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第三話 相棒

「へぇ〜ここが街か」

そこは、王都の西側に位置する小規模な街。

決して広く無い敷地面積の中にぎゅうぎゅうずめに詰め込まれた西洋風の街並み。

「ふ〜ん、すげぇ〜なぁ〜」

立ち並ぶ建物は建物徹底してレンガ造りで、街の雰囲気をとても大切にしている様。

「クンクン、なんだ。この匂い…」

それは嗅ぎ慣れた金属と…

(カン!…カン!)

叩きつけるたびに散る、火花の匂い。

「ここか?」

そこは、街の人通りの少ない裏路地。

その奥にある、少し古びた鍛冶屋。

「ごめんくださーーーい」

そう言って、鍛冶屋の中へと入っていく。

「あ"?誰だテメェ…」

そう言ってガンを飛ばしてくるのは黒いバンダナでオールバックのようにしている、ムサシと同じぐらいの赤髪の少年。

「お前…」

「あ"?」

男は加工用にしていたメットを地面に投げ捨て…

「なんか文句あっか?」

と、ムサシに顔を近づけ、ゼロ距離でそう語る。

「お前さ…」

今にも殴られてそうなこの状況でムサシが口にした一言…

「目つき悪いな」

その言葉、男は呆れて地面に倒れる。

「テメェ…あ"ーもういいや。さっさと帰んな、仕事の邪魔だ…」

「あ!それなんだけどさ、お前鍛冶屋だろ。」

「あ"〜」

再び作業戻ろうと、投げたメットを拾い工具を取った彼に一言…

「俺の、武器を作ってくれよ。」

「は?」

その時、男はこう思った。

(頭湧いてんのかこのアマ…)

そう思いつつも、一応提案を聞く男。

「で!金は?」

「ない!」

「どんなん作りたいんだ?」

「カッコいい奴。」

「いつまでに?」

「今すぐ。」

「はぁ〜」

男は会話の後、ため息をつく…

「テメェーな〜…舐めてんの?」

「いや、めっちゃ本気。」

(やっぱり沸いてる…つかイカレてる…)

そんな話の最中…

「おい!"リコ"!!!」

誰かの名を店の前で叫ぶ、赤いパーカーを着込み、右目には青のアイシャドウがかなり濃く入れられている、大柄な男。

「んだよぉ…"バンビーノ"…」

「あ"?んだだとコラァ〜」

大男の名はバンビーノ。そしてその男は、突然リコと呼ばれる鍛冶屋の青年を殴りつけた。

「痛って…」

「口の聞き方にキーつけろ!、このアホーが!!!」

男の剛腕から繰り出されるパンチは、赤髪の彼、リコの頬を歪ませて血反吐を吐かせた。

「おい、なんだその目は?まだ痛い目見てぇーようだなぁーーー!!!」

やっと立ち上がり、視界が悪いのかふらふらな彼の腹に、その丸太の様な足をバンビーノは向ける。

「おい、待てよ。」

しかし、それを片手で止めた女が一人…

「あ"?誰だテメェ〜…」

「俺か?俺はなぁ〜…」

男は、じっくりと目の前の存在を観察している。

(なんだ、女じゃねーか。脅かしやがって…)

「ムサシだ。よろしく…」

「ムサシ?聞ねぇー名前だなぁ〜、で!どう言う了見で、この俺様の足を止めてやがる?」

男はキレ気味に、ムサシの方を睨みつけて言った。しかし、そんなことより何よりも、男が気がかりなことが一つあった。それは…

(なんでこの女…俺の攻撃を受け止めてやがる。)

