液晶に干渉する青年と出会う
推理サスペンスのお約束を守る事にした私は、歩く。
壁から床まで機械、配線、機械、機械。
遠くを見ると大きなスクリーンが見えるのだが、私が居るところは随分と殺風景である。私からしたら物珍しいのだけど。一応、写真撮っておくか。
パシャパシャ
勝手に名付けて、機械ストリートを数枚取る。
もう一枚、今度は上でも撮っておこうとカメラを向けると、頭上を飛んでいる人達が飛び出して来た。
「すまない、何かスクリーンがある所をしらないかっ」
「向こうと、ここにあります?」
先ほど見たスクリーンを指差し、フォチャを見せる。
青少年は片手に子どもを掴んでいるようで、ちょっとお邪魔させてくれ!と私のフォチャに人差し指を触れさせると、するんと、そのまま吸い込まれていった。
バタバタバタ
「男達、捕まえるんじゃ」
物騒な言葉が飛んで来たなと思っている内に、黒服達に囲まれたおじいさんの集団がやって来る。
チラリ、とおじいさんと目が合ってしまった。
「あいつらは逃したが、まぁた、人間を見つけた、今日はついとるなぁ! 」
次はコイツじゃ! と言ったおじいさんに黒服達は「イエッサー」と返事をすると、今度は私を追いかけようとしている。
「は? 」
トラックの次は人間かぁ、と思いつつ、周りを見渡す、あのコードぶち切ったらヌンチャクみたいな武器にならないかな、フォチャにチェーンソーあったもんね……ん?
「フォチャそのまま使えばいいじゃん! 」
フォチャを構え、フリックさせようとする。
すると、フォチャの中から先程の青少年が出てきた。
「少女くん、お邪魔したよ、そしてちょっと気を付けてくれ」
フォチャから飛び出した少年は、右手に掴んでいた子どもを配線の山に放り投げると、左手にバチバチと電気を纏わせた。
「おいっ、またあれじゃないか」
「に、逃げましょう御主人」
「わしはあきらめん! 」
そんなこと言ってる場合じゃないですよ、と黒服達はおじいさんを連れて撤退しようとする。
「いいや、逃がさん! 」
『正義パンチ! 』
青少年は、黒服達に向けて、バチバチとパンチを撃ち込むと、「お助けー」と彼らは倒れていった。痛そう。おじいさんは黒服に守られた様でピンピンとしている。
「119番しときますか? 」
「イチイチキュウ? 救急ロボットの新称か? 問題ない、既に呼んである」
警察ロボットもな、と青少年は、泥の付いた手を叩くと、先程のパンチ行為で乱れた髪の毛を整えていた。
「すまないが、少年を起こすのを手伝ってくれ」
紙を整えた彼は、コードの山に放り投げた子を指差した。