第4話 メイド、一生付き従うと決める(エミリアside)
「あんなアスタおぼっちゃまは初めてでした……」
以前はメイドにセクハラ三昧のアスタ様、お尻を触られなかった日はないほどです。
そんな日々が続き、次々メイドが辞めていく中、私だけは残りました。
全ては妹の病気を治す資金を貯めるため、永遠の別れにならないよう、家族とは暫しの別れをしていたのです。
公爵家のメイドは給料が高く、クロフォード家には特別な資格がいらなかったのが選んだ理由。
だからドジばかりの私でも採用してくださいました。
でも正直疲れていました。
体力以上に、精神が事切れそうでした。
ですが……この前。
『――これからの俺は、今までと違うと思え』
アスタ様が頭を打ってから、人が変わったかのように優しくなられたのです。
ただのしがない私のようなメイドに、お礼を言って下さるようになり、更には魔法のお勉強を始めるとまで宣言されました。
驚くことはそれだけではありません。
『妹さん、身体の調子はどう?』
何と……私の妹が病気だと見抜いてしまったです。
少なくとも屋敷内の誰にも話していない内情、アスタ様は誤魔化していましたが、私には全て合点が行きました。
クロフォード公爵家は魔道具の製造、及び流通で財を成した人物。
先見の明と洞察力に優れたお父上を持つアスタ様には、何もかもお見通しだったと言うわけです。
自分が恥ずかしい、家族のことを隠して働いていた愚かな私を許してください。
ですが、アスタ様は何も咎めることなくポーションをお与え下さいました。
「本当に、良かったのでしょうか……?」
魔法袋に詰められた高品質のポーション。特殊な配合がされており、万病に効くとされています。
値段は……とてもじゃありませんが、一生稼いでも払い切れる代物ではなかったです。
アスタ様がお譲りしてなければ、永遠に手に入りませんでした。
そんな私、エミリアはというと……この度お休みを頂いたのです!
日頃仕事を頑張っているおかげだと、アスタ様が馬車まで手配してくださりました。
農道をぱかぱか走ること丸一日、エスト村の畑に囲まれた我が家に到着しました。
「――おお、エミリアや、大変だよ、ストラの様子が!!」
「そんな、ストラ!!」
ストラは妹の名前、お母さんの青ざめる顔が全てを物語りました。
ベッドに横たわるストラ、呼吸は粗く、腕には薔薇のような痣が浮かんでました。
――死薔薇病、全身を茨の鞭で締め付けられるような痛みを伴う病気。
衣服で見えない部分にも、薔薇の痣が及んでるのです。
ストラは数年前からずっとこの病に苦しめられてました。
育ち盛りなのに、この病のせいで自由に遊べなかったのです。
世の中は不公平だと感じました。
妹は……ストラは……幸せになる権利があります。
「うう……お姉ちゃん……?」
「ストラ、しっかりして! 私だよ、お姉ちゃんだよ!」
「……よかった、最期に、お姉ちゃんに会えて、ドジだから、心配だったんだよ……元気そうでよかったよ……」
「!?」
「ありがとね、こんな私のお姉ちゃんでいてくれて、お母さんも、本当にありがとう」
「ストラ、うう……ストラぁぁ!!」
耐えきれずに泣いてしまうお母さん。
だけど、
今の私にはこれがある……!
「最期に何てさせない……ストラ、これ飲んで!」
私はポーションを取り出し、ポーションをゆっくりストラに飲ませました。
するとストラの身体がぽわっ、と光り、腕の薔薇の痣がスルスルと引いてくのです。
ストラは目をぱちくりさせると、ベッドからゆっくり起き上がりました。
「……あれ、痛みが、楽になった」
「ほ、本当かい、ストラ……!」
「うん! お姉ちゃんのポーション飲んだら元気になったよ!」
「良かった、良かった、ストラぁぁぁ!!」
私とお母さんは思わずストラを抱きしめてました。
わんわん泣き、家族が元気になった喜びを噛み締めました。
その夜、ストラを寝かしつけたお母さんは、胸を撫で下ろしながら言いました。
「エミリア、お前はお前でずっと心配してたんだよ。あのクロフォード公爵家で働くって言い出したときはどうしようかと思ったよ」
そう、一般的なクロフォード公爵家の評判は最悪です。
ご子息のアスタおぼっちゃまの行いが、そのまま家の悪評に繋がっているのです。
ですが。
「私はそうは思わないよ、お母さん」
アスタおぼっちゃまは、変わろうとしている。
現にそのおかげで、ストラの命は救われた。
それはきっと良い方向に、周りすらも巻き込みながら変わっていくのだと。
「私は……あの人に付いていきたい」
真に付いていていくべき人を……見つけました。
あの人の見る景色を、隣で見てみたい。
お母さん、ストラ、ごめんね。
もう少しだけ、我儘をさせて下さい。
「――アスタおぼっちゃま、この不肖エミリアが、永遠に貴方様を支えていきます……!」
流れ星を見つめながら、そう心に決めたのでした。
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