男の丸太のような足を受け止めている女の腕は、枝のように細く、色白で、幼い外見からも、今の状況を作り出せると到底思えない。

加減はしているとは言え、これだけの体格差のある男の蹴りを、こんなにもあっさり…

「それ以上やると、"堅気"が死んじまうぜ…」

「堅気?」

男は、その言葉に反応した。

「まさかテメェ、裏の人間か?」

男はそう尋ねた。

しかし、普通に考えてこれはおかしな質問だ。言葉の言い回しはともかく、こんな年端もいかないような少女が裏つまりは、マフィアやギャングの関係者な訳がない。

普通はそう判断するはずだ。だが、今は状況が違う。

目の前の細くて可愛らしく、初々しいこの少女は、目の前にいる巨体の彼のその鈍器にも等しい丸太のような足を受け止めてかつ、これだけの生意気な口を聞けるのだから。

強さと共に、あまりにも肝が据わっている。

これをただのアホと捉えるのはそれこそアホの思考である。

「まぁ〜そんな所だ。今は堅気だがな」

「そうかい…そりゃぁ〜よかった。」

そう言って、男は次のように語り出した。

「こいつの親父さんは、天下に轟く名鍛治師でなぁ〜、そりゃぁーもぉ〜作った武器は全て伝説と呼ばれるほどだった。がしかし、流行病に倒れてな、そんでもってこいつはその息子なわけだがぁ〜どう言うわけか、全く!才能がねぇーのよ。」

男は、嫌味なほどに気色の悪い笑いを浮かべながら、リコをバカにしている。

「んならつかねぇークセに調子こいてガン飛ばして来上がるからちょっといじめたくなってな…」

そう言って、リコに近づき、首元に腕を回し。

「つーことで、こんなポンコツにゃぁ〜何もできねぇー!俺のサンドバッグになるぐれぇ〜しかなぁ〜。だから悪いことは言わねぇー…消えな…」

男の睨む視線。

(あ〜そう言うことか)

そんな殺気をはらんだ視線を一身に受け、今にも目の前の誰かが殺されそうなピンチの瞬間。

ムサシは、男の発言の系を理解した。


「裏の人間か…そうりゃ〜よかった…」


その言葉の真意は…

「お前、ビビってんだろ。」

「は?」

そう、あれはムサシの実力を見抜いた訳では無い。

あの質問をした本当の意図は、ムサシの見た目から組織の重役の娘もしくはそれらの関係者だった場合。

彼女を殺すことはすなわち、その組織を敵に回すことと同義だと理解していたからだ。

「つまりは、復讐を恐れている訳だよなぁ〜お前。」

「だっ…だったらなんだよ!」

ムサシは、またクンクンと異臭を嗅ぎ分ける。

「お前、"小物くせぇーん"だよ。」

その言葉、たった一言男は激怒し…

「舐め腐ってんじゃねぇーぞ!!!アマガキーーー!!!」

再び振りかざされる丸太よよな足蹴り。

「よっと!」

軽々と避けるムサシ。

「なぁ…」

下に避けたムサシは、そのまま懐に入り…

「おらよぉ!」

足蹴り一発で、男を壁の方へと突き飛ばした。

(あいつ…)

それを外野から見ていたリコの感想は…

(クソォ強ぇ〜)

「ちきしょ〜…また…またかよテメェーは…リコ…"お姫様"?」

「ちっ!」

その呼び名は妙だ、少なくとも男性に使う言葉ではない。ではなぜ、彼はそう呼ばれているのか…ムサシもまた疑問だったのか、横で倒れる彼の方を見る。

「いっつも、いっつも、親父だの女だのに守られてよぉ〜まるでゲームの姫プってやつだなぁーーー…このやろう。」

「オレは!」

「何にもできねぇー役立たずが!…いいねぇ〜いつだって誰が助けてくれるんだ。自分はなんもしなくていい、親父の次はまだ乳臭ぇーガキに庇われて。傍観者は楽しいかい?全くいい子身分だぁー!」

「それは…」

リコは、悩んでいた。

自分自身弱さに…そして無力さに…何もできないと言う事実に…守られ続けているという事実に…

「だったらよぉー!賭けをしようぜ。」

そんな俯いた表情を見せたその時だった。

ムサシは、威勢の良い声で、リコを煽るバンビーノにそう提案した。

「賭けって?」

「これから、一週間以内に!伝説級の名刀、作ってやるよ。…そこのリコがなぁ!」

(なに…言ってやがる…)

