第14話 その力の使い道(ミレイユside)
「長旅ご苦労、ミレイユ」
社交界を終え、辺境の屋敷に戻った私はすぐに父上の元へ向かいました。
室内の稽古場で剣を振り、修練に精を出す父、ソーサラー男爵。
こちらの方は一切見ようとしません。
「ありがとうございます、父上」
「いいか、お前は上流貴族との繋がりを作ることに専念しろ……ソーサラー男爵家の品を下げるようなことはないだろうな?」
「大丈夫です」
「ふん、才のないお前を家に住まわせているんだ。このソーサラー家の役に立てることを感謝しろ」
「……はい」
ソーサラー男爵家は、先祖が凶悪モンスターの討伐によって爵位を得た、元は平民の家系。
しかしそれから長年に渡り、これといった成果を上げられていない。
父上は焦っているんです。
ソーサラーの名が歴史から消えるのを。
本来、顔を出さなければならない社交界にも『時間の無駄』だと言って、私一人に任せるほど、目先の手柄を何より優先します。
「お前みたいな弱者と違って、兄たちは日々武力でソーサラー家に尽力しているというのに……この恥晒しが」
父上は鼻を鳴らしながら言いました。
私には数人の兄がいます。
あの人たちは……父の生き写しと言ってもいい。
武勲を立てるため、国の前線でその剣を振るっています。
そして、私は……そんなソーサラー家の落ちこぼれ。
何事においても兄たちと比べられ、家にいる時間は苦痛でした。
今みたいな扱いは日常茶飯事です。
「もういい、下がれ」
「……失礼します」
私は稽古場を後にし、自室に戻りました。
いつもは嫌でも孤独を感じる、寂しい空間。
だけど、今日は違った。
私は立て掛けられた剣を握り、魔法を込める。
「魔力弾」
ぽわぁ、と剣身が光輝き、軽く振り抜く。
ズシャッッッ!!
剣身から魔力の斬撃が放たれ、壁に直撃する。
深く刻まれた斬傷、架けられた絵画は真っ二つに割れた。
「……やっぱりすごい」
あの日、アスタ様、いやアスタくんが教えてくれたこの力は。
どうやら私は、剣に属性を付与したり、剣を媒体にすることで強化された魔法を放てるのだ。
今のは魔力弾を剣に込め、斬撃として発動させたのだ。
「知らなかった……私にこんな特別な力があるなんて」
この力は、まだ誰にも言ってない。
父上に伝えてしまえば、ソーサラー家の繁栄に利用するに違いない。
それにしても……何故アスタくんはこの力を見抜いたんだろう。
きっと彼には、周りには見えない物が見えているのだ。
「アスタくん……私の救世主」
なら、この力は私一人の力ではない。
アスタくん、いやクロフォード公爵家のために使わねばならない。
「それには……!」
王都の学園に合格することが最優先だ。
国内の貴族ならば、誰もがそこに入学する。
アスタくんだって例外じゃないはず、そこできっと再会出来る。
属性魔力という、選ばれた力を持つアスタくん、並び立つには相応しい力が必要だ。
ばしっ、と私は自分の頬を叩いた。
もう落ちこぼれとは言わせない。
弱い自分とは、お別れだ!
「――頑張るぞ、私!」
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