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第11話 いざ社交界へ!

 数日後、俺は馬車で社交界の行われる屋敷へ向かっていた。

 

「とてもお似合いです、アスタおぼっちゃま〜」


 スーツを着た俺を褒めちぎるエミリア。

 そんな彼女も、今は普段のメイド服ではなくドレスを纏っている。

 隣のシルヴィアが口を開く。


「アスタ様、先日のライセンスカードは忘れずにお持ちですか?」


「ああ」


 俺はミレイユのライセンスカードを見せる。

 本来、今後の大事なイベントのキッカケになるこのアイテム。

 ミリシャ村で落としたこのカードを、主人公が届けにいくことで、メインヒロインのミレイユとの信頼を深める……はずだったんだけどなぁ。


「何でこんなことに……」


 簡単に言えば、主人公ムーブを俺がすることになったわけ。 

 これでは主人公とミレイユは学園に入学してようやく初めて出会うことになる。


 とんだシナリオブレイクだ。

 

「ですが良かったです。ライセンスカードはその人間の冒険者としての身分を表す物、再発行にも時間がかかりますからね」


「落としたのがあのタイミングだったのが幸運でしたねぇ、パーティー中にお渡し出来ますし、ね、おぼっちゃま!」


「はは……そだな」


 事情を知らない2人をよそに、俺は早くも乱れたシナリオに肩を落としていた。

 もし、俺が主人公の代わりをすることになったらノーサンキュー。

 何故なら、ラスボスには主人公の力(・・・・・)でしか倒せないようになっている。

 俺が戦っても負け確だし、主人公には勝って貰うべくある程度強くなって貰いたい。

 そのために正しいシナリオを進む必要があるのだ、俺が死ぬこと以外は。


「でも、私たちもパーティーに参加してよかったのですかおぼっちゃま?」


「今回父上は仕事で来られないし、俺1人だけだと箔がないだろ?」


 何だかんだ言って、クロフォード家は公爵を賜っている。

 今回、父が不在である以上俺が代表。

 そして俺が転生してから、初の上流貴族との交流だ。

 まずは両手に花を持ち、ナメられないようにする。

 みてくれだって大事なのだ。


「家の評判を下げずに、このカードも渡せればいいか」


 そんなことを考えてると、荘厳な白亜の屋敷に到着。

 王都で行われるこのパーティーは、各方面から貴族が集まっている。

 

 馬車から降り、門番に招待状を見せると丁寧に一礼をして通してくれた。


「うお……!」


 煌びやかなシャンデリア、彩りに溢れた料理……。

 国中の貴族が集結してるだけあって、気合を感じる。

 

「はわわ、すごいですねぇ!」


「エミリアさん、騒いでいると田舎者と思われますよ」


「す、すみませぇん……」


 シルヴィアに諭され、エミリアはしょぼくれる。

 まぁ気持ちは分かる。

 設定では、国が社交界などの祭事用に建てた屋敷のはずだ。

 

「おや、もしやクロフォード公爵家のご子息様ですかな? 私、ジャンダルム伯爵家の者で御座います」


 すると、恰幅の良い紳士姿の男性が声をかけてきた。

 それを皮切りに、周りの貴族たちも群がってくる。

 皆が順々に自己紹介をしてくれるが、正直言って覚えられない……。

 あと緊張してるのか、全員冷や汗を掻いている。

 俺の悪評が耳に入っているはずだが、公爵家である以上繋がりは作っておきたいんだな。


 それで俺の機嫌を損ねないよう顔色を伺いながらの挨拶って訳か。


 貴族も大変だなぁ、こんなクズ(俺)にご機嫌取らないといけないんだもの。


「ご挨拶していただきありがとうございます。僭越ながら……クロフォード公爵家次期当主、アスタ・クロフォードでございます」

 

 ――ざわっ……!?


 途端、周りにいた貴族たちが目を丸くする。

 まぁ気にせず。


「本日不在の父に代わり、私がクロフォード家の代表として参りました。是非今後ともよろしくお願い致します」


 ――ざわわっ……!?


 俺が一言言うたびにどよめきが起こる。

 何かちょっと面白いな、癖になりそうだ。

 普通のこと言ってるだけなのに。

 

 まぁ本編のアスタだと……この場で、


『――よう、オレが公爵家のアスタ様だ、お前ら下位貴族は存分に媚びへつらうゲシよ!』


 とか言っててもおかしくない。

 

 すると、遠くでドレス姿のミレイユが歩いていた。

 少し遅れて、4〜5人の少年少女がニヤニヤしながら後を付けているのも見えた。


 見つかったのはいいが、何か嫌な予感がするな……。


「すみません、先約がありますのでこれで」


「へ……どちらに行かれるのでしょうか?」


「もう少し


「申し訳ございません、アスタ様はすぐお戻りになりますので」


 シルヴィアが間に立ち、目配せする。

 俺と同じく、ミレイユを視界に捉えたのだろう。


「そういうことで、それでは!」


「ああ、お待ち下されアスタ殿!」


 俺はその場を後にし、エミリアたちの後を追いかける。


「ふむ、どういうことだ……クロフォード家の子息の悪評は、遠方の我が領地にも届いてましたが」


「それがあの礼儀正しさ、所詮、噂は噂だった、と言うわけですかな?」


「気になりますな」


「今……気になるとおっしゃいましたね?」


「「「???」」」


「ご心配なく……このクロフォード家専属メイドのエミリアが、アスタおぼっちゃまの素晴らしさを事細かにご説明します!」

 

 エミリアは血走った目で見渡しながら言った。



 ――この後、エミリアによるアスタ(俺)講座が約3時間に渡って開かれたことをシルヴィアから聞いた。




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