自身の力に羞恥心すら抱いていたリコに、ムサシがはなった衝撃の言葉に、リコは黙り…

「あーーーひゃっひゃっひゃ!」

男は大笑いを浮かべた。

「こいつが!このなまくらしか打てねぇーヘボ鍛治師が!」

「あ"ー!」

その一言は、その眼光は、あまりにも…あまりにも真っ直ぐに、あまりにも力強く発せられた。

怒りではない、それだけ声を張り上げて、それだけの眼光で威圧しているのは、ムサシの「舐めんじゃねぇー」と言う意思の表れだった。

そしてその言葉、バンビーノとリコの両名を黙らせる。

「お前…」

しかし、それに一番驚いているのは剣を打つリコ自身であった。

「オレに…オレなんかにできる訳ぇ!」

「できる!!!」

ムサシは、なんの根拠か言い切った。

「できるったらできるんだよ。…それによぉ〜"できねぇー理由を考えるより、できる方法考えた方が、ずっといいだろ?"。」

ムサシのその言葉と、その笑顔と、その心が…彼の荒んだ心を突き動かした。

「やる…やるぜ!オレ」

「おう!ファイトだぜ。相棒。」

「相棒…」

リコにとって、それはとても不思議な言葉だった。生まれてから一度も信用も、信頼も、期待も、まともに受けなかった。

父は優しかったが、過保護すぎた。

そんな中で、自分を対等に、面と向かってこんなことを言ってくれる赤の他人は、彼にとって初めての経験だった。

「そうかよ!で、お互いのリターンは?」

「俺が買ったら、リコに土下座して謝れ。そんで持って、リコ様凄!つってこれから一生うらまって生きろ。お前が買ったら…好きにしろ…」

「オーケー、オーケ〜、良いぜその賭け。乗ってやるよ!!!」

こうして、二人の決戦が始まった。


「よしよし、まずは剣を打とうぜ。」

ムサシそう言ってリコを急かし、道具を用意させた。

「へぇ〜剣打つのって、こんなに道具使うんだな。」

「あ"?テメェ、まさか都会民か?」

「ん?」

その時、ムサシは考えた…

(俺の元いた世界は確かに都会だ。でも、この世界では田舎暮らしもいいとこだったし…)

「ん〜」

と、色々思考を巡らせた結果…

「まぁ〜そんなとこ。なんで、そんなこと聞くんだ?」

少しはぐらかしつつ答えた。

「あ"、そりゃ〜あれだ。今の時代機械が普通だろ。それでもこの辺の田舎じゃ、最新鋭のエーテルブレードなんざ手に入いらねぇーし。都会奴がなって…」

ムサシは、この世界の文明レベルを結構侮っていたが、ムサシが思うよりは進んでいることに初めて気づいた。


それから、5時間後…

(カンカンカン!)

金床の上に鉄を置いて、金槌でそれを叩き、そして…

(ボォ〜)

(ホムラ)の中に、打った鉄を入れる作業を、あの頃よりもう五時間も行っている。

「できたぞ…」

「おぉ〜」

と、ムサシが目を輝かせて見た武器は…

「おい、お前剣って知ってるか?」

てレベルの代物だった。

(パキン!)

「なんか折れたぞ。」

「うっせぇ〜」

なまくらどころか剣の形すらまともに作れない彼だったが、それからも何度も何度もムサシの応援と共に、打ち続けて…


はや三日。

「「うぁーーー!!!」」

そう言って倒れるこむ、二人。

背後に並ぶ数十本の鋼の刃。

「やっぱり…オレに剣なんて…」

また、自暴自棄になりかけているリコに対し

「何言ってんだ、まだ体は動くんだ…ぐっすり寝たらまたやろうぜ。」

「なんでお前、ほぼ初対面のこの俺をそんなに信用できんだよ…」

そう問われたムサシが出した答えは…

「実わな、俺昔親友がいたんだ。」

また、ムサシの悪いクセ、突然の自分語りが展開される。

「異性だった、でもな、そいつからはいい匂いがして…」

「匂い?」

ムサシの奇怪な発言に引っかかっりつつ、ツッコミを入れる様な状況でもないなと思いスルーして続きをきくリコ。

「そんで持って、そいつは実際いい奴だった。バディーを組んで仕事していって、背中を預けれるぐらいにはなって、いつしか気づかねぇ〜うちに親友になってた。…」

そんな、落ちの無い突飛な話しをムサシはした後、リコに言った。

「お前からは、そいつと同じ匂いがする。親友…いや、相棒の匂いがな。」

「ん…」

仲良くなれる、そう感じている。だからムサシは彼を信用している。これは、お爺さんの時と同じ、人間の本質を匂いで見抜くムサシの純然た才能だ。

「お前…犬みてぇーだな。」

「あ…」

その言葉の後、ムサシの脳裏によぎったのは兄貴分であるベンケイとの思い出…


「やったぜ!兄貴!」

それは、仕事を終えて頭を差し出すムサシの姿。

「ふっ、よしよし」

「ふっふん〜」

頭を自分から差し出して、撫でてもらう。まるで…

「犬見てぇーだな。」

「犬?…」

ムサシは少し不思議そうな顔をした後…

「犬って!兄貴酷いっすよ。」

「お〜悪りぃ〜悪りぃ〜。でもよぉ〜俺は羨ましいんだぜ。」

(?)

