雲Dとソイ少年
機械ストリートにはファミレスがあったようで、そこに私達は入る事にした。
「なんか追われてたみたいですけど、こんな所でいいんですか? 」
「俺たちは、警察ロボットに追われてる訳じゃなくて、あのおじいさんにだけ追われてたから問題ない……んだよね? 」
ねぇ、雲D、と問いかけた少年に、あぁ、問題ない、と彼は返した。
「君も少年と同じという事は、これから狙われる筈だ。俺たちと行動してくれないか? 勿論、君の事は俺が守ろう」
もちろん、ソイ少年の事も俺が守るよ、といった雲Dさんに、ソイ少年は……小学三年生くらいのソイ少年……
慌てて、社長が送ってくれたフォチャを見返す。
【ソイ・ポリス】黒髪で髪質はしなやか、一人称は俺。
フォチャのソイ少年を交互に見る。うん、これ本人では?
「えっと、スー・フィンという方から、貴方を探すようにと……」
ドンッとテーブルを叩いた少年は、驚いた様に席から立ち上がる。
「あのイカれ姉ちゃんの知り合い!? 」
「やっぱ、あの人ヤバいんですか」
「なんかヤバかったよね」
だよね、雲Dとソイ少年が彼に問いかけたが、「あの……守らせてはくれないのか」と若干涙目だった。
そういえば、さっきの返答してなかったな。
慌てて「宜しくお願いします」と頭を下げると、コロリと表情を変え、勿論!とGJしてくれた。雲D、このジェスチャーハマってるんだよね。とこっそり少年が教えてくれた。
お金は気にしなくていいぞ、と言ってくれた雲Dに甘えて、メロンソーダでも頼む事にした。
「姉ちゃんも俺と同じ世界から転生したのかわかんねーけど、ここの通貨は大きいやつが【レディ】小さいやつが【メトロ】ね」
「何だその通貨。円じゃないんですか?」
「俺もビックリした」
だよねだよねー、と二人で頷く。後は……と少年は、ペーパーナプキンにジュースを使い、器用に文字を書いていく。
(みんなキカイ、オレとネエチャンだけヒト、ホンモノ)
と書かれていた。なるほど、彼の名前を見て思い出したが、大昔に流行ったロボット社会映画みたいな世界観なんだろう。ちなみにその映画は、大都市でロボットと人間がなんやらするストーリーである。私の国の大漫画先生もインスピレーションを受けたかなんかだった。
雲Dは、ペーパーナプキンをトントンと指差すと
「これを住民達は理解していない。本物の……だと思ってるんだ。俺みたいな労働用ロボットと自分は違うって」
と捕捉してくれた。更に、俺がその事を分かっているのは、旧歴史のデータをインストールしたからで、本来は、俺達がそうであることはこの世界の市民には、隠されているとも。
私達と店員以外に人がいないファミレスはこの世界の情報を教えてもらうには丁度よく、以下の事を教えて貰った。
「【ソイ少年side】
火災事故で死亡、転生待機へ。一時刻前に本来のソイ・ポリスも死亡し、転生先も見つかった為、転生した。しかし、ソイ・ポリスの肉体は死んでいなかった。そこで、少年の魂が入れられる。
右も左も分からない状態だったが、本来のソイ・ポリスが少年に話しかけてくるという。
『一緒に死んだ筈の姉さんの体がこの世界に残ってる。それを探して欲しいんだ』という本来のソイ・ポリスの願いを叶えようとする。
【雲D side】
デジタルを専門とする省、D庁。そのマスコットロボットとして製作された労働用ロボットの雲D。
御披露目パーティーに輸送される筈が手違いで大きく本来のルートから外れる。
そこへ、困っている様子の少年が……正義感溢れる彼は見過ごせず、共に行動することに
ーいま、2つの物語が3つに増え、1つになろうとしているー
っていうことでいいですか?」
以上、ナレーションの灰被 境でした。としめると
「すっげー。なんかの紹介文っぽい」
うおーとソイ少年は拍手してくれた。雲Dは特撮? と首をかしげていたが、合っているぞ、とGJしてくれた。
「今も、ソイ・ポリスさんと話せるんですか? 」
「うん、『僕の姉さんの死体を見つければ、その結果や過程で、灰被さん……貴方の社長さんが求めてる事が分かるんじゃないかな』って、あ、ハイ姉って呼んでいい?」
いいよ、と返す。
正直、少年を探した後は何をすればいいのか分からなかったから助かった。
まぁ、謎の内なる声を信用していかは謎だが。
「お買い上げどうもっス、クリームソーダおまちどーさん」
コツリと頼んでいた物が置かれる。ウェイターは「あとは、ココアとおしるこね」とソイ少年と雲Dのドリンクを置いていった。
ウェイターさんはコツコツコツコツコツと机を鳴らす。謎にテーブルを鳴らした後、彼は下がっていった。