週間くらいだ。
最初は俺の攻撃なんてこっち向きもせず止めたし、絶望だったわ。
どんっ!!
「ぐえ!?」
「良かったですうう、アスタおぼっちゃまぁぁぁ!!」
離れたところで見てたエミリアが抱きついてくる。
く、苦しい、巨乳で窒息死してしまう。
凶器を持っていることを自覚してほしい。
「エミリア、離れてくれ、一応ケガもしてんだよ俺……」
「し、失礼しましたぁ!」
エミリアは喉を整えると、詠唱をする。
「回復!!」
ぽわん、と柔らかな光が俺を包み込むと、傷が見る見るうちに消えていく。
エミリアは低級の回復魔法なら使える。
お陰でこうしてケガをしても治してもらえる。
俺が日々の鍛錬を続けられるのは、エミリアの尽力があるからと言っても過言ではない。
「ありがとう、助かったわ」
「アスタ様の専属メイドとして当然でありますから!」
エミリアは汗を拭うと、シルヴィアが近付いてくる。
「おめでとうございますアスタ様、私も嬉しく思います」
「おかげさまで」
「ふふ、そんなジト目で見ないで下さいまし、これは愛の鞭でございます」
「俺の首から下を氷漬けにした日も愛の鞭ってか?」
「はて、どうでしょう?」
シルヴィアはとぼけた顔をする。
いや分かるけどね、公爵家の子だから中途半端な指導は出来ないのは分かるけども。
完全に楽しんでましたよね……貴女?
Sランク魔導師の余裕を感じましたわ。
いつか本気で倒せるようになってやる。
「シルヴィアさん、どうかもうアスタおぼっちゃまに厳しい指導はおやめ下さい。私でも治せない傷を負ってからでは遅いんです!」
「エミリアさん、私は家庭教師を任された以上、己の責務は果たすつもりです。全ては……アスタ様の成長のためです」
「物は言いようです、ぼっちゃまは……この専属メイドのエミリアが守ります!」
「ご心配なく、その役目は家庭教師のシルヴィアが務めますので」
エミリアとシルヴィア、両者の目からバチバチと火花が散る。
アメとムチ、2人はそれぞれを担う存在と言える。
……どっちも極端すぎるけど。
今日はめっちゃ疲れたし、ギルドは行くのは明日にしよう。
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