ムサシの頭に浮かんだ大きな「?」これは、それも当然だ。

万の軍勢を相手に一歩も引かず、全てを一刀両断する圧倒的な戦闘力。

どんな状況でも動じず冷静に指揮を取る、統率力と知力。

部下を集め、信頼され、憧れさせるほどのカリスマ性。

そして、人を気遣い、支え、助ける、人格面でも優れたこの男。

体格も、身長も、筋力も基礎の力だって申し分ないこの完璧と呼べるほどの男が、一体今更何に憧れようと言うのか…

「その、"よく聞く鼻がな…"」

「え…」

それは、意外なものだった。

「いやいや、兄貴に褒められるようなもんじゃ無いっすよ。兄貴は世界一強くて、優しくって!」

どうにか否定しようとしているムサシ。

(ツン…)

そんな時、ムサシの鼻の先に指を置いて…

「兄…貴…」

ベンケイは、次のように続けた。

「ムサシ…おりゃ〜なぁ〜、いろんな奴に会って、いろんな奴と仲良くなったぜ。…でもなぁ〜今でもできねぇーことが一個だけあんだ…」

ムサシは驚いた、全てが揃い、完璧と思える兄貴に足りないものがあるなんて、一体…それは…

「"腸は見えねぇ〜"今でもな…」

「腸?」

それは…そんなはずはない、そうムサシは思っている。

なぜなら、ベンケイは何度も何度も死戦を潜り抜け来た強者中の強者。

人間(ヒューマノイド)の腸程度、何度も見てきたはずだ。

「お前、まんま受け取ってるだろ。心って意味だよ。」

「心…」

「お前、いつも言ってるよな。外道の匂いがする、いい匂いがするからいい人だ…て…」

「あ、あ〜そうすっね。でもこれは、バベルタワーにいたクソヤローたちのせいで!誇れるようなもんじゃ…」

ムサシにとって、それは戒めであり、呪いであり、そして…最悪な過去の幻影、もしくは一生消えない傷でしかない。

だから、ベンケイから憧れているなどと言う言葉を受けても、それを素直に受け取れないのは必然である。

だからこそ、ムサシは訴える、自分なんて兄貴の足元にも及ばない下劣で下等な存在だと言う自虐の意味もこめながら。

「ムサシ!」

しかし、ムサシのその物言いをベンケイは止めた。

「そいつはなぁー確かにお前にとっては古傷以外の何者でもねぇーかもしれねぇ〜。でもな、そいつがお前に見せてくれてる景色は、自分と同じように、古傷に苦しめられてる誰かを理解して、気づいて、そして救うためにあるんじゃねーか。」

「救う…」

「現に、今も俺はお前のその鼻に助けられて、逃げたこいつの居場所を突き止められたんだ。人の腸をを感じ取るそれ…大事にしろよ…お前の鼻は犬の千倍よく聞くからな。」

そう言った兄貴は笑顔だった。


ムサシはリコの発言に懐かしさを覚えつつ…

「どうした?いきなり黙りこくって…」

「いや、なんでもねぇーよ。」

(やっぱり、こいつとは仲良くなれそうだぜ。)

その感情は、リコに向けた笑顔にも乗せられていた。

「ん!」

ムサシの満遍の笑みを可愛と思ってしまい、顔が思わず赤くなるリコ。

「よし!寝るぞぉーーー!!!」

「なら静かにしてくれ…」

なんやかんや思いつつも、結局ムサシに呆れるリコであった。

最初の鬼


人工器:(ホムラ)

設定魔法:鬼身

    ・身体を鬼に変える能力


人工器:(ホムラ)

設定魔法:鬼蒼刀

    ・青色の刀を作り出す能